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巨星墜つ

 初平三年、太保盧植、薨去。葬儀は故人の言い付けを守り質素に行われたが皇帝直々の訪問を受け民達も嘆いた。問題は盧繁の喪である。

 心情としては当然の事。政務の滞りなど考えたくも無い。だが何よりの問題は盧繁の帰郷である。何故なら誰もが確信していたのだ。盧繁は朝廷の楔であると。


 軍は当初二つの派閥に分かれていた。大将軍何進の戦力を統合した董卓閥、その董卓閥に入る事を良しとしない者達が集まった皇甫嵩閥である。これは皇甫嵩と董卓の和解と盧繁の婚姻によって協調していた。

 政は一塊ではあるが此れもまた幾つかの派閥がある。先ず袁隗の人脈を継いだ盧植閥、次に董卓が名士登用策で集めた蔡邕閥、そして鄧盛の人脈を引き継いだ王允閥、最後に楊彪閥となる。これは先ず以て楊彪閥を除けば董卓の縁がある上で盧繁の婚姻が大きな鎖となっていた。

 身も蓋も無い事を言えば盧繁が便利すぎたのである。親としても娘としても縁を結びたいと思える家名と人柄と能力。盧家に嫁いだ娘達の情報網が幽州に旅立つのだ。


「言いたくねぇ無茶を言わせて貰うが子昌殿が喪に服しちまうと困るぜ。よりによって今死んじまうのかよ先生」


 董卓は質素な棺を前に酒を片手、如何しようもない愚痴を垂れる。政治というものに対して己は適性が無いと自覚している。故に董卓は人集めに躍起になったが無為であった。


「白ちゃんが幽州に行っちまうのは寂しいが三年の辛抱だ。全く熟アンタが羨ましいよ。俺の力を息子が受け継ぐんだからな」


 董卓の跡を継げる息子は居らず娘婿や甥は居るが器量が足りない。だからこそ董卓は己の全てを盧繁に譲る気でいた。即ちそれは涼州の軍事力である。

 と言うか盧繁以外に御せない。涼州人と環境はそう言う土地だった。


「まぁ政は蔡邕の旦那に任せるとして王允を警戒する手がねぇな」


 董卓は酒を飲みながら考える。盧繁は并州勢を警戒していた。厳密には王允と呂布を。

 しかし王允は潔癖でわかりやすく呂布は慣れ親しんだ狡猾で利益を求める手合だ。前者は警戒を解くのは悪手だが実行力が無く、後者は軽挙だが餌を与えて満足させておけば手駒として有用。そこに気を付けておけば問題ないと考えている。

 問題は政治における折衝であり朝廷内での官僚の情報収集が難しい事だ。


「まぁ蔡邕の旦那は真っ当に儒者で学者だからなぁ。儒者なのに文武両道で状況に則した先生が稀有ってもんなんだが。丁宮の奴も信用は出来るが能力が足りねぇしよ」


 ふと董卓は酒を呷る。酔いはあるが頭は冷静に。盧植の入った棺が訴える。


「……ガキ供は連れてって貰うか」

「構いませんよ」

「うお?!」


 董卓が驚き振り返れば盧繁。


「ああ子昌殿か。悪ぃな。頼む」


 酷く窶れた盧繁の顔を見て董卓は溜息を漏らした。


「少し休んどきな子昌殿。らしくねぇ顔してるぜ。旅路は遠いだろ」

「ええ、御配慮感謝致します」


 埋葬地は幽州。片道一月は掛かる。丁優は重要だ。


 〓盧繁〓


 ついに出発の日が来ちまった。洛陽の門から陛下や董殿。色んな人が見送ってくれてる。


 ああ、如何しようもねぇ……。王允を殺すか悩んだが朝廷が機能しなくなる。そもそも王允の裏切りを証明する物がねぇ。


 兵の事は董殿と徐オジちゃんに頼んだけど不安だ。


「気をしっかり保て盧繁。朕は盧植の忠勤を忘れぬ。旅の無事を祈る」


 あ、いけね。


「感謝致します陛下。朝廷の平穏を心より願います。私も父の安らかな眠りを見守りたく」

「ああ私も願っている」


 そうだ奪情。いや、あれは戦時中とかじゃねぇとか……。儒家って立場が足を引っ張る!


「しかしそうですね。もし騒乱が起こり陛下や董殿、蔡の義父上に何かあれば事を起こした者この手でグチャグチャに致します。黄泉の果てまで追って後悔させましょう」


 この牽制が精一杯かよクソッタレ。


「それでは陛下、皆様。暫くの別れです」


 ……家の縁者に袁家の縁者と董殿の縁者と蔡家の縁者が加わって列スゲェな。勅使と護衛の羽林と白波と匈奴の精鋭も居るから五百人ぐらい? それにしても呂布が玲姫殿を同道させるとはな。


 ただ侍女は入れ替わりが激しかったから情報は抜かれてんだろうけど。


 たまたま参宿殿が乗る馬車が視界に入った。


 幽州まで帰れりゃ良いが。


「おいおい何処のお大尽さまの行列ダァあああああああああああああああああああああああああああ!?」


 これくらいの雑魚だったら大丈夫なんだけどなぁ。


「あのホント勘弁して下さい!! 黒山賊とかヤベルンデ?! ッア“アアアアアアアアアアアアア!!」


 洛陽が心配だ。


「あのクソガキをブチ殺せ!!! こちとら五万も——」

「お、王親分んん!!!!? き、消えた! 王親分が消えちまった!!!」

「腕、俺の腕がぁ!!」

「え、いや、ちょコッチ来たコッチ来た!!!」

「いや! 五万もいるんだぞ!! そんなわ、え? ゴヴゥ......?!!」

「陶頭目がやられたァ!? 逃げ、に、に、あ......ああ!」

「ダメだ逃げろ!! みんなバラバラにされ、ガッ!!?」


 董殿も皇甫将軍と上手くやれてれば良いけど。


「盟友を良くもやってくれたねぇ盧子昌。この張牛角が、え? ゴポォ......」


 いや邪魔多く無い? 荒れ過ぎでしょ。この辺。


 にしても......。


「喪に服す邪魔すんなや!!!!!」



ここまで読んで頂き有り難うございました。


暇潰しにでもなれてたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
顔良の駆け抜ける所 草も木もみな朱に伏し……。 顔良を【イケメン】と読めば通じるな。
何や子の化け物たまげたなぁ(´・ω・`) 長安から司隷までの主な賊が消し飛んだよ(;´∀`)
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