特に昔の偉い人の婚約なんざこんなモンやろ。知らんけど
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今回は7話です。
暇潰しにでも見てってくれたら幸いです。
各地に朝廷から橋瑁は車裂きに処されたと通達があった。誰もが想起するのは黄巾賊馬元義と同じ対応である。要は山東の諸将が如何見ているかを各地に通達したのだ。
「まぁ唯の車裂きで済む訳がねぇわな」
董卓が欠伸混じりに言った。盧植は頭痛を堪えながら頷く。儒者として余り推奨はしないが今回ばかりは仕方が無い。橋瑁はそれだけん事をした。だからこそ思わず。
「ここまでの事となろうとは。逆に繁の好きにさせていた方が良かった。そうすれば民の同情を引けたかもしれん」
橋瑁はグチャグチャになったのだ。晒し首は当然であったがそれ以前の話だった。早い話が長安で車裂きの公開処刑を実施した結果として民が暴発したのである。特に洛陽の民からすれば家を捨てる羽目になったド畜生の一人で当然の事である。
またこれは地味に盧繁のせいでもあった。単純な話として盧繁から民へのパイプがあった事で董卓や袁隗の印象を良くしようとした為に特に橋瑁の印象が悪化したのだ。
前提として肉を得る為に洛陽近辺で畑や人を襲う害獣狩りをした事から始まり、戦力にした賊や異民族との調停で縁を民と紡いでいた朝廷に詳しく好感の持てる男が盧繁で、洛陽一二を争う勇壮な美男子がほぼ真実を愚痴るのである。
要は少なくとも民の間では貨幣不足が董卓銭や袁隗の提言のお陰で多少とはいえ緩和されていた。そこにメッチャイケメンが董卓頑張ってて橋瑁クソって愚痴ってりゃあまぁ。
其の意図がなくとも半分扇動みたいになってしまうのも仕方ない。と言うよりも扇動の意図が無いからこそ余計に橋瑁への不満が伝播したと言うべきだろうか。いやてか普通に洛陽とかの民が長安に引っ越す理由だからなるべくしてなったのが正しいが。
「ま、俺からすりゃあ馬鹿が如何なろうが知ったこっちゃねぇどころかザマァねぇがよ。
大した地位もねぇのに御高く留まった結果が檻車が進めなくなるくらいの投石だ。挙句に引き摺り出されて私刑ってなぁ。自業自得と言うには酷ぇ最後だぜ。
刑場近くに居た洛陽出身者の大概が木や石で殴りつけたってよ」
「しかし朝廷の檻車を襲うとは。当然だが民の余裕も無くなりましたな。まだ暴れる活力はあるが」
「……締め上げとくか?」
盧植は断固として首を横に振った。
「息子のおかげで民は我等の味方です。此処は橋瑁の刑執行を果たせなかった事を陛下が悲しんでいると公布すべきでしょう。当然ですが民と意を同じである文言を添えてです。」
「……本当に先生が居て助かった。それで俺たちの事や如何いう意図かは子昌殿に任せるってんだろ?
太傅殿が紹介してくれた李儒も色々と提言しちゃあくれるんだがな。まぁ如何したって先生の言葉だと重みが違うぜ。ウチの連中は戦が出来ねぇと聞く耳をもちゃしねぇ。
それに子昌殿がいるんで色々とやりやすいしな。全く俺にとっちゃぁ盧家様様だぜ」
政権中枢たる相国と太保が話し合う此の場には盧繁も居る。三つの重しが二つになった事で割れやすくなった政権の補強財として存在していた。董卓と盧植は以前程では無いが未だに相性が良いとは言えない。
両者共に極めて現実的で合理的なのだが乱世と治世の差がある。
戦場に立ち続けた結果として心情を勘案する余裕が無く最悪切り殺してきた董卓と、戦場を知るが儒者故に心情も加味して出来る限り和を保った上で合理的に動く盧植の齟齬。
敵味方の命に関する決定の拙速と遅拙の合間を取り持っていた。
「朕も賛成だ」
あと皇帝の付添人を兼ねた護衛でもある。山東の諸賊は引き籠った。また朝廷も流石に動けない。現状は再度攻撃に出た孫堅への対処に向かわせている。
やれる限りは既に終えており展望を語る事こそ仕事だった。先ずは皇帝の育成からと言う意見の一致の結果が此の場。
「俺はアレだ。軍事に全振りする気だ。知恵も先生に比べりゃゴミだ。何より政は柄じゃねぇしな。先生に合わせるぜ」
「であれば早急に為すべきは二つ。山東の諸将を一つづつ潰していく事。もう一つは益州との再接続でしょう」
「東は時間を食うが楽だろう。逆に時間はかからねぇが面倒くせェ漢中の米賊か。
東はとっとと擦り潰した方が後々に楽なのは分かる。だがそれを並べたって事は銅銭か?」
「西涼が此方に着きましたからな。西域との交易は命綱になりましょう。絹と銅銭と兵糧さえあれ山東の諸将の成長を超えられる」
「人は如何する? いや民は居るが。その上だぞ」
「確かに朝廷の臣下に信用できる者が少ないのは問題です。また伯喈殿は私と共に働いて貰わねば困る。相性が良ければ皇甫将軍を推すが天秤がひっくり返ってしまう」
「そうだ先生に一つ頼まれて欲しいんだが」
「……?」
「俺はアンタらを信用してる。同時に嫌いじゃねぇんだ。だから言いたくはねぇがな。王允から提言があった」
「王允か」
盧植が非常に珍しい事に吐き捨てるように言った。皇帝などは目を皿のようにして驚いているが直ぐに王允であればそうもなろうと納得する。尻尾は掴めていないが此の場では推定裏切り者である。
「野郎が自分の養女か呂布の娘と盧繁殿の婚約を、とな。まぁ俺には太傅の縁者を子昌殿が囲ったから孫娘の補助にだとかホザいてやがったが。如何やらアンタに阿る気らしいぜ」
「その物言いという事は離間、いや連環計?」
「流石だ先生。ああ、そうだ。その通りさ。
いや本当に賈詡と李儒の奴は良い仕事をしてくれやがるぜ。此奴等が教えてくれたんだが并州って繋がりで王允と呂布は繋がってる。それで思い出して欲しいのが張楊だ」
「確か、耿将軍に撃破された?」
「ああ。そのクソ間抜けだ。袁紹の所に逃げ込んでやがる。去病の奴、ああ耿祉な。滎陽に駐屯させてくれって頼み込んできやがったんだが奴が密使を捕らえた。賈詡と李儒から注意するように言われてたらしくってな」
「密書の内容は?」
「内からは我等が、外からは貴方が、だ。こんな書状が敵に流れていてる時に政治的に動いた奴は黒だろ。で、王允の野郎は子昌殿を取り込みたいのか何なのか動いた訳だ」
「逆に罠にかけると?」
「アンタらが了承してくれるならな。何せ呂布の奴には俺も目を掛けてる。ただ并州出身って繋がりは確かに怪しい。まぁだからこそ婚姻を持ち出したんだろうが、ともかく呂布が裏切り者かどうかは確認しておきてえ。子昌殿を籠絡しようとすりゃあ確定だし、そうで無くとも義理の親って事で探りを入れてくるかもしれねぇ。
とは言え、まぁ呂布の娘っ子はアレだ。話を聞くに操り易い類だ。だから確認するには丁度良いと思ってな」
董卓はポッと結婚話を繰り出されてエゲつねぇ顔になってる盧繁を見てから。
「な? 先生の御子息は顰めっ面でも整ってるから向こうが骨抜きにしようとしても逆に骨抜きに出来るだろ」
「……」
盧植は口を噤み盧繁が思わず。
「いや否定してくださいよ?! あ、失礼」
コレは皇帝の勉強会でもある。が、まぁしゃーないよねって空気になった。盧植は溜息を一つ。
「繁よ」
「……はい」
「序でに伝えておきたいのだが」
盧繁は自分の唇を巻き込むように内側にして答えるのを拒否した。なんかモニュって感じで。あと目はメチャメチャ不満そうな半眼。
「繁。伯喈殿の御息女を迎えてくれ」
盧植が心情と家庭状況ガン無視して言った事で盧繁は政治状況を理解して思わず溜息を漏らし。
「王匡の事があった董殿との仲を取り持ち、いや障壁を薄くするためですか。それと一応は王匡征伐には出ていましたが蔡左中郎殿への疑いの払底ですね。
頌姫殿は太傅殿や太僕殿が毒杯を煽り自身を除く親族が全て奴僕落ち、そして参宿殿は袁家の方々を下賜された為に精神的に安定していません。
時間を頂けるなら文姫殿御本人は好ましく思っていますので構いませんよ。ただ嫁さん達の心の準備を考えて本気で時間は頂きたいのですが?」
そして盧繁は董卓の方を向き。
「呂布の娘に関しては無理でしょう。俺が籠絡とか、ハハッ……嫁さんの機嫌の取り方もイマイチわかんねーのに」
煤けたような笑みを浮かべた盧繁を見て董卓は愕然とした。お爺ちゃんとして何か微妙な気分になる惚け話を永遠送られていたから。いや嬉しい便りなのには間違いないけど量が凄いのでその倉を思い起こしながら。
「子昌殿それ本気で言ってる?」
「董殿、息子はこういう輩なのだ」
「……先生。大変だな。アンタも」
「あの父上、董殿めっちゃ失礼な事言ってません?」
今度は盧植と董卓が盧繁へ微妙な表情を向けてから顔を合わせ盧植が溜息を一つ。
「良いか繁。私はこの一月で三十八回程縁談の話を振られた。分かるな?」
「それで言うと何故か俺にも日に二回は子昌殿の紹介を頼まれてらぁな」
衝撃の事実を告げられ数年前から事こういった事に対して何も成長していない息子に盧植は頭痛を堪えながら。
「繁。難儀なものだがな。好意だろうが策略だろうが一人二人では止められんらしい。
というか、まぁ陛下を御護りする為に宮中に入る必要があるとは言え女官の世話を焼きすぎだお前は。非難と不満轟轟だった良家子の縁者の大臣達が最近だと娘が喜んでいると感謝して来て面食らったぞ。
と言うか宮中で一体何をやっているんだ。何故こうなっている? お前は軟派な真似はしないし出来ないタチだろう」
説得しようとして途中から疑問が湧いてしまった。
「あの父上。微妙に引っ掛かる言い方しないでください。まぁ他の言い方も思い浮かびませんけど。それに俺だってそんな事になってるなんて知らなかったし訳が分かりません。何なら前の事があってから気を付けてた積もりだったのに」
「嫌味かな?」
有り得ないくらい青筋浮かべた劉辯が言う。劉辯は非常に整った顔立ちである。その整った顔の額は青筋でヒビ割れた地面の凹凸を逆にした様になってた。目ぇガン開きである。すごい怖い。
「如何したんすか殿下」
「朕が思うにこれは盧繁が悪いと思う。いや悪い事をした訳ではないのだが」
「陛下?!」
凄い吃驚した盧繁に劉協が気まずそうに。
「兄上も劉の姓を持ち後継者は数人必要と義姉も考えて側女を見繕おうとした」
盧繁は頷く。
「兄上がこれはと思った者の大半が盧繁との玉の輿を狙って断ってしまった」
「……はい?」
「私や兄上は落ち目だ。力も無い。だから」
要は落ち目の帝室の嫁になるより権勢を得るだろう家臣の嫁になりたい者が多かったのである。
性格、良し。外見、良し。将来性、良し。そんな異性がいたらしゃーない。男も女も無くワンチャン狙う。
まぁ結果として王って立場の男が何か凄い可哀想な事になってるけど。
「クッソォッ七人だけなんて!! 十人はいけると思ったのに!!」
「え?」
「え?」
「え?」
「え?」
劉辯の味方は居なくなった。
「ってぇ訳だ。呂布の娘の事。どうだい?」
「すいません董殿。どういう訳ですか。
いや、まぁ俺は王允を疑ってるんで父上と董殿がやれと言うならやりますが。でも謀略や籠絡なんて本当に期待しないでください。俺は機転が効かないクチですから。
婚約って体裁をとって関係を深めて怪しいところ探れば良いんですよね?」
「その通りだ。助かるぜ。まぁコッチも少々疑って掛かるべきところが増えたってのもあっての事だが。出来れば証拠が欲しいところだ」
董卓は盧繁の忠告を覚えていたが故に信頼しつつも并州出身者には注意していた。だが裏切り者であっても使わざる負えない状況というのもあったのだ。それも蔡邕の加入が確定した事で盧繁の言う通り怪しい并州勢の尻尾を掴む為に李儒や賈詡へ監視をさせたのである。
理由も無い処罰では無いと言う大義名分に必要な尻尾は掴めない。が、怪しい。しかし戦力と政治的に使わざる負えない。それが現状である。また董卓は盧繁に探りを入れて貰うのと同時に并州勢の特に兵が逆らうかどうかを故軫に判別させる気でいた。
〓盧繁〓
あーもー超ヤダ何この時代。本当に何コレ。だからヤだったんだよ。
「参宿殿、頌姫殿は?」
「少々無理をしておいでです」
いや政治的にしゃーないけど絶対こうなると思ったわ。頌姫殿と参宿殿のパワーバランス考えて袁家の人は屋敷離して対応したけど嫁さんってなるとそうもいかねぇ。しかも頌姫殿に関しちゃ逆賊の一族って立場になっちまってるし。
「文姫殿が居て良かった。いや文姫殿もどっちかって言うと董殿の派閥になるんですが。彼女なら上手く取り持ってくれるでしょう。
今は俺が相手しますので参宿殿も距離感に気を付けて頂けますか。それと何かあった場合に早めの連絡を」
「ええ、そうですね。でも腫れ物を扱う様にしない様に気をつけなければなりませんよ? 仕方ない事とはいえ」
「確かに。御助言感謝します参宿殿。気を付けなきゃ」
……いや何で家庭内で派閥の心配しなきゃいけねぇんだよ。超ダリィよ。馬鹿かな?
朝廷内で袁家は政治的に潰されたが未だ縁が残ってる。楊脩の野郎の所とかは繋がりが強く残ってるし父上も董殿も門生故吏ってヤツだ。だから敵対って訳じゃないが家の後ろ盾的な意味で頌姫殿と参宿殿って形だったのが対等から逆になっちまってる。
いやそれで参宿殿が頌姫殿を下に見るって訳じゃないが頌姫殿が実家の状況と合わせて参っちまってるのがヤバい。
「文姫殿は良い。だが呂家の娘が如何動くかわかりません。ですが俺は并州勢を探らなきゃならない。
俺からも言っておきますが呂家の娘に俺は付きっきりになる可能性があります。参宿殿から見て大丈夫そうですか?」
「はっきり申し上げて難しいでしょう。頌姫殿に確と気を使って頂きたく思います。太傅様の事で気に病んでいますから」
「努力します」
いやマジで出来る限りはフォローすっけど物理的に難しいぞ。袁家の人を呼ぶっつっても頌姫殿が親しい人は大体汝南にいるしな。つーか下手に屋敷に呼んで勢力築こうとされたら目も当てられん。
「取り敢えず此れから顔合わせです。申し訳ありませんが家の事はお願いしますね」
「はい」
あーもーほんとムズイ。家庭環境が政治状況に左右されすぎだろタコォッ!!
耿祉・去病
字は適当に北方異民族に対応した霍去病から取った。於夫羅にやられた度遼将軍。度遼将軍は北方騎馬民族に対応する将軍。ってな訳で上党に駐屯しててもおかしくねーなって思ったんで張楊をボコった名前の分からない上党太守って事にした。




