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盧植のおそらくは居ただろう子供に転生?した系三国志の話  作者: 凡凡帆凡
個人的に三国志演義で一番テンション上がるのって虎牢関の戦い編
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カチキレうほうほゴリラ

 鮑の旗を薙ぎ倒しながら進む。それは北中郎将騎馬隊であり目指す先は敵主力へと突っ込んでいく。その先頭の若過ぎる将軍は斧の先に付いた矛で敵を貫いていた。ここまでは普通である。

 飛んできた弩の矢を掴み棒手裏剣の要領で投げ返し長身の逃げ遅れた兵がいれば頭を掴んで敵に投げつけた。当然それらは斧を持たない手で行われており、その体を馬と繋げるのは足の力のみ。では投げ返しや斧の一振りが攻撃として弱いのだろうか。

 否である。全くもって否だ。弓と変わらず羽の無い矢は強く直進し人体を貫通していた。投げられた人も放物線ではなく直進してグチャグチャにしていたしグチャグチャになる。大斧で叩かれた者に関しては弾丸となれれば幸いで酷い者は次の頭を待つアンパンみたいになっていた。


「キョオオオオオオオオォボオオオオオオオオオオオオオオォッ!!!!!!!!!」


 孔子は怪力乱神を語らなかった。たぶんコレ見たら語らないんじゃなくて語れなくなる。だってやってる事がギャグだし。

 いやギャグなら良い。寧ろ過程がギャグで結果がスプラッタは誰も語りたく無い。と言うか見たくない。


 正直言って人間がパァンとかいう音立てちゃダメである。音もダメだし衝撃で様々な物が弾けるのは本当ヤバい。

 モザイク必須レベルでモザイクがあっても挽肉に見えるくらい色々と飛び散ってる。


 無理に集められた兵だろうが、雇われの兵だろうが義勇兵だろうが同じ事。名将だろうが勇将だろうが知将だろうが猛将だろうが無関係だ。英雄豪傑だろうが凡夫弱卒だろうが寒門名門だろうが変わらず等しく平等。


「キョオオオオオオオオォボオハ何処だアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」


 血と骸の竜巻が生者を火砕流に換えて左右二つの大津波を作って進む。橋瑁軍は山東の将の中で数少ない装備の整った軍だ。それが災いしていた。

 慣れぬ鎧の重さとその防御力により人外の理不尽から逃げる術が無く、その身に受けて僅かに即死出来ない者が少なく無い。

 神仙と見紛う程の美しい男の憤怒の眼光に見惚れながら次の瞬間には断たれ叩かれ爆散していく無常。


 異常で異様な無常に続く異民族の騎兵達は大体おんなじ様な事を考えていた。こいつキレすぎだろコエーよ的な事を。そりゃこんなん誰だって怖い。


 まぁでも盧繁がキレるのもしゃーない事だった。だって袁隗や袁基が状況的に自害せざるをえず嫁さんの立場が悪くなったのは橋瑁が公式文書偽造とかやって袁紹担ぎ上げた所為だ。乗った方もアレだが橋瑁は主犯。


「ミツケタァ……」


 そんな相手を見つけて仕舞えばもう妖怪の類である。何と言うべきか見た目整ってる所為で余計に怖い。ニコじゃなくてニッコォ……て感じで笑ってる。

 猛獣の威嚇でももうちょっと可愛いだろう。影の入った顔から弦月みたいな目と口だけ見えてる絵面などほぼ呪いの人形だ。怒りと不満が滲み出て文字通り呪われそうである。

 さて、ではそれを向けられた側はどうなったかと言えば不動だった。素晴らしい人柄と温情と威厳を兼ね備えた橋瑁。そんな評判だった男は馬上で剣も抜かずにただ手綱を握っている。


「元偉様ッ!! 早く撤退しましょう!! 元偉様?!」


 部下の言葉にも反応しない。


「元偉さ——コイツ白目向いてるぅッ!!」


 部下がマジの巻き舌で絶叫した。軍の指揮官たる橋瑁がマジで白目向いて思いっきり気絶してたから。なんら涎がツーってなっとる。


 ただでさえ「威厳? もねぇよンなモン」的な感じだった為に遂にとい話だが部下もコイツ呼びである。

 だいたい諸将集めて調子に乗り兵の質と量で驕った時点で人柄も温情も威厳もクソも無くなったてた。酷い物言いをすれば事を興すだけでもすごい事だが、その興した事を続け大きくする能力は全然無かったのだ。

 橋瑁の器量は反董卓連合とか言うモノを作って売り切れスッカラカンである。だいたいそんな感じだから運命は決まっている。


 ヌッと運命が、盧繁の大きく広がった掌が、審判そのものが迫っていく。橋瑁にとって幸いだったのはその迫る掌と盧繁の顔を見ずに済んだ事だ。寝起きドッキリ(死んだ方がマシ)をされるのと比べるとアレだが見ただけで十二分にショック死してたろうから。


「ッギ……?!! あ“ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!!」


 声帯から、こう何というか。そう真っ赤に錆びた鉄を石臼の様に擦らせたら出そうな悲鳴を上げる橋瑁。そのまま連れ去られて。


「ダズ、け……!!!」


 彼は帰って来なかった。


 〓徐栄〓


 潮時か。この戦場も、彼も。


「貴公、此の徐栄の前に立ったのだ。名を聞いておこう。勇気ある者よ」

「グ、ハァ、ハァ。最早、これまでか……ああ衛、茲。衛茲だ。字を子許」

「そうか衛子許殿。貴公の事は忘れ無い。折れた剣と腕一本で立ち塞がった貴公の力戦を」

「……ハァ、ハハ。それは、ハァ、ああ。有り難い事だ。私に金集め以外に、ハァ、出来る事があったとは……。さぁ」


 首を差し出す、か。


「さらばだ英雄よ」


 たかが首一つ、たかが一振り、だが重いな。


「丁重に弔え。韓従事、韓観殿!!」

「此処に」

「すまないが弔いの手配は可能か」

「少々お待ちを」


 物資の量を写した竹簡とはなんと確りした事か。全く子幹殿に紹介して頂いて唯でさえ上がらん頭が更に下がる。

 確か二十になったばかりだと聞くが何かにつけて卒ない事だ。子昌殿にせよ彼にせよ全く最近の若者は。


「酒を多少ならば融通出来ます。陣中のことですのでそれ以上は……」

「いや十二分だ。感謝する」

「いえ。武人でなくとも良き者を手厚く弔うのは節義の問題。言え此処は言い方を変えましょう。良い事ですから惜しむつもりは御座いません」

「ハッハッハ。君は素晴らしいな。感謝している」


 さてしかし曹操か。存外にやる。

 即座に状況を見切って撤退し、置いて行かれて尚も奴の為に戦う者がいた。烏合の衆の集まりかと思ったが中々どうして。少なくとも曹操の軍は烏合では無い。

 もし奴が指揮を取る事があれば少々注意が必要かもしれん。


「さて、後は随分と深くへ行った子昌殿が無事であれば言う事なしだ」


 ……まぁ、どうこうなるとも思えんが。曹操が二人いるとも思えんしな。


「徐中郎将」

「何かな? 韓従事」

「アレは大丈夫なんでしょうか」

「アレ?」


 どうした事だ。韓従事が血の気が引いた顔で何かを指さすなど。いや普通に考えれば戦場の空気などそう慣れぇーーーー? あれぇ?


「韓従事。すまんが私にもわからん。何アレ、こわ」


 いや私だって持ち上げるくらいならわけないけど。何で片手で鎧を纏った人間を振り回せるんだ。と言うか生きてるのかアレは。


「徐中郎将!! お疲れ様です」


 そんな人間振り回しながら好青年丸出しにされても……。


「あ、ああ。子昌殿も御無事そうで何よりだ」


 ……聞き難い。すごく聞き難い。と言うか聞きたくない。しかし一応は大将として聞かん訳にも……。ええい!


「ところでその回しているのは?」

「橋瑁です。捕まえたんで振ってます。本当は地面に叩き付けたいんですが死ぬんで」


 ……まぁ、未だ若いからな。ウン。怒るのも当然だし。

 いや、やっぱ怖いわ。幾ら何でも苛烈過ぎるだろ。平時に温厚だから余計怖い。

 と言うか、その状態で生きてるのか?


「そうか。余計だろうが殺さない様に気を付けてくれ。重要な情報源だ」

「勿論です。もっとも何回か賊でやってるんで加減は出来ますから御安心ください。まぁこれくらいなら平気です。車蓋に見えるくらいが限度ですね。

 流石にこれ以上早く振り回すと何か物に当たった時に頭パーンしちゃいますが」


 車蓋って。えぇ……もう円じゃないか。どんな回し方だ。


「そうか。では北中郎将殿。滎陽へ行こうか」

「はい。あ、あと捕虜が凄い出ちゃって」

「ほう。如何程かな?」

「ザッと万」


 ……多いな。


「それは大功ですな」

「なんか勧告したら凄いビビられちゃって。殺すなら首を切って直ぐに殺してくれと泣きつかれました。タチの悪い噂を信じて拷問でもされると思ったんですかね?

 全く相国様は濡れ衣だし俺がそんな事する訳ないのに。まぁ情報源なんて噂くらいしかないとはいえ全く失礼な」


 いや、そんな人間振り回しながら言われてもなぁ。


「あー流石に手首疲れた。橋瑁ポイー」


 子昌殿ホントそうゆうトコだろうに。

 あとなんだポイーって。水切りみたいに飛んでったぞ。生きてるかアレ。

 まぁ文書偽装とかする様な輩だし良いか。


「さぁ帰るとするか」

今回の連続更新終了ですここまで呼んで頂き有難うございました。

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