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盧植のおそらくは居ただろう子供に転生?した系三国志の話  作者: 凡凡帆凡
個人的に三国志演義で一番テンション上がるのって虎牢関の戦い編
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人中に在り

 旋門関の前には彼等に言わせれば義挙した山東の諸将達が陣取っていた。関門と軍勢の合間に転がるのは董卓軍の将が出て来たのをこれ幸いと考えていた者達の心胆を寒からしめた都督の亡骸。

 その傍の馬上で偃月刀を担ぐのは関羽と言う男だ。平原国王劉石が曹操へ預けた援軍の実質的な指揮官である高唐県県令の義弟。彼の巨躯の半ばまで伸びる長い髭が風に揺れて艶やかに漂う。


「何という強さか」

「曹操、気に入ったみたいだね」

「ああ孟卓。アレは良い、素晴らしい、彼との縁が欲しくてたまらん。関雲長、覚えたぞ。アレこそ将、アレこそ男の佇まい。気の済むまで語らいたい」

「出たな。また才に執着して。ははは。彼も気の毒に。彼を労うのに宴席でも開いてやったらどうだい?」

「良い案だ。有難う友よ」

「ああ、気にしないでくれ。ただ気を付けてくれよ孟徳。君は紅葉すると相手を驚かせるからね」

「ああ、そうだな。そうだ——」


 戦場に雷撃が迸った。それは此の地にいるすべての人間が覚えた悪寒。危機への警鐘。

 それに従えば関門の城壁の上、凸凹の女牆に立つ暴と美の塊を見た。

 声が良く通ると言う。それと同じ様によく目立つ燦然と美しく大きな男。彼が一歩前に。


 ——ト。と着地する。


 光って居た。それは錯覚だが余りの美しさに燦然と恐怖する程に輝いて居いたのだ。黄金の明光鎧と長大で美しい方天画戟。


「赤兎!!」


 ——ド。と関門が開く。


 赤い怪物が出て来た。馬の様な神獣だ。少なくとも馬とは思えない何かが出て来た。


 美と武と暴の神仙と神獣が並ぶ。


「さぁて少し見物に行こう」


 神獣が咆吼の様な嗎きを返せば黄金の立髪を一撫でして神仙が跨る。

 関門の扉が閉まり大地が爆発した。濛々と上がる砂塵は高々と広々に舞う。それを背に跳ねる様に進む一体化した様な人と獣。

 関羽が大きく目を見開き動揺を見せ、偃月刀を握り義兄と義弟を驚かす。


「君は後さ」


 その横を囁きを残して過ぎ去って。


「少し準備をするとしよう」


 山東の諸将の軍勢へ単騎で突っ込んだ。そこからは冗談の様な現実。全てが有り得ない事である。

 単騎掛けは有り得ないが故に、突っ込まれた軍勢の将兵達は立たなかったし立てなかった。人を一振りで殺すなど無理であるが故に、立ち上がった兵士達は目の前の出来事を夢と違える。人も馬も等しく疲労を感じるものであるが故に、数百名が殺されても動ける者が現れなかった。

 返り血の一つも浴びずに佇む神仙が神獣の首元を薄い笑みを浮かべ愛馬を撫でつつ口を開く。


「私は呂奉先」


 一瞥さえ無く。


「掛かっておいで」


 そして美しく周囲をグルリと見回し嘲笑いながら。


「掛かって来ないなら皆殺しだ」


 骸の中心で悠然と待った。すると周囲を囲って居た者達がお互いの顔を伺い始める。すると一人の老人が出て来た。


「儂が御相手しよう」


「御老人、名は?」


「穆順、字を長序。行くぞ若造!!」


 穆順と名乗った老人が槍を構えて突撃する。対して呂布は方天画戟を担いで何もしない。

 不動たる騎馬と前進する騎馬が交差し伸び。


「さよならだ御老人」


 貫き穿って突き上げたのは方天画戟。筒袖鎧諸共肉体を易々と貫通させて力のままに前へ出す。老将を弓矢の様に飛ばし兵の川を水切り様に跳ねさせた。


「さ、次だ」


 ニコニコと呂布は笑う。その顔には返り血どころか汗さえ無く、子供が無邪気に御馳走や新しい玩具を待つ様。艶やかで燦然と輝く様な笑顔。


 ふと方天画戟が呂布の肩から離れる。そして何かが下から飛んで兵達を薙ぎ倒す。倒れなかった兵が何事かと見れば赤。バラバラでグチャグチャになった人体。


「早く次だ次。さぁ急いでおくれよ。じゃないともう一度飛ばすぞ?」


 何の事はない。呂布は赤兎馬の足元に落ちていた兵士の亡骸を飛ばしたのだ。それが生きてる兵士にぶつかって弾けたのである。


「待て呂布」


 底篭る様な濁声と共にズンと呂布に勝るとも劣らない巨躯が前に出た。背丈は同等にして横幅では三倍はあるだろう。シルエットこそ丸いが満ち満ちた重量が他者と一線を画す糸目の大男。


 牛と見紛う様な馬に跨り余りにも長い柄をもつ錘、重鉄槌とでも言うべき武器を担いで前に出た。


 そして糸の様な目に警戒を浮かべて鉄槌を構える。


「この儂が相手をしよう」

「良いね。とても良い。誰だい君は」

「名乗れる様なタチじゃあないが武安国だ」

「ふーん……。まぁ、強さ以外は如何でもいいや。さぁやろう。今すぐやろう!! 血肉踊る叩きをしよう!!!」


 次の瞬間には音が消えた。呂布が赤兎馬を前進させたのだ。粉塵砂塵と暴風で何も見えないが武安国は鉄槌を握り。


「ガアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


 咆哮をあげ愛馬と共に前へ進み鉄槌を一振りした。

 鉄槌が方天画戟を受け止める。巨大な鐘にも似た、しかし鋭い音が広がった。将兵に歓声と響めきが広がる。

 しかし誰よりも心底から喜び勇んだのは呂布である。


「良いぞ武安国」


 方天画戟を両手で握る。


「さぁ十合は持てよ」


 ズッと圧を増した呂布は己の膂力だけで武安国を馬諸共飛ばす。武安国は手綱を握って愛馬と共に倒れる事を防いだ。


「止まれば死ぬ。頼むぞ戦友よ。ガアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


 武安国は愛馬に囁いてから猛然と猛進した。呂布は赤兎馬を突っ立たせ嬉しそうに笑いながら方天画戟を回して待つ。

 人馬一体と言うよりは人馬一塊になり武安国は進んで行く。野球のバックスイングの様に鉄槌を振り被り豪速球も格やと言わんばかりに進み一合。弾かれるもそのまま駆け抜けて武安国は馬首を返す。

 呂布は赤兎馬の向きこそ変えるが追う事はせずに矢張り愛馬に跨っている。その呂布が心底楽しそうに口を開く。


「ああ武安国。君の献身を忘れないでおこう。少し自信を失う事があってね。矢張り私は強いと実感できる。感謝するよ」

「……傍迷惑な事だ」

「だろうね。だが、これが君の運命だ。受け入れると良い」


 そう言うと呂布は赤兎馬を撫でた。


「——っ!!!!」


 武安国は咄嗟に鉄槌を振り抜く。その鉄槌の付け根を方天画戟の月牙で止める呂布。そのまま武安国にまとわりつく。


 嵐の様に激烈で濁流の様に怒涛で雪崩の様に思い呂布の暴威を受ける。


 二合、横凪を辛うじて弾く。

 三合、逆袈裟を辛うじて逸らす。

 四合、突きを受けきれず避け兜が飛ぶ。

 五合、引き戻し迫る刃を打ち上げる。

 六合、隙と見て鉄槌を振るも止められた。


 極度の圧に武安国は一度愛馬を走らせ距離を取る。それは逃走で有り必殺の一撃を放つ為の準備でもあった。呂布に唯一勝る重量による一撃を企図したのだ。

 愚直なまでの突撃であり先程と変わらない振り被りて愛馬に任せる。地を軍鼓代わり鳴動させて死して当然と思いながら前へ。


「ガア“ア”ア“ア“ア”ア“ア“ア”!!!!!」


 全身全霊どころか愛馬の命さえも掛けた一振りは方天画戟に止められた。それは呂布も赤兎馬も小揺るぎもせず鉄槌だけで無く突撃諸共を止めたのである。七合目にして改めて武安国は悟り受け入れた。


「一撃入れる事さえままならんな……!!」

「ああ武安国。わかったかい? 残念だ」


 呂布は方天画戟を捻る。鉄槌の横っ面を叩く様なそれで武安国の獲物は上に弾けた。辛うじて握って居た腕を引き戻す武安国。

 測ったかのように方天画戟が横腹へ迫り鉄槌で防ぐも馬諸共にフワリと浮く。更に愛馬が着地するに合わせて方天画戟が落ちてくる。


「グ、くっ……ヌ……ガっアアアッ!!!」


 武安国は押し返したが方天画戟は止まらなず三度下され十一合目にして鉄槌の柄が刃を受け止め切れず武安国の左腕まで切り落とす。


「良くやったよ武安国。折角だから私に名を教えてくれたまえ。覚えておくからさ」

「ハァ、ああ、はー、ふぅー。武衛。ハァハァ、儂は武衛だ」

「そうか安国殿。楽しかったよ。感謝する」


 そう言って呂布は方天画戟を始めて大きく振りかぶった。武衛の首を一瞬で落とすそれは止まる。そして呂布は獣性を帯びた狂喜的な笑みを浮かべて見せた。


「其方から来てくれるとはね関羽」

穆順・長序

字は適当。三国志演義オリキャラ。


武衛・安国

名は適当。武安国として出てくる三国志演義オリキャラ。

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― 新着の感想 ―
さすが呂布。一騎当千っぷりが凄い。しかも脳筋じゃないw 闘神というに相応しいカッコよさ …主人公これとタメか上行くんですよね?人の身形した災害かな?
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