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盧植のおそらくは居ただろう子供に転生?した系三国志の話  作者: 凡凡帆凡
個人的に三国志演義で一番テンション上がるのって虎牢関の戦い編
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関門

 兗州陳留郡酸棗。魚鱗甲や筒袖鎧を纏った男達が鼎を傾けていた。ただ一人を除いてだ。


 その一人に大柄でガッシリした体系の威厳ある見てくれの男が視線を向けた。鼎に酒壺から尺で酒を注ぎ己の口に。


「ングングッ……ハァー。でぇ? 自称車騎将軍殿は如何した」

「動く気はないそうだ」


 酒に手を付けぬ男、曹操が辟易と答えた。


「だろうなぁ。王匡は向こうの主力だろ。とは言え叔父を死なせておいて、か」

「橋太守は兵があるのに動かんのかね」


 兗州刺史劉岱が呆れた様に問えば酷くおかしそうに。


「ッハ!! 劉刺史殿ぉ。小勢の貴公には分からんだろうが我が兵が動くには多量の物資がいる。それこそ黄河を遡るのも苦労する程に膨大な量がな。

 まぁ唯一本当に万を超える軍勢を率いていれば動きたくても動けんよ」


 特に仲の悪い劉岱だけで無く誰もが気分を悪くした。実際に大将軍何進の命令で、即ち朝廷の金と食料で兵を集められたのだ。

 当然だが個人や足場固めも出来ない中で兵を集めた者とは段違い。橋瑁の軍勢は多くて強く主力であり全軍の三割。いや下手をすれば四割が彼の軍勢だ。


 だがそれを笠に着て奢っていた。


 当然だが兵が多いが故に発言力が強いだのと言う分を超えている。

 例えば兵糧を半ば強奪するなどは兵の多さを考えると統率が出来ていないと言う点を除いて食わせるために仕方のない部分も納得出来ずとも理解はできるだろう。

 しかし小馬鹿にした様な物言い、いや勝者の様に振る舞えば理解も出来ない。


「さて董卓は長安へ逃げた。既に我らの威勢は天下に轟いた。成す事も無いだろう」


 これである。橋瑁は最初こそ抑えていたが今では驕りと侮りを隠せなくなっていた。あまりにも露骨。

 曹操は董卓にも勝たず山東諸将の中で勢力が強いだけで、それこそ董卓の意図どころか現状の認識さえも出来ずに既に勝者を気取る様な男を侮蔑する。

 そう、酷く見下しつつそれを欠片も出さず友好的な笑みさえ浮かべて。


「しかし兵を持ってこのままでは我等の名は地に落ちますな。指揮官としては王匡より酷い評判と成り果てるでしょう」

「何だと?」


 問いを発したのは橋瑁。しかし誰もが納得できる事で耳の痛い話だ。誰も彼もが顔を顰める。

 そしてそれは曹操から事前に敵への攻撃の必要性を聞いていた者達もだ。と言うか事前に聞いていたからこそ今、発破をかけられて気付いた者よりもより深く広く現状を理解していた。名で済めばいいが政治や軍事的に機を逸する拙さも理解していたのである。

 誰もが強弱軽重はさておき同じ懸念を抱いた所で曹操が然も今思い付いた様な顔で。


「一先ず兗州から出て司隷まで行けば最低限の面目も立つ。また全軍で前進すれば敵も安易な攻撃を選択し難い。進軍を停止してもおかしくない御誂えの場所もあるでしょう」


 曹操の言葉に誰もが好意的に聞いた。面目が立つのは素晴らしく抜け駆けが無いのも最高だ。だが進軍し過ぎるのも問題だから。


「うぅん。行奮武殿。それで我等が全軍で進軍して止まる場所とは?」


 嫌味は無いが随分と金の掛かった絹の頭巾を被り何処か斜に構えた男が問う。その小洒落た西河太守の崔鈞に合わせて曹操は少し考えて。


「穆王が虎牢を狩ったという地に建ち、昔は成皋関と言われたという関門です」

「旋門関か」


 質問者に合わせた応えに答えたのは崔鈞では無かった。

 随分と粋な事をと考えていたら別の者に応えられたのである。崔鈞は平静を装うが案を覚え空気を読めない読む気が無い者と言う印象を覚えた。それは場に居る全員も考えを等しくしながら敢えて無視する橋瑁。

 そんな顰蹙を買いながら答えた驕る男に曹操は頷いて。


「そうです橋太守。どうせ道中に敵は居りませんので進むは易く故に滎陽まで。まぁ多少は攻めねばなりませんが」


 曹操は敢えて敵が誘引している事を身内以外には伏せて言った。何だったら敵も居なければ民も居ないので補給はし難い。だから戦わざる負えない状況に出来ると考えて。

 諸将は名声の為に補給の事を考えながらも、同時に名を落とした王匡の二の舞になる事を恐れて意図的に道理から目を逸らし、曹操の言葉に好意的かつ楽観的に受け取って。


「まぁ道理だな。では各々は如何か? この橋瑁は進むがな」


 おかしくは無い。無いが全員テメェが仕切るなと言う思いを押し殺して橋瑁の問いに頷く諸将達。袁術と袁紹に伝達の上で進軍した。


 まぁ名義作りに目的とした援軍を派兵するなどと言われ南北袁家を初めとした各所からの特に欲しくも無い援軍を待つ羽目になったけど諸将は進軍した。


 司州河南尹滎陽旋門関。そこで余興の様な小競り合いが始まる。守将趙岑の元へ董卓がある男達を送った。


 〓呂布〓


 うーん、いいねぇ……。子昌との戯れ合いからやっと調子が戻ってきたよ。気分が良いじゃ無いか。

 方悦のおかげかな? フフフ。彼は惜しかったけど。手柄にはなってくれたね。

 まぁ今は目の前の取り分の確保をしなきゃ。


「さて華都督殿。どうする?」

「貴公は強い。だから私に行かせてくれ。鶏を割くに牛刀を用いては小刀の出番がなくなる」


 フフフ。何と謙虚な方だろうね。私よりは弱いが良い武人だ。


「ああ此処の戦いは余興みたいな物さ。徐栄達が迂回して葉雄が民と兵を撤退させるまでのお遊戯会だ。確り遊んで来なよ都督殿」

「ハッハッハ。すまないな。指揮は趙岑に任せれば良いだろう。頼んだぞ」

「はは!」


 まぁ趙岑は座ってれば良いさ。私達が遊んでる間に此処を取られなければね。取られたら殺すけど。


「フフフ。城壁で文字通り高みの見物と洒落込まなきゃね。

 さぁ諸将諸兵!! 太鼓だ。英雄の為に鳴らせ。呵成だ。英雄の為に吼えろ。全身全霊を込めて全力でだよ。

 我等が戦友にして英雄華都督が出陣だ」


 いいねぇ腹ぞこに響く音だ。強い鼓と鯨波が心地良い天上天下至上の音曲。門が開いて都督殿が進んで行く。


「ガッハハハハ!! 山東の賊供よ!! 暇潰しに関より出張って来てやったぞ!! 

 威勢の良い言葉を吐く貴様らは此の華孟大の相手をする度胸はあるか!! それとも不孝者の袁紹のケツを舐めるしか脳が無いか!!」


 これは何と品が無い。しかし敵の顔は真っ赤じゃないか。フフフ面白すぎるね。


「全く。都督殿は口も達者だな。皆見ろ敵のウブな顔を!! 皆も見下ろし嘲笑ってやると良い!! ハッハッハッハッハ!!」


 お、一人釣れたね。


「おのれ!! その物言い許せん!! 後将軍様が配下兪子交が突き殺してやるわ!!」


 フム。袁術と言う事は汝南の出かな? 

 鍛えているし武器防具こそ立派だけど、まぁ馬に乗るのが下手だね。足も細そうだし并州や涼州じゃ女子供に劣る雑魚だ。まぁ槍も物は良いけど短いし豫州じゃあ仕方ないか。

 持って三合ってところだろうね。


「来い兪子交!!」

「行くぞオオ!!」


 お行儀が良い事だ。愚直に華都督殿に突撃するなんて。終わったね。


「確と馬に跨れい!!」

「なっ?!」


 ああ、やっぱりだ。軽い横薙ぎを受けきれずに落馬した。あの様子じゃ刃で槍を逸らされた事はわかってそうだけど鎧が丈夫だから生きてただけだね。修練を積んでる止まりか。実践が足りない。惜しいけど。


「さらばだ兪子交!!」

「クッ……グフ」


 お、意外に二合目は受け止めたな。でも華都督殿の偃月刀で諸共真っ二つだけど。いやはや何だ。三合も持たないのか。

 それにしても敵陣の士気が落ち切ってる。全く高々一匹くたばったくらいで慄くなんてゴミしか居ないのかな? 本当に威勢の良い事を言っておいて情け無い連中だ。

 さっきまで騒いでたコッチの兵達も不満そうじゃあ無いか。華都督殿も暇そうにし出しちゃったね。それとも何とか煽り文句を考えてるかな?


「ガッハハハハ!! 雁首揃えて誇りある者は此の若人の亡骸一つか!! 貴様らが殺せるのは使者だけだな!!」


 考えてたか。ん? アレは……随分と無粋な奴がいるなぁ。ゴミ以下か。


「皆、此の潘凰に続けェ!! 遊戯に付き合う事は無い!! 我が大斧の錆となるが良いわ賊将!!」


 あの丸いのはダメだね。環首刀を持った騎兵八人で勝てると思ってる目の悪さ。あの程度の筋力で大斧を握ってる所なんて最悪だ。

 何より数を頼んで雑魚が燥ぐのは見るに耐えないってものさ。縊り殺したくなる。


「華雄! 遊んでやるぞ!」


 あーあ、華都督殿も白けた。手綱から手を離しちゃったよ。


「……なら、遊ばせて貰うか」

「え?」


 いや弱いなぁ。騎兵なんて獲物ごと三振りで皆殺しだしゴミは腕を飛ばされて落馬か。止めかな?

 あ、いや態と肩を刺したね。そのまま丸いのを片腕で空へ飛ばした。いやぁ蹴鞠か六博の球みたいだねぇ。

 全然面白く無さそうだけど。


「あああああああああああああああああああああ!! あ」


 お、目があった。随分高く上げたね。


「やぁ、下を見ると良いよ。豚」

「——え、え? あ……。あ“あ”。あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”!!!!!」


 見えなくなっちゃった。どれどれ。


「お、ハッハッハ随分と綺麗な赤色に染まったじゃないか」

「都督殿は貴方のお目に適いましたか」


 ん、此の声は。


「ああ、そうだね張遼。華都督殿は中々に良いよ。それにしても随分と久しいじゃないか。見かけないと思ったらこんな所に居たんだね」


 フフ懐かしいものだ。


「ええ御久しぶりです奉先殿。ここの守備に回されて居ました。

 それより高軍侯様、雁門馬邑の張遼で御座います。覚えておいでですか?」

「え……。ええ。久しいですね。張騎都尉」


 そ、それより? 何で私には普通に声を掛けたのに高順には跪く? おいコッチを見るな高順。なんだその申し訳なさそうな目は!!


「おお! 高軍侯様は私が騎都尉になった事を御存じで御座いましたか! これほど嬉しい事は無い」

「え、ええ。同郷の者の活躍は嬉しいものですから。并州でも話題になっておりますよ張騎都尉」


 ……ま、まぁ良いか。それにしても此方は盛り上がっているが彼方は葬儀でも始まったかの様だね。これはまた長そうだ。


 む?


「何だあの髭は」


 あれは悪く無いな。馬は貧相だが随分と乗り慣れているじゃないか。特に服の上からでも分かる腿の厚さは悪くない。戦を知らない弱卒じゃ無いな。

 それと服と馬を見ると盗んで来たって言った方が納得できる偃月刀だ。あれは中々の逸品だね。並の人間なら振る事も難しいだろう。

 うん。雰囲気だけの男じゃあなさそうだ。お手並み拝見かな。


「随分な男が出て来たな。私は相国閣下に此の地を守るよう都督に任じられた華雄、字を孟大である。貴公の名を聞こうか」

「私は関羽、劉元徳が義弟。字を雲長だ」


 髭を撫でるとは余裕があるな。華都督殿も警戒してる。中々どうして絵になるじゃないか二つの偃月刀は。


「行くぞ雲長!!」

「来るが良い華雄よ」


 始まった。おお……。


「驚いたねぇ」


 さようなら華都督殿。残念だけど楽しくなってきた。ああ、そうだ。そうじゃ無いか! 次は私の番じゃあないか!!


「ちょっと行ってくるよ高順。守将殿を手伝ってやってくれ」

「は」


 ああ楽しみだ。

旋門関

虎牢関と汜水関が一緒とか知らん。そもそも虎牢関て呼ばれてないとか煩い。マジで中坊くらいの時に虎牢関の戦いが史実でないって知って「だと思ったわクソが!!」ってなったから演義だろうが三国志だろうが反董卓連合題材にするんなら意地でもネジ込む。リアルとかリアリティとか知らん。青龍偃月刀も方天画戟も書きたいモン全部書く。


趙岑

三国志演義オリジナル武将。董卓家臣で汜水関の守将。


華雄・孟大

都督華雄。三国志演義で関羽に関係して三国志呉書孫堅伝で孫堅と関わる。


葉雄

なんか集解とか言うのだと都尉葉雄ってあるらしい。よく分からないけど丁度いいから出した。


兪渉・子交

字は適当。三国志演義オリキャラ。


潘凰

三国志演義オリキャラ。


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