ここのエピソードタイトルとかキャラの名前とか考えるの苦手
キリのいいトコまで書けました。てな訳で一話二千文字も無い話もあるんですが、一日一話で土曜まで予約投稿します。
......ゲームだとメインクエスト進めたいなってなるのに現実だとメインクエストよりサブクエストの方が進んじゃう事多く無いですか。
洛陽の宮殿に朝廷の要人が集っていた。彼らを見下ろす皇帝は帝座にて冕冠の旒を揺らしている。見てくれは書生の様な後漢十二代皇帝劉宏は淡々。
「面を上げよ」
声を落とした。
「「陛下、万歳、万歳、万万歳」」
そして審問を受ける親子が顔を上げる。それを見る齢二十八の皇帝は薄く笑っていた。張り付いた仮面の様に見える表情だ。
諦念と恐怖とそれらに如何にか抗おうと言う意思。それを誰にも見せずにひた隠し座っていた。
だが其の笑みが分かっていないクセに無責任で不快な、少なくとも皇帝にとっては悍ましい正論を吐く、そう言う不快な相手に対する表情に歪む。
「盧植、お前は朕に八つの務めを果たせと言ったな。確か其の五が礼儀を慎む事、そして其の七が部下を監督する事だったか。皇帝の使者を縛り上げるのが礼儀で、部下どころか息子さえ監督出来ていない様だが。お前の果たすべき務めは朕の務めより重いか」
盧植は横倒し伸ばした手の甲に逆の掌を添え頭を下げ。
「先ず息子の事に関しては返す言葉も御座いません。教育を怠った私の責任で御座います。此の罰は当然私が受ける積もりで御座います」
「……ほう。続けろ」
「は、紙上に兵を談ず。史記の言葉に御座います。前提として宦官と黄巾は繋がっておりました。今、藺相如を抱える宦官はおりますまい。私は陛下を趙の孝成王にしたくは無いのです。
まして私は廉頗では御座いません。此の優位な戦況に監軍として来た使者殿は印綬も出さず賂を求めた。如何して使者と信じられましょう。後を考えれば敵の策略としか思えませぬ。
実直に申し上げれば今戦場で戦う者達を煩わせれば賊軍に利するのみと心得ます。私は陛下の御心に従い刑に服しますが、御身の為にこそ以後は別の者を用いて頂きたい」
要は、である。盧植は昔あった趙と言う国にあった出来事を持ち出して宦官、延いては朝廷が信用出来無い事を伝えたのだ。死ぬ気故にであった。
そして此の際だからと軍事に宦官を関わらせるなと言う言葉も添える。
平然且つ堂々と言って見せた。劉宏は辟易とした顔で。
「そうか」
一言だけ返した。お前ら名士豪族の何を信じれば良いのかと言わんばかりにだ。それは仕方ない。そう言う人生を送って来た皇帝である。故に溜息一つ。
「では皇帝の使者に暴力を振るったお前の子は如何するか。袁隗」
「……は」
己の事であれば淡々としていた盧植が相貌を思わず塞ぎ、歯を食いしばって口を開くのを堪える。その似合わない有様を痛ましそうに見ていた男が皇帝の前に出た。職務として法にも関わる彼に皇帝は問う。
「司徒たるお前が考える此度の刑罰は?」
「死罪相当とは心得ます。しかし盧北中郎将の功績を鑑みた上では中郎将免職が相応しいかと。子もまた齢九で兄の仇討ちに将を切った功績もございます。其の様に孝徳溢れた童を罰しては外聞が悪い。
また盧北中郎将殿程の将軍は御座いません。彼等を殺せば敵の行幸となる。賊軍を勢い付かせる事も有り得ましょう」
「……ふむ。子はともかくだ。盧植の禁錮も無しか」
不満そうに言う皇帝に一人の老臣が前に。
「宜しいか」
「……何だ鄧盛」
「大尉として言上致します。北中郎将殿の功績は賊軍を斬る事万を越え、その威名は天下に轟く物。此度の事を敵が策略だったと吹聴すれば賊の勢いが増すでは済まず其の勢いは濁流の如くなりましょう。
また免職までは兎も角も中郎将殿を収監するとなれば他の賊徒までも立ちかねませぬ。余談許さぬ今、どうか寛大な処置を。
また加えて伯献殿が寛大な処置をと願っております。曰く、差し出がましくも爵位の返上も覚悟の上との事。臣と致しましても感じ入る所があり申し上げました」
「楊賜か」
皇帝は吟味する様な顔で黙る。
実際のところ盧植の罰は皇帝の中で決めていた。名士も宦官も同じく危険な物と考える皇帝にとって、それを変える事をする積もりは無い。意見を聞いたと言う事実が必要なだけだからだ。
問題は寧ろこれからである。
それは誰もが共通だった。使者に手を出せば無罪放免は無理だ。しかし相手は十にもならない子供。又ちゃんと孝行者と言う美談。厳しくとも緩くとも朝廷の傷が増える。
左豊の賂の要求は大将軍司馬の聞き取りでおよそ確定。だから宦官は居るだけなのは幸いである。しかし矢張り落とし所が問題だ。
要は皇帝の派遣した者が塵だった。とは言え皇帝の面子を考えなければならない。特に今は乱の最中だから特に。
「……盧繁、だったか。お前の父は死一等を減じて免職し収監する。申し開きはあるか?」
投げやりに皇帝が問えば子供が拱手し頭を下げた。
「は、陛下。真に以て申し開きのしようも御座いません。返す返すも私の行いは愚挙の類で御座いました。しかし願わくば父上の収監は功によって御寛恕頂きたく。黄巾の賊徒が将の首をもう一つ挙げて参ります。それを以て陛下にかけた御迷惑を拭いたく」
誰もが絶句した。
〓盧繁〓
……。
…………。
…………………いや誰か喋れよ。
「お前は正気か?」
陛下メチャクチャ困惑してるやん。そりゃそうか俺って9歳だったわ。5年くらい経ってもマジ慣れん。
「尋常な事とは思いません。しかしそれだけの事をしたと考えております。感情任せの軽挙で御座いました」
「え、えぇ……」
ドン引きじゃねーか。
いや。まぁ、そらそうか。
……だいたい、もうガキのフリが無理だってなってからずっと此のノリだし慣れねぇ俺が悪いわ。
まー。もう、しゃーない。
ノリとか変えられん。
「陛下の御怒りは正当な物で御座います。御気遣い頂いている事も何となく察しました。故にこそ筋目という物を正したく」
「では如何する積もりだ。盧家に私兵でもいるのか。大言壮語も甚だしいぞ」
まぁそら呆れるよね。
「こうなっては我等は広宗の包囲には関われません。また攻囲戦では敵が出るまで待つ必要が御座います。故に皇甫左中郎将殿の元へ一兵卒として出向きたく思います」
「……良かろう。其の方の心意気に免じる。だが父母に詫びろ。我が父張譲、我が母趙忠にだ。それで従軍を禊としお前とお前の父を許そう」
皇帝がそう言うと二人の歳くった宦官が前に出て来た。小便臭さを十段階で分けて左豊を七とすればコイツらは十だ。性別の分かり難い皺皺ヒョロヒョロの汚臭供である。
メチャクチャ嫌なんだけど父上の進退に関わるからな。
「宦官にも中常侍鄭颯、中黄門董騰。更には呂男盛殿、曹季興殿と言う方々が居られる。賂を求めた為に悪人として相対しましたが陛下の信を得ていた事を考えれば軽挙でした。であれば優れた方だったのでしょう。何卒ご容赦願います」
なんかメッチャ空気悪なったけど?!
「……陛下」
うわスゲぇな父上の声。どんな顔してるか超わかる。メチャクチャ頭痛いって顔してんだろうな。マジスンマセン。
「あの問答の後に申し上げても。何と申しましょうか。信じて頂けないのは重々承知ですが愚息は妙な所で抜けております。代わってお詫び申し上げる」
……アレっすか。宦官連中の、いや。コレ陛下の政敵かなんかも居たかコレ。
っべマジやっべ。
父上が宦官でもコレくらいの節度があればとか言ってたから持ち上げる積もりで言ったんだけどマジやっべ。
陛下が疲労滲むクソ長い溜め息を漏らした。
何やねん。
なんか悪かったな。
「盧植、一先ずお前は免職とする。死罪を免じるが牢に入って謹慎せよ。盧繁、お前は皇甫左中郎将の下に従軍せよ。兗州東郡の黄巾を平定すか将を斬る迄はお前の父は牢に入れておく」
「此の盧植。陛下の御慈悲に感謝いたします」
あ、俺も一言いるか。
「死力を尽くします」
マジに気張らなにゃあな。




