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盧植のおそらくは居ただろう子供に転生?した系三国志の話  作者: 凡凡帆凡
だからァギチギチ過ぎんだってこの辺!! 二、三年掛けて起こる様な事が一年どころか半年で起きてんじゃねーか!! 編
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疑わしきを罰しちゃうと拙い

 盧家の屋敷ではお忍びで集まった政権中枢の三名が揃っていた。情報のすり合わせが行う為である。その三人に見つめられながら盧繁は突飛な事を語っていた。


「俺が居ないとしたら多分ですが父上は此処に居ないでしょう。

 何せ陛下の廃位など儒学者である父上は同意出来ず、すると太后様あたりに声をかけられ洛陽を離れる事になる。

 だとすると政治の二番手は必然的に王尚書令になります」

「まぁそうだろうな。閔貢の事もある。必然的にそうなるだろ」

「そして袁太傅が居なくなれば王允が政治で言えば最上位です」

「そうじゃのう。他にも能力的には同等の者が居る。しかし実績を鑑みれば確かじゃ」


 董卓と袁隗は一先ずおかしい事ではないと頷いた。子供の戯言と言うには聞く価値があると認めている。だからこそ加冠もしていない青年の話を聞く体制を続けた。

 特に袁隗は自身が漢王朝の政権に居座り続けた権力者である自覚がある。そして王允は漢王朝の腐敗から出た被害を特に受けた存在である事を知っていた。郡役人となり非道を正した結果として宦官によって策略を受け上司を殺され、張譲と黄巾の繋がりを暴露して捕縛され殺されかけたのである。数多の人間を見て来た袁隗としては良くも悪くも正義感が強く、頑迷に片足突っ込んだ頑固な男が己を巨悪と見ていて不思議では無かった。

 また両者共に礼儀正しい青年が呼び捨てにするなど相当な違和感を覚えたに違いないと言う信用があったのだ。或いはその絶世の美貌に神秘的な何かを感じて、これほどの男が言うのだと言う思いも確かにある。


「王允の故郷は并州で最初に暴挙に走った男は同郷の丁原です。それに加えて今回の事で光禄勲の荀慈明()殿が出張って来ました。

 昔、父上に伺った事が御座いますが確か荀慈明()殿は王允の下で黄巾族を討ち果たした御片で繋がりはあっておかしくない。

 また、あの場には黄門侍郎の荀公達()殿も居て、その荀攸殿は閣下の参謀として何顒と肩を並べていました」


 盧植が顔を顰めた。


「少々、穿ち過ぎではないか? 事実彼は侍中や侍郎、黄門を宮中に入れないように献策したのだ。董殿の有りもしない噂は一旦だが止まったぞ」

「私も穿ち過ぎと言うのは同感ですが父上。その禁令を破れるのは不心得者か特級のアホか子供、でなければ破った事を握りつぶせる立場の者が背後に居る者でしょう。また外に情報が漏れるのは河南尹の責任でもある。

 加えて今その立場にあるのは光禄勲の荀慈明()殿です。だいたい荀子の子孫が法令を破った事を咎められて庇い立てするのは異常でしょう。また実際に私が偶々目にしましたがあの慣れた感じだと侍中の男は恐らく何度か繰り返しておりますよ」

「何とも、困った。言いがかりだが否定が出来ん。王尚書令の関わりは確実とは言えん。言えんが少なくとも荀家は敵か」


 盧植が額を抑えて言えば董卓が嫌そうに。


「そうだな。更に言やあ洛陽に近い河東に白波が侵入出来た事もおかしいぜ。しかも河東太守は王允の兄貴の王宏に任せてる。いや、まさか……」


 董卓には思い当たる節こそないが状況が可能性を蓄積させる。盧繁はそれを見てとってもう一歩踏み込むことにした。


「ああ、それと父上や董殿は分かっていただけるかと思いますが辺境は結束力が違う。そうしなければ異民族に襲われた際に抵抗さえ出来ません。

 故郷の繋がりは強く丁原の暴挙の理由もそれかと。そう言う意味では呂騎都尉もある種危険かと心得ます」

「アイツか? まぁ言いたい事は分かるが誰彼悪く言うもんじゃねぇぜ。他の手隙の護衛も居ないしな」


 袁隗が珍しいものを見るような表情で盧繁を見ながら。


「そもそも子昌殿は王尚書令の何処にその様な危機感を覚えられた? 清廉潔白で有り気骨のある男じゃぞ」

「……言い掛かりは自覚しますが父上に黄巾で活躍した方々の話を聞いた時の印象に比べて余りに影が薄いんで。

 後は河南尹である事です。何せ様々な者が逃走出来た理由足り得ますから。それに漏れ出る情報が虚虚実実の実が政に関してのみ余りに的確過ぎるんで。

 虚虚実実どころか虚虚虚実を通り越して虚虚虚虚くらいの時もありますし、少なくとも身内では無いだろうな、と」

「まぁ、うむ。車裂きや徒党を組んだ者を罰した話は兎も角も皇甫将軍の叔父上の妻の話とかは酷い事になっとったな。いや確かに喧嘩はしたそうじゃが」


 董卓は非常に気不味気だ。皇甫嵩との関係を改めようと接触して喧嘩別れしたのである。非常に嫌な記憶だった。

 祭りを開いた村人の処罰、無実の罪を着せ富豪の財産没収、捕虜を煮殺す、公主や宮女に暴力、洛陽ので人攫い。

 この辺は未だギリギリ分かるが十年も前に死んだ男の後妻を妾にしようとして断られて殴り殺すとかあんまりだ。


「恨まれるのは織り込み済みだが、こんな風聞は流石にごめんだぜ俺ぁ……」


 淫祠邪教の祭事を禁じその法を犯した者達を皆殺しにした。富豪の財貨を奪い一族を奴僕にして売り払ったが罪故。宦官の一味の捕虜は確かに煮殺したが降伏を拒否したから。公主には手を出して無いが公主の侍女にいた宦官の一族の女は殺した。人攫いに関しては宦官の代わりに働かせる者の内で出仕を拒否した連中。


「あんまりじゃねぇか……」


 董卓は萎て盧植が思わず酒を注ぐ。流石に不憫すぎた。孫娘に真相を聞かれた時の表情ったら、もう。

 袁隗と盧繁も労うような目を向けて少し、盧繁が水を一杯飲んでから。


「まぁ、それで政に関わらない内容は雑です。余りにも」

「うぅむ……。確かに。彼が謀略を為した際に有りそうな事じゃ。じゃがそれも王尚書令を疑う理由にはなるまい。

 だいたい人の繋がりで言えば今の朝廷は誰もが縁故じゃろう。まぁ警戒しておくに越した事は無いが賢者殿の危機感が我等には分からんのよ」

「……ですよねぇ」


 盧繁も少々無理筋は理解していた。だがそれでも警戒すると言う言葉を引き出せたのは幸いだ。密書や密談の目撃が出来れば踏み込めたが現状の限界である。

 と言うか未だ起きてるか如何かも分からない状況だ。有り体に言って疑わしきを罰してしまう段階である。言い掛かりと言っても差し支えない有様だろう。


「繁よ。一つ良いか」

「はい?」

「今の話で言うと私が狙われていない理由がないぞ。

 参録尚書事も正式に授かり太保になった。廃位問題で御二人と意見を違えたが無関係ではない。寧ろ此度の事で繋がりは事実に近しい見え方になる。

 お前に存在も加えれば私の方が攻撃しやすく目障りだろう」

「父上はそう言う仕込みでしたから瑕疵が無いですし、王允からすれば宦官の被害者なのではないですか?」

「……ああ、うむ。同族意識か。その上でお前がいるから何方に振れるか分からんから話が来ておらんと。いっそ此方から接触してみるか?」

「今は無理でしょう」

「だろうな」

「なぁ先生よ。だったら河東の賊を討つのに虫下しを飲んでおきてぇんだが。策はねぇか?」


 立ち直った董卓が言えば袁隗も同意する様に頷く。確かに敵を抱えて軍事行動をするなど御免だ。少し考えてから盧植は大雑把な策を一つ組み立てて。


「今思いついた策で粗は有りますが白波賊の討伐の合間に繁を宮中から出してみては? 同時に尚書令と河東太守を見張るのです。王家については序でですが」

「そうだな。言われりゃ確かにキナ臭いぜ。余りにもな」


 盧植の言葉に董卓が同意し袁隗もこれからを思えば万一を考えて監視の目は付けておこうと頷く。それを見てから息子の懸念への備は十分だろうと考えて盧植は続けた。


「それで宮中では陛下や宗族の方々と話を合わせ、近づいて来た者達とその話の内容を聞いては如何か。同時に我等の既知の者を幾人か宮中に入れておき齟齬がないか確認する。確か繁には未だ宮中に参内していない親しい者達がいたな?」

「ああ、周家の公勤がいますよ。

 それに宮中であれば女官の方は何かと便宜を図ってくれてます。父上の親友の蔡殿の御息女なら上手く立ち回れるかと。宮中で彼女の意見を聞き入れない者は太后様くらいです。

 二人はきっと上手くやります」


 三人がコイツマジかって顔した。


「それと俺を宮中から出すなら都合が良い。河東白波賊の討伐に加えていただけませんか。騎都尉として牛中郎将の麾下に加える形で」


 三人がコイツマジかって顔した。


「市場で聞いたのですが白波賊に匈奴が加わってると聞いたんで。確か先の陛下の崩御の際に此方に来た者が帰るに帰れずとか何とか」

「確かにあったような……? 良くご存知じゃな」

「いやぁ、それに父上の仕事を手伝ってる時に小耳に挟んだんです。それで物資が有るのであれば白波賊や匈奴を戦力に加えられないかと。特に匈奴は騎兵戦力として有用ですから」


 三人がコイツマジかって顔した。


 〓牛輔〓


 いや白波賊十万とか言われた時は如何しようかと思ったがよ。めちゃくちゃ占って吉日選んだけど。


「いやコエーよ。何だよアレ。嘘だと言ってくれよ誰か」


 ウッソだろオイ。あの頭のおかしいデカさの斧が見えねぇって。つーか何で先頭? 赤児や郭汜より強くねぇかアレ。いや郭汜でも勝てねぇだろ。


「赤児、アレと同じ事ってできるか? 装備とか同じだとしてだ」

「無理だデス」

「だよねぇ……。何で三倍近い敵に突っ込んで突破できてんだろ。いや羽林騎だけど」


 おかしいよやっぱ。

 いや鉄の塊みてぇな剣、剣ってか鉄棒、鉄板? アレ素手で圧し折った時点でおかしかったけど。

 本当におかしいよ。


「それに子昌殿もおかしいがアイツもとんでもねぇな。義父上様が重用する訳だぜ。呂奉先つったか」


 俺と郭汜と張校尉で抑えて白ちゃんの旦那と奉先の騎兵が挟み撃ちってまぁ常道中の常道ってもんだが……。


「なーんで倍近い敵に勝っちゃってんだろうな俺ら……」


 いや深く考えねぇでおくか。


「で、王宏は?」

「奮戦だデス」

「まぁ先鋒を任せたしな。義父上様に注意しとけとは言われたが。王尚書令の兄貴だろぉ?」


 あ、匈奴の騎馬だ。敵ながら勘が良いな。騎馬のくせに山間谷間に隠れてやがったか!!


 アレじゃ白ちゃんの旦那が危ねぇ!!


「赤児!!」

「承知だデス……ア」

「あん? ……えぇ」


 おいおいおいスゲェな。牽制と休憩に移って足を止めてた所に突撃されそうになったってのに。足を止めた騎馬なんざ最も貧弱な兵だろう。どんな胆力してりゃあ義父上様みてぇな真似して先頭を射殺す事が出来るんだ。で、突っ込みやがるのかよ。

 いや確かに匈奴の連中の突撃の勢いは下がったが正気じゃねぇだろ。ありゃあもう神の領域だな。


「ああ、敵が崩れ出したな」

「追撃だデス?」

「ああ、用意頼むわ。俺も行くぜ。有りったけの物見を出せ!!」


 さて敵が并州に行かねぇように道が塞げてりゃあ良いが、并州牧の陳子遊と張楊に期待だな。


「完了だデス!」

「よし良いぞ赤児、先方は任す、追撃だ!!」


 あーあー平陽まで来ちまった。白波の本拠地の谷はこの辺だったな。


「失礼致します」

「おお、郭汜のとこの」

「武曲伍習でございます。白波谷に敵の残兵が残っているのを発見いたしました。先陣を務めていた盧騎都尉が頼みたい事があると」

「武曲が伝令か?」

「は、それが……盧騎都尉は敵を悉く降伏させる為に白波谷に行くと言って聞いてくださらないのです。流石に御止めしているのですが如何せん御力が強く」

「えぇ……」

「止めようとした郭校尉が引き摺られる有様でして」

「ああ、うん。もう行かせちゃえば? 死なんだろ……たぶん。と言うか賊が不憫だわ」

「……確かに」

陳逸・子遊

字は適当。なんか魯国相で霊帝ブッコロそうとしたらしい。董卓が陳蕃とか竇武とかの党人の無実を晴らそうぜって言って朝廷がOKして陳蕃とかの爵位を戻して登用したとか書いてんのに一人も例が出ねぇから無理にこじつけた。


伍習

郭汜の将として出てくる。

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