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盧植のおそらくは居ただろう子供に転生?した系三国志の話  作者: 凡凡帆凡
だからァギチギチ過ぎんだってこの辺!! 二、三年掛けて起こる様な事が一年どころか半年で起きてんじゃねーか!! 編
30/44

無茶

 尚書であり尚書令どころか三公でも無いのに既に参録尚書事として働く盧植は加冠もしてなければ役職にも就いていない息子に政務を教え手伝って貰いながら働いていた。

 定期的に浮かぶ儒学者とか以前に人として如何なんだろうと言う至極真っ当な自問自答。それを現状の錯乱じみた混乱の中でストライキかました連中の所為で増えた政務。その断崖が迫る様な錯覚を覚え雪崩の様な勢いで迫る現実で押し潰しながらだ。

 陛下と何太后を解放しろ的なアホみたいな上奏をボツにし、乱痴気騒ぎを治めた報告を上奏し、宦官派閥だったストライキ野郎や夜逃げ野郎をクビにする話を進め、良家子で官女を集める提案を上奏する準備を始めて思い出す。


「ああ、そうだ繁よ。お前の官が決まったぞ。董殿の司空就任の折衝と司徒の選定が一段落したそうだ。太傅様二派随分と遅くなったと詫びられた」


 荒れた洛陽からの一時的な遷都の計画案を策定していた盧繁が薄ぼやけた顔を上げた。盧植は己が滑稽かつ愚劣に思え又、漢王朝の錯乱ぶりに辟易とする。ただの二段階確認とは言え十代半ばの息子にさせることじゃ無い。

 だが他に手の空いている者がいないのだ。董卓も袁隗も今は竹簡と折衝に埋没していた。


「……いや任子でも無いのに若年で出仕して良いんですか父上。俺は試験も受けてなけりゃ大学にも行ってないんで高第とか博士弟子と射策って訳でも無いですし。前例なんてありましたっけ?」

「無かろうが仕方ない。それとお前は先ず議郎になってもらう。すぐに移って貰うがな」

「議郎……議郎ですか?! まさか!!」


 ガバっと竹簡と巻物を崩させなが立ち上がる息子に罪悪感を覚えながら。


「ああ、何せお前は陛下を発見し張譲を捕らえた。その功績を鑑み陛下直々の推薦として微召される。同時に合わせて弘農傅だな。

 年齢を考えれば早過ぎるが逆を言えばそれ故に陛下と年も近い。歳の離れた者ばかりよりは陛下にとって良い事だろう。また時期を見て桓羽林中郎将の補佐をし教えを乞うた後に騎都尉を担い北中郎将となって貰う。

 宮中の不穏分子を探し陛下と殿下の近くに侍り陛下を御守りするのだ」

「……北中郎将? え、いや十五ですよ俺」


 盧植は息子の困惑に内心深く頷いた。

 盧植だって能力は兎も角も年齢に関しては苦言を呈したのだ。年近い太子の護衛を行う太子庶子に若年で就任した蕭育や馮野王の先例を元に説得された。されたし必要なのは分かるが納得が出来る訳じゃ無いのだから。

 だからこそ息子の困惑に添いつつも。


「虎賁は董殿が担い連携も出来る。北中郎将は私の後継と言う意味もあるしな。陛下と殿下を守って欲しい」

「分かりました一先ずは騎都尉ですね。と言うと羽林を率いるんで騎兵指揮ですか。羽林郎だったらほぼ董殿の縁者ですかね?」

「昨今はそうでも無いが涼州の兵は多いだろうと思う。そして少なければ増やすことになるだろうな」

「あー、成る程。まぁ兎も角です。宮中の監視に俺がって事ですね? それと董殿との連携ですか。例の話の後は装わなきゃなりませんしね」

「その通りだ。万一の時は頼む。苦労をかけるな」

「覚悟は出来てます」


 そんな遣り取りを経て一先ず落ち着いた朝廷で大評定が開かれる。深く頭を下げた文武百官が集まる中に場違い極まる青年が混じっている。それは当然だが盧繁であり此れから始まる茶番を待っていた。


 音がする。玉のぶつかる音。それと絹鳴り。


「あ〜もう! こんなにオッサンばっか居ても気分が上がんないよねー! 並べるんならカワイイ子ちゃんが良い! あ、頭上げちゃってよ。肩っ苦しいし! 朕寛大!」


 盧繁はやり過ぎだろ等と思いながら頭を上げた。事情を知る者は皆が同じ評定だ。しかし知らぬ者は、まぁ、うん。


 すげぇ顔してる。


 だがそれを無視して皇帝は声を張った。玉座の上で頬杖をついてだ。


「司空董卓〜」

「えーと……はい」

「上奏があると聞いたぞ朕」


 董卓は思わず非常にやり難そうな顔をしてしまった。事情を知る誰もが納得してしまう何とも言えない表情だ。

 だがそれを振り払う様に全身を鳴動させて戦意さえ漂わせた。百官は数人を除いて肝を冷やす様な覇気が迸る。


「……世の中で最も重要なのは天地。それに次ぐのが君臣だ。それが政治の行われる所以だろう」


 言葉が重い。


「天子は闇弱で宗廟を継ぐ天下の主たるべきでは無ぇ。だから今、伊尹や霍光の故事ってモンに習って陳留王を立てようと思う。太傅殿は如何思われるか!!」

「……儂の不徳の致す所。敢えて否定はいたしませぬ。立場相応の責を成せなかった。その処罰も受ける所存」


 袁隗がそう言えば公卿以下の誰もが敢えて答えられなかった。だって天子めちゃくちゃ頷いてるもん。どんなリアクションすれば良いのかマジ分からん。それを見ちゃった董卓はまた鳴動させ。


「昔、霍光が後継を決めた時にゃあ田延年は剣に手を掛けたという。敢えて大儀を阻むってんなら軍法に照らして罰する!!!」


 今度の沈黙は恐怖だ。董卓の声が心胆を寒からしめる。それは衝撃となって駆け抜けた。


 だが一人の男が悠然と立つ。


「お待ちくだされ」


 凄い微妙な気分を顔に出さぬ様に顰めた表情を作る硬骨漢。董卓の発した衝撃と肯定する様な空気を泰山の様に受け止める。

 正直言えば必要は承知で酷い茶番を演じるのは億劫であった。しかし息子の為を思えば演技も一つもこなして見せると思い。

 欠伸してる皇帝は務め無視。


「昔、伊尹に桐宮に放逐された太甲は王となって後に智徳にかける行いが御座いました。霍光に候へと降ろされた昌邑王の罪過は千に余るが故に廃立が行われた。

 しかし今生陛下は未だ年若く不徳の所業も無い。先の例と比べられはしますまい」


 董卓から怒気が発せられ、それを盧植が受け止める。気弱な文官どころか一端の軍人まで腰を抜かしそうになる黄巾の英雄二人の無言の鍔迫り合い。その一瞬にも永遠にも感じる覇気のぶつかり合いは唐突に途切れた。


「ハァァーーー・・・」


 怒気そのままの董卓が獣の様な笑みで立ち上がり退室したからだ。文武百官の半数近くが腰砕になり皇帝が運ばれて退出。盧植が場を去り一人の男が立った。


「うむ……しかし。そう、しかし殿下の聡明さは違いありませんな。言葉は強いですが」

「丁尚書」


 袁隗が驚き名を呼ぶ。


「この丁彦思は賛同致します。盧尚書の言葉も正しいですが此の騒乱の天下。今は仕方有りますまい」


 そして袁隗が渋々といった態で廃位の意見を浸透させた。


 〓盧繁〓


 クソッタレ本当に何が正解かわからん。つーか王允の警戒はしてたけど此処の状況で袁紹逃げ出すとかマジかよ。太傅様が居るから大丈夫だと思ってたらヤベェだろコレ。

 反董卓連合の盟主とかなり出したらいよいよ頌姫殿の身が危ねぇ。ただ証拠も無しに王允や袁紹に注意しろっつても誰も信用しねぇだろうし。


「如何したのさ盧繁?」

「ああ、いや。何でもありません弘農王殿下」

「で、悪いんだけどさ。もう無理……」

「……ああ、ご苦労様です。永安宮の方は?」


 首を横に振るってことはまぁそうか。流石に不憫でならねぇ。酷く窶れたなぁ。


「郭勝を殺しても陛下が説得しても理解して頂けませんか。状況が揃い過ぎていて百官も何かあれば皇后様の策謀と考える状況に成り果ててます。急に居なくなられた曹殿にでも密書を出したのだろうと」

「そろそろ朕、じゃないや。私の身も危ういかな? 嘘は無しで頼むよ議郎殿」

「有り体に申し上げて危険かと」

「…………そっか」

「策謀を巡らせていた事もそうですが宮女への当たりが強い為にそこから評判が落ちている様です。

 最近少々強引に良家子で集めた彼等彼女等は公卿から黄門侍郎の身内ですので御存知の事とは思いますが。

 その声を受けて少しでも風向きを変える為に義父の後将軍が郭勝の討滅の準備を始めています」

「そっかぁ……」


 政治的にも心情的にも殺さない理由が無くしちまった。つーか郭勝伝いに盧家に董賊族滅すべし的な詔勅を出すなよあのオバサン。俺の嫁の一人誰だと思ってんだマジで。


「母上の見張りを増やして一日だけ時が欲しいと伝えてくれないかい?」

「承りました。必ず」

「悪いね。手間をかけて。重ねて悪いけどその時は着いてきてくれるかい?」

「承りました」

「少し、一人にしてくれるかな」

「は」


 しかし丁原は宮中にみだりに人が入らねぇ様にするし、少なくとも現状じゃあ丁原は謀反を狙ってねぇのか?

 それに曹殿って董殿を暗殺するんじゃ無かったけ? いやコレ演義か? 止めようとする前に消えたから分からんけど。

 何とか反董卓連合だけは回避しねぇと公路さんは郭勝の残党狩りに南陽に向かったけど頌姫殿は残ったからな。


「ん?」


 ハァ……? 荀公達殿と居るのアレって侍中だったよな。こう言うの多過ぎんだよな。宮中の政争ってやつ? ダルゥ……。


「荀黄門侍郎殿」

「ああ、これは盧騎都尉殿」

「侍中、侍郎、黄門は宮中に入る事は認められていません。荀黄門侍郎殿、伺いますが貴方と其処の侍中殿は一体何用で此処に参られたのです?」


 ……あ? 背中に物音。二人……。


 何顒と鄭泰かよ。


 つーか何顒ビクつき過ぎだろ絶対なんかやってるよコレ。てかコイツじゃね? 反董卓連合ってか袁紹に情報送ってんの。袁紹の奔走の友だろコイツ。マジで奔走してんじゃねぇだろうな。


 ってか何皇后かと思ったけど河東に入ってきた白波賊もコイツ等じゃねーか?


「此度の事はいかんせん憚られる話とは言え兄君の御母堂の事、案じておられましたので助言の一つも必要かと此方の両名を」

「鄭尚書、いや此の場では議郎とお呼びしますが少々黙って頂きたい。

 敢えて議郎では無く何長史と呼びますが貴方は董司空を補佐すべき時に何をなさっておられる。此の白波賊が河東に攻め寄せた状況であり此の何太后が敵を引き入れた事が凡そ確定した現状で何故貴方が此の様な真似を?

 何長史は知恵者として先の閣下に重用された方でしょう。その貴方が王尚書令の提言を無視した理由を話し、此の若輩者を納得させて頂きたいですね」

「……良いだろう孩子(お子様)にも分かりやすくだな。長幼の序を仕方無しとは言え乱された陛下と弘農王殿下を慮っての事だ。また陛下にとり太后様は異母なれど母であり陛下の御名を汚さぬ策が必要なのだ」

「それ鄭議郎に任せれば良いでしょ。と言うか賊の居る今ならば尚の事に他の議郎に任せるべき仕事。それこそ通達と言う形で十二分な話です。

 まさかその程度の理由で禁中に入れるべきでない人間を引き入れた、と?」

「その程度だと? 貴様——っ」


 ……死なん程度にブン殴ったろかな。


「私は虎賁の方々と協力の上で陛下の意図を常に伺っております。この、現状で、俺に一言も無く、陛下も殿下も何も言っていませんが禁を犯した理由を伺いたい」

「あ、あぁ……あ」

「何大将軍閣下が亡くなられてから二月と経っていない。だと言うのに丁原の愚挙、袁太守の逃走、太后の嫌疑、曹殿の逃走、それで白波賊です何議郎。

 その混乱極まる情勢の最中です。その最中にて袁太守の奔走の友。その貴方が如何見られているかは私とて分かる。

 もう一度伺います。理由を教えて頂きたい。当然ですが納得できる物を」


 ……いや、てか此の人アレじゃん。頭いい人だろ? 何でこんなマジで怪しまれる様な真似を?


「私が呼んだのです」


 ……いや何人出てくんだよ。ってか荀光禄勲って俺の上司じゃねーか。なるとは聞いてたが此の爺さん戻ってきってたのかよ


「荀光禄勲」

「惑わして申し訳ない。何分、平原国へ向かう最中に命を受けた故に現状が分かりませんでした。亡き閣下の元で共に働いた御縁により彼等を頼ったのです」

「法令に付いては?」

「それは初耳の事。とは言え申し訳ない。彼等も伝えようとはしてくれたのでしょうが私が急かしたが為に禁令を破ってしまったのでしょう」

「なるほど」


 いや何太后云々言っちゃってんだろ。いやはぐらかされる、か? まぁいいわ。政争ってダルいな。


「鄭尚書は何太后の事を相談すると仰っていましたが?」

「それは慈明様に相談の上での事だったのですよ」

「それを何故に此処で? 貴方方は禁令を知っていたでしょう。王尚書令、いや此の場合は司徒か。袁太傅と相談の上で董司徒に申し上げておきましょう」

「そこまでの事かな孩子。余りにも大仰じゃないかな? 過ぎれば角が立つぞ」


 あんだァ……コイツゥ。


「寧ろ羽林として此の場で全員拘束しない事の方が問題が多くなるでしょう。恥を覚えては如何ですか何長史。かの荀子の末裔たる光禄勲殿に教えて頂けば如何ですか?」


 ったく面倒クセーなコイツ等。


「ってまぁンな感じでしたね。たぶん若輩者を侮ってくれてるんで幸いです。徒党を組んでるのは間違いないでしょう。まぁ俺の憶測ですけど」


 ああ、やっぱり。董殿、袁太傅、父上が揃ってガックリ頭垂れた。最近こんなんばっかだなぁ……。


「涼州に帰りてぇ……」

「儂ももう隠居したい……」

「……」


 董殿も袁太傅も目が死んでる。父上も故郷に帰りたそうだし。つーか二人の前じゃ言わねーけど実際歳だから仕事辞めたいって言ってるもんな。


「ハァ、じゃが宮中に子昌殿が居てくれて助かったわ。面倒なのを議郎や侍中にした結果とんでもない事になりおった。陛下に妙な事を吹き込まれていたかもしれん」

「全くだ。てか荀爽の野郎、面倒な真似を。荀子の末裔の処理なんざどうすりゃ良いか。つーか奴は清廉気取りの引きこもりだろ。何がどうなってやがる」

「動いておるのは何顒の奴じゃろうな。彼奴は行動力と声望だけはあるからの。じゃが処罰するには証拠を見つけねば」


 ……どうすっかな。


 いや袁紹が数ヶ月で立てるとは思ってないけど各地の反乱に備えて兵や物資はあるんだよな。此の際だから変な風に思われても王允と袁紹だけでも注意しとくか? 袁太傅がブっ倒れるかもしれねぇけど袁紹が立ったら殺されちまう。

 このままだと割と頌姫殿も参宿殿も危ねぇ、父上も盧毓も危ねぇ、董殿も袁太傅もだ。ガチで洒落にならん。


 ええいままよ……。


「その、申し上げ難いのですが王允と袁紹には注意した方が宜しいかと」


 うわスゲェ顔。てか、アレ? 董殿は訝しげだけど袁太傅は納得してね?


「太傅様……?」


 父上も同感か。やっぱ納得してるよな。え? 分かって放置してる? 訳ない、よな?


「正直申し上げて担ぎ上げられる可能性は高いと思っとる。じゃが止める術が無い。

 帰ってくる様に言っておるが橋瑁や王匡を説得すると申しておるわ。文面を見るに宮中での立場を得る話を反故にしたと思っておるのじゃろう。アレほどまでに身勝手な行いをして実質的に閣下を殺しておいてな。

 方々手を尽くして何とか話を付けようとしておるが梨の礫よ」


 袁太傅バチギレじゃねぇッスか。董殿も父上も気圧されとるやんけ。此の二人って黄巾の英雄やぞ。


「その、門生故吏は?」

「大半が紹の元へ走ったわ。楊殿くらいのものよ。残る気概があるのは」


 ……何で? え、皆んな分かってんの? マジ何で?


「分からぬのも無理は無い。賢者殿は御若いからのう。端的に歳じゃよ子昌殿。儂に尽くすより紹のやつに尽くした方が先があるでな」

「それにしても……いや、知らないのか。やらかしてるのを。

 それに董殿の非を打ち鳴らせば、成程……」

「流石じゃ。飲み込みが早い。紹の奴に付けば将来性があり己が良い立場を得られる可能性はより高まる。寧ろ儂は随分と権力の座に居座った。宦官とも繋がっていたしのう」

「いや袁太傅の立場で宦官と繋がらないのは無理でしょう」

「君の様に物分かりの良い者ばかりではない」


 ッスーーーーーーーーー。ッベェこれ。袁家の門生故吏の大半が敵の可能性があるのか。


「おいおいおい! 冗談じゃねぇぜ! それじゃあ如何しろってんだ!!」

「董司空、手は二つ考えておる。一つ目は先ずは地方に儂の門生故吏を付けるのじゃ。

 此の状況下であれば紹に味方する者をが勝手に提言をしてくれよう。それ等の疑わしきを儂と共に切れば長安に都を移しておる故に引き摺り込んで殺すは易い筈じゃ。その合間に司空殿は西方に避難すべきじゃろうがな。

 そして敵を撃滅ないしは勝手に内輪揉めを始めるのを待ち一つずつ虱潰しにしていく。連中は兵はあっても糧は碌に無かろうしな」

「楽だが、そりゃあ……」

「うむ、此の際は致し方ない。子昌殿もおる故に術の奴と協力して紹を討つのよ。儂の溜飲も下がるわ」

「いや俺の歳を考えてくれ。アンタ程じゃ何が俺は後継もいねぇ。その間に如何にかしろって話だろうがアンタも死んでる!」

「儂が死ぬのは斯様になるとは思わなんだが斯様になった責任でもある。

 司空殿は後継を決め身内を纏めて反撃の時を待ち司隷の政を担うに足る者を見つけるのじゃ。

 王、允……は賢者殿が怪しんでおるが子幹殿も居れば蔡伯喈殿や丁彦思が居る。彼等を頼れば司隷涼州と一郡は容易に治められよう」


 うわぁ……覚悟ガンギマリの政治家コエぇ。


「で、太傅殿よ。もう一つの手は?」

「先ず橋瑁、王匡、鮑信を討つ。先の閣下が集めさせた兵を不当に保有しておるからな。これをそうさな半年以内に」

「おう。まぁ難しいが無理じゃあねぇ。取り敢えず小僧が担ぎ上げられる前に担ぐ足をヘシ折るってこったな。大義名分もあらぁ」

「いや難しいぞこれは。時間との勝負じゃし内通者も居ろうよ。また向こうに付く者も出ておかしくない。今は内外に敵がおる」

「ん、ああ。そうだった。で、それが出来たとして次は?」

「儂が紹を死んだものとする。何かの軍勢に有り叛徒の助力をしていたとな。合間に紹を探し出し内密の内に、な」


 そう言うと袁太傅は自分の首に手刀を落とした。覚悟ガンギマリの政治家スゲェ。董殿は納得したみたいだな。


 マジで良かった……。


「まぁ見つからねぇで本人が出て来ても偽物で通すし、そもそも出て来たところで主力が居ないんじゃ話にならねぇか。

 その手で行こうじゃねぇか。アンタに楽隠居されちゃあコッチがが困る」

「有難いが最初の策の用意もしておく。せめてもう一つくらいは策が欲しかったがな。

 取り敢えずは城じゃろう。民草に築城を手伝わせれば一銖銭を配れる。一石二鳥よ」

「まぁそうだな。此の空気じゃ逆賊とでも言われて族滅されかねん。場所を見繕っておくか」

「であれば董殿。長安の西方に建てるのが良いと思う。如何だろうか」

「……ん? 如何言うこった先生」


 お、父上なんか思いついたか。


「皇甫将軍によって賊は散々に打ち破られ閻殿は病死した。纏まりがなくなり内で争い始めておりこれ以上の反乱は不可能だろう。であれば賊を許し内に引き込める」

「……良い案じゃ。じゃが何故城を?」

「城を建てて見せ心を折る。と、そう言う建前で城を建てれば反発も少ないかと。先に折れたのなら残党の監視とでも言えば良い」

「ああ、建前は重要じゃ」


 うわ董殿スゲェ嫌そう。


「……蟠りは存じているが皇甫将軍と朱将軍をそれぞれ車騎将軍と驃騎将軍に任じれば敵はございません」


 うわメチャクチャ嫌そう。


「悪いが俺は兵権を持たせて良いと思える程に連中を信用してねぇよ先生。皇甫嵩は何考えてるかわかんねぇし朱儁に関しちゃ蓋勲あたりも合わせて剛直すぎるぜ。つーか今それを言うって事は何かあったか?」

「御二人はその気無くとも周りが……」

「成程な。まぁそらあ後で話してくれ。王允の事が聞きてぇ」


 そう言うと董殿は俺に体を向けて来た。


「まぁ自分でも無理筋だとは思うんですが……」

丁宮・彦思

前に言ってた尚書の方の丁宮。蔡邕と一緒に王允にとつっかまった人に丁彦思ってのがいたから混ぜた。正直、丁宮元雄がクビになって尚書で良いかなって思ってたけどせっかく見つけたから出してもた。


郭勝

何皇后を宮中に入れた何氏と繋がりのあった宦官。蹇硯を殺すのに加担した記述が最後だけど大長秋って宦官のなる役職なんで一番生き残ってそうなのを取り敢えずで流用。南陽出身だしちょうど良かった。

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