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盧植のおそらくは居ただろう子供に転生?した系三国志の話  作者: 凡凡帆凡
だからァギチギチ過ぎんだってこの辺!! 二、三年掛けて起こる様な事が一年どころか半年で起きてんじゃねーか!! 編
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馬鹿野郎ーっ!! 叔父上 誰に言ってる!? ふざけるなーっ!!

「母上が何て言うかな。でも朕は別に皇帝に成りたくは無いね。冗談じゃ無いよ」


 盧繁が連れてきた皇帝は非常に迂遠な説明を受けた後に粥を啜ってから言った。淡々とした答えに袁隗も董卓も盧植も盧繁も驚き固まっている。


「だいたいさぁ父上とか絶対アレ毒殺でしょ。別に体調が良かったわけじゃ無いけど死ぬほどじゃなかったからね。それが西園八校尉何て造った途端アレだもん」


 袁隗はハッとして。


「では陛下は軽佻を装っていたのですな?」

「……」


 皇帝は沈黙を保ち陳留王は視線を逸らした。


「女の子は、カワイイよねぇ……。死ぬならせめてカワイイ子に囲まれて死にたいよ。父上みたいに宦官に囲まれて死ぬのは嫌さ」


 皇帝は諦念じみた表情で答える。陳留王は痛まし気だ。説明された状況もあった。


 其の状況というのも何進の死によって何氏は宦官と密接と見られている現状では何皇后と其の子の立場は非常に危ういものだ。加えて後漢王朝の問題点とも言える宦官と等しく外戚もまた問題の代物で、しかして宦官とは打って変わり誰もが成りたがり求める立場なのである。故に外戚の立場を得られる血筋もある劉協の存在は政権の過渡期に於いて垂涎の馳走で何太后の居る皇帝は邪魔なのだ。


 早い話が現状で誰も皇帝劉辯と何皇后の存命を望んでいない。寧ろ其の逆だった。


「陛下、殿下。御無礼を承知で申し上げます」


 そう言った袁隗が立ち上がり二人の前で跪いて見せた。更に着物どころか額が汚れるも構わずに深々と頭を下げる稽首。


「陛下。陛下と殿下を御護する術、これは既に一つしか御座いません。それは——」

「朕の退位。いや廃位と協の婚姻かなぁ」


 袁隗が言う前に皇帝は平然と言った。粥を平らげてから空になった腕を見下ろす。僅かな沈黙を経てから続けて。


「太傅殿、頭を上げてくれ。

 いや伯父上が言ってたけど笑えるよねぇ。至上にして天の意志を受けるこの立場の陳腐さったら無いよ。何より父上がよく見せてくれたさ。

 まぁ父に限らずだけどね」


 飄々と言うが誰もが理解した。皇帝が己の父を見て己の身を知ったその意味を。諦念に塗れた内心を。


「まぁ朕が狙われず協が不利益を被らないっていう手があるなら大賛成さ」


 董卓が溜息を漏らす。


「じゃあ俺が廃位を提案しよう。下の不信感がヒデェからな。陛下には御配慮頂きたいものだ」

「……やっぱり不味かった?」

「まぁ大概が飯の為に戦ってるが、将兵ってのは自分を雇ってる輩、自分が戦ってる理由ってのを事の他気にするモンだ。

 この状況で鼻の下ぁ伸ばす様な輩を見ちゃあ阿呆だと呆れるか豪胆だと尊敬するか。それだけなら良いが腰が引けてりゃあ何の為に戦ってたのか分からねぇですよ」


 皇帝はショボンとした。


「……私は、反対だ」


 絞り出す様な声。それは盧植だった。だが声のみで既にと言った代物だが表情を見れば悩み抜いた末の言葉とわかる。だから皆が言葉を待った。


「陛下には落ち度がない。落ち度を生じさせる程の期間も無かった。確かに軽佻な様を見せていらっしゃるが廃位までの問題では御座いません。当然で御座いますが反対する者も多く出る。例え陛下を担ぎ上げる意図がなくともです」

「確かに我らを貶めたい者でなくとも反対しような。また違わぬ道理でもあり陛下の年齢を思えば尚の事」


 袁隗は己の髭を撫でて一考。


「逆にそれを利用するか。前将軍殿が廃位を提案し子幹殿が反対する。それも喧嘩別れの様にじゃ。その上で儂が廃位へ持っていこう」


 董卓が頷いた事で盧植が覚悟を決めた。本懐は儒家で学者であるが息子の事を思えばそうも言っていられない。泥を被るのは息子の義祖父だ。


「となれば私が釣り餌となって忠臣と奸臣の選別をするのですな」

「その通りじゃ子幹殿。前将軍殿には辛い役目を負って貰うがのう。すまぬな」

「ああ、適材適所だ。都の連中がアンタらみたいなのじゃ無いのは知ってる」


 袁隗は少し沈黙した。仕方ないと言えばその通りだが涼州勢の印象が余りにも宜しくないのは確かだ。限度という物は有る。


「銭の改鋳に取り掛かっておるが、それを前将軍の案とするかのう。銅臭の払底に役立つとは思うが」

「農を本懐とする。ですか?」

「うむ。正にそれよ。合わせ銅を減らし銭の枚数を増やそうとな。如何じゃろうか先生。儒学者から見て」

「大衆受けは宜しいでしょうが貨殖列伝も御座いますぞ」


 盧植の発する一応反対くらいのニュアンスに袁隗は考える。賎商思想と銅臭と呼ばれる賄賂政治は非常に外聞が悪い。その払底と対応しようという意志を見せるのは悪くないのでは無いかと。


「文帝の故事に習うか」

「お待ちを」


 しかし切迫した声を上げる者がいた。それは盧繁で有る。


「ただでさえ物の価値が上がっている状況で貨幣の価値が落ちるのは拙いでしょう。

 今既に市井では銭数十枚で取引を行って居るのに更に銭の価値が下がれば最早それは貫での取引となります。

 そもそも五銖と剪輪や艇環が同等と言われて納得出来る者は居ないでしょう」

「うぅむ、だが騒乱が酷くてな。銭にする為の銅や錫が届かぬ。故に銭が足らんのは確かなのだ」

「では袁家の倉に有る五銖銭の半分を剪輪と艇環に換えられますか?」


 袁隗は閉口した。自分なら激怒する。当然で有る。


「ですので同等とするのでは無く私鋳では無く民の救済の為の五銖の半分の価値、半銖銭とでも喧伝して発行致すべきかと。

 寧ろ銅銭の数倍数百倍の価値の銭として金貨や銀貨の発行を促してみれば如何でしょう。また農業を根幹とすると言うのなら屯田校尉の増員こそ肝要かつ穏当と心得ます。または気は進みませんが銭が足らぬなら最悪は陵墓から借り受けるという最終手段も。

 せめて宦官連中の財貨を始めそれで如何にかなるか様子を見てからの方が良いかと愚考します」


 誰もが絶句した。

 若さ故だろうが盧植の息子を以てして副葬品を漁ると迄言ったのだ。また確かにこの中では市井に最も詳しいのは目の前の若人。その盧繁をして其処までの危機感を覚えさせる現状。

 気が遠くなる。


「其処まで言うのなら一先ずは様子見とするかのう。であれば他に手は無いじゃろうか」

「董殿の名で非主流派を集めてみては? 幸い太傅様も居れば父上も居るのです。現状で人は幾ら居ても足りませんし」


 袁隗は反論をしたのだから代案はあるのだろうと思い問うたが反論の割には無難で真っ当な意見が返ってきた。

 要は今まで非主流派に追いやられていた者達を己らの派閥として取り込めと言う常套手段で有る。銭の流通で市井の指示を得て事実不当に追いやられた能力ある者達を取り込み己らの仲間とする。無難で有るが現状で妙な真似をする必要はない。

 実際に董卓との兼ね合いを鑑みて折衝難儀するだろう皇甫嵩なども盧植と盧繁のおかげで政権内に入れれるのだ。


「そうするか。子幹殿が羨ましいのう」


 袁隗は心底を吐露した。盧植は拱手し、それに盧繁が続く。発するのは盧植で。


「感謝いたします」

「事実じゃよ。さて陛下、殿下。天下の相手に関して一人推挙したい者が」


 皇帝と弟の両名が強く反応した。何せ現状で劉協の相手は非常に重要だ。また新たな一族というのも有る。

 それも娘の親は宦官と無関係で時流を見て助言ができる上で、外戚と言う立場にありながら自制のできる頭が必要なのだから。

 それこそ海千山千を超えて此の場に居る袁隗の進める人物。そんな相手には十二分に興味がある。


「不其候の息女を、と考えております」

「伏完か。朕は良いと思うが」


 皆が劉協を見るが如何と言う事もないのか平静なままで。


「私は構いません。それより兄上は宜しいのですか? 帝位を——」


 弟の言葉を皇帝は掌を突き出して止めた。


「寧ろだ。こんな物を押し付ける事、朕は申し訳ないと思っているよ。すまないな協、手間をかける」

「……兄上」


 そうして有る程度の体制を話し合った一行は都洛陽へと戻った。


 〓袁隗〓


 いやはや我ながら老いたな。だが休んでも居れんわ。寧ろここからが肝要よ。

 先ずは改元と大赦として名目は陛下と殿下の無事を寿いでで良かろう。そろそろ樊陵と許相に宦官の処理は済んだ頃かと思うが。さて戦力多さで言えば大将軍殿の兵と何苗に丁原だが。

 いや儂は何より皇后を抑えねばならんな。早く参集して貰いたいものよ。広間が寒々しいわ。


「叔父上。お待たせ致しました。御無事で何よりです」

「おお基よ。お前も無事であったか。心底安堵した」

「陛下と殿下も御無事の様で」

「ああ、子昌殿と子幹殿が保護しておったわ。直ぐに前将軍殿も参ったしな。それで皆は無事か」

「はい。袁一族は無事で御座います。都は酷い荒れ様ですが」

「はぁ……だろうな」

「嘆かわしい事に貴人の中にも混乱に乗じて金帛財産を集めてる者がおります」


 ……阿呆供が。


「そう言った輩は処分するとしよう。寧ろ丁度良いわ。分かっとる者だけで良い。すまんが書き出しておいてくれるか」

「承知致しました」

「それと此れからの動きを説明しておこう」

「拝聴いたします」

「では先ず——」


 全く基は良き文官になるわ。


「——と言う想定じゃ。予定通りとはいかんだろうがな。覚えておいてくれ」

「驚きましたが理に適っております。承りました叔父上」

「うむ、うむ」


 だいたい説明し終えたか。しかし紹と術は未だかの。ああ、前将軍殿が先に参られたわ。


「袁太傅、遅くなったなぁ」

「いやいや、待っておらんよ。それより前将軍殿、首尾は如何じゃ?」

「大将軍府の兵と何苗の兵は大半がコッチに付いた。大将軍府の方は何苗の奴を仇だと判断した呉匡の仇討ちに弟が手を貸してな。下の連中は比較的すんなり取り込めたんだが、何顒が病気だっつって断りやがった」


 今か。


「……まぁ二、三度頼めば断るまいが、な」

「ああ、この状況で断りやがったんだ。

 テメェを高く売ろうってんだか狙いがあるんだか。まぁあの程度の輩に興味も湧きゃしねぇが俺の事が気に入らねぇってのは確かだろうよ。少なくともナメてはいやがる。

 人品で位を得た輩の割にさもしいったらねぇな何顒ってなぁ」

「明言は避けるが其方は儂が対応しよう。大将軍の兵も何苗の兵も有る程度は分散させねばなるまい? 特に後者はな」

「ああ、それなんだがな? 車騎将軍府の兵の方は応仲瑗ってのが説得してくれたんで大将軍の兵よりも上手くコッチに合流したぜ。まぁ分散はさせるがな」

「それは僥倖じゃ。応仲瑗と言えば中々の軍才と文才がある男じゃったな。ふむ」


 それにしても何顒か。であれば大将軍府の参謀連中は要監視じゃな全く。術の奴にでもやらせるか?


 紹には悪いが手は抜けん。


「ところで前将軍殿。乱痴気騒ぎをしとる阿呆供が居る。車裂きにしようと思うが」

「見せしめか。良いんじゃねぇか? やっとくぜ」

「すまんの」

「気にすんな。掃除は大事だからな。序でに四肢捥ぐくらい何てこたぁねぇ。李傕!!」

「はは。此処に」

「悪いが頼むわ」

「直ちに」


 何と汚れ仕事を平然と行いに行くか。


「助かるわい。おお子幹殿、子昌殿」


 礼一つとっても様になるのう此の親子は。


「お待たせ致しました。朱城門校尉は一先ず説得に応じてくださるとの事です。それと諸々の方々に伝令も」


 うむ。子幹殿が呼び掛ければ断られる事も無かろう。良し。


 ん?


「如何なさったかな子昌殿」

「少々遠いですが皆様がいらっしゃる様で」


 むぅ……?


 …………あ、おーん。確かに薄らじゃが喧騒が聞こえるのう。


 耳が遠くなったのう……。


「袁太傅、息子の耳は呆れる程良いので気になさらず」

「先生、俺も聞こえなかったぞ。どんだけ聞こえるんだよ子昌殿」

「野山で獣に気付くくらいには」


 ……えぇ。程度がわからん。けど怖。


「失礼するじゃないかい!!」


 おお、続々と来たな。

 大将軍殿の腹心じゃった呉子卿と張圭笏だったか。それと大将軍府の東曹属の、そう確か伍徳瑜? ともかく前将軍の言う通りに少なくとも兵は此方に着いた。

 一先ず一安心よ。


「叔父上。お待たせ致しました」

「おお術。御苦労だった。ようやったな」

「叔父上も陛下と殿下を御救いしたとか」

「いや子昌殿が見つけ子幹殿が駆けつけ前将軍殿が御救いしたのよ。儂は前将軍殿のおかげで御許に随行出来たに過ぎん」

「それは、成程。前将軍殿、大義で御座いましたな。叔父上を護って頂き感謝いたします」

「ああ、此方こそお蔭様でだ。太傅殿のおかげで陛下や殿下に無礼を働かず済んだ。何せ戦しか出来ないんでな」


 さて後は紹の奴は何処か。


「叔父上、如何しましたか?」

「いや紹の奴がな」


 全く術め。あの様な顔を……。


「お待たせ致しました!!」

「おお! 紹!」

「叔父上、遅くなりましたが宦官を数千程討ち取りました」

「うむ! 流石だ。御苦労だったな」

「いえ。苦労など。それよりまさか宦官連中の親類縁者を捕らえただけで此の有様とは。閣下には申し訳ない事をしました」


 ………………は?


「い、如何致しました叔父上」

「宦官の親類縁者を捕らえさせたのはオマエか?」

「は、はは。閣下より策謀を任せられておりましたので一挙に断罪すべきと。閣下には留めらられておりましたが機を逃すべきではないと心得た次第で……叔父上?」

「なぜ事前に閣下へ通達しなかった」

「閣下は慢心しておられた。連中は幾度も王朝に根を張った雑草だと言うのに、です。それも事が進み完遂する目前で。

 事を起こして立ち止まれば私達の身も危うく閣下の身もまた危うい。私と致しましては加え漢朝の諸悪を取り除く機会を重要と考えたので御座います」

「そう、か」


 此奴の、独断か? いや、あの表情は何顒も一枚噛んでおるな。逢紀と荀攸は驚いておるが、さて演技か本気か見当がつかん。

 まぁ何方でも良いわ。此の有様を近くに居ながら止められなかった程度の者達だ。粗雑には扱わんがそれだけじゃ。

 人事について少し考えを改めねばならんな。


「そんな事よりも叔父上。閣下を鎮魂し陛下と皇后様を立て我等が補佐せねば。

 幸い此処には声望高き盧先生と精強な仲穎殿がいらっしゃる。御両名に補佐して頂き叔父上は太傅ですから従兄殿か私を大将軍として内外に威徳を示せば此の兵乱も鎮火致しましょう。

 今こそ四世三公の重積を頂いたい袁家の者として漢朝に報恩を尽くすべきです」


 今この状況で大将軍の立場を担う者に己を挙げるか。であれば閣下に尽くしていたが故に安堵していたが此奴は己が立たねば気が済まんのだな。汝南袁家が外戚にならなかった意味を理解しておらなんだか。


 いや、それより何皇后、か。


「術……」

「何でしょうか叔父上」

「お前は此の後に後将軍となってくれ」

「……承りました」


 紹の戯けめ。何を期待するか。阿呆が。


「儂の後はお前が継ぐのだ」

「承りました」

「基よ」

「は」

「安国亭候はお前が継いでいる。汝南袁家はお前が差配するのだ。相談していた形と少々変わるが構わんかな前将軍殿」

「ああ、良いぜ」

「紹の奴は一先ず増員した侍中にでも入れておいて貰いたい。これでは黄門侍郎は拙かろうからな」

「それも分かった。司令校尉から転任だな。軍権も取り上げるか?」


 気を遣ってくれておるなぁ……。


「まぁ校尉辺りで頼みたいが……」

「あんたが言うんだ。断らねぇよ」

「感謝するわい」


 此処が落とし所かの。


「お、お待ちを?!」

「何じゃ紹」

「な、何故ですか」

「……はて、何故とは?」

「私が侍中ですか?!」

「うむ。陛下を御支えせよ」

「そ、そんな……」


 四十を超えて視野狭窄よな。流石に露骨には言えんか。一先ず座らせる序でで良いな。


「紹、周りを見よ。お前を見る目をだ。挽回には努力が要るぞ」


 今更気付いたか。震えおって情けない。甘かったかのう。


「天下は乱れておるが故に力こそ肝要。儂は董卓殿に軍権を任せたいと思う。力を以て乱を平定し我等が支える形でない」


 騒めくのう。まぁ構わん。此の意図を汲めば良し、汲めぬならそれもまた良し。さて後は頼むか。前将軍殿にな。


「今回の事を鑑みりゃあ俺は何皇后に皇后位に居て貰っちゃ困る。何せ閣下の邪魔をしたんだからな。アンタらもそう思うだろ?」


 全くもってその通りよな。頷きこそせぬが皆同じ思いじゃろう。一部を除いて。


「っ……な?!」


 紹め。矢張りそれも気付いて無かったか。はぁ。


「何だったらだ。ああ、閣下の元で知恵を絞ったって司令校尉殿に聞くが恐れ多くも陛下の進退について聞きたい。話し難い事は承知でな」

「……何だろうか」


 おい前将軍殿の手助けじゃぞ。何を不満そうにし——ああ、いやもうダメじゃな。誰も紹の奴を信用しとらん。


 前将軍殿が溜息を。儂も、良いわ。吐こう。


 はぁ……。


「天下の主ってのは唯でさえ賢明じゃねぇとならねぇ。

 重ねて言い難いが何せ今は先帝を思い起こす度に怒りと怨みを覚える様な連中さえいる有様だからな。その点で言やあ董候なら幾分マシだろ。

 だからまぁ董候に立って貰おうと思うが、どうよ?」


 頼む気付け紹、今なら未だ何とかなる。同調してくれ。

 何皇后を降ろし陛下に耐えて頂けば全てとは言わんが何とかなるのだ。と言うかお前は既に何皇后一派との繋がりさえも疑われているのだぞ。それが分からぬ様な者ではあるまいよ。全く事前に話し合いができていればこんな事には……っ!

 と言うか事前に状況を伝えるから、いの一番に来る様伝えておいたのに何故こいつは直ぐに来なかった!! それどころか此処に集まったのが最も遅かったではないか!!


 ……あ、本当に拙い。


「こ、今上陛下は年は御若いが天下に良からぬ事があったとは未だ聞きません。もし公が礼に反し情に任せて嫡子を廃し庶子を立てれば恐らく黙っておれぬ者も出るかと」


 ……おわた。


「礼に反し情に任せだと?! 廃嫡云々なんざ天子の御意志でもなけりゃ話題に出す訳がねぇだろうが!! 陛下は天意を此の手中に預けられてる!! それを……!!!」


 いかん前将軍殿が。いや、もう無理か。何故早く来なかった紹。


「小僧よくもホザいたなぁッ!! 俺の手中に在る天下の事!! それに添いたいと俺だって思ってんだぞ!! だいたい誰が敢えて逆らおうってんだ!!」

「此れは、此れは国家の大事です。願わくば叔父上と外に出て話たいと思います」


 儂に飛び火した?! いやいやいや!! 違うぞ前将軍殿!! いや前将軍どころか皆が疑念の目を向けておる!! 


 ふざけるなよ紹!! 誰も彼もが袁家に疑いの目を向けておる!! お前のせいだぞ!!


「紹! 陛下の御意じゃぞ!! 何を話すと言うのか痴れ者が!!!」


 皆は、わ、分かってくれたか? 


 驚いた。いや、腰を抜かすかと思った……。と言うか首を左右に振りすぎて痛い。歳じゃと言うのに……。


 ああ、伺う様な眼差し。気にせず続けてくれ前将軍殿。儂は疲れた。


「劉氏の種いとして残る気も無いとの事だ」

「……天下の力が有る者が如何して董候(劉協)だけでしょうか」

「他の宗室を立てると言うのならそれこそ逆賊だろう。陛下の意図を解せんのなら虱潰しに探し出して族滅だ」


 拙いのう。袁家が疑われたぞコレは。ああ。


「紹、控えておれ」

「承知いたしました……」


 ああ困った。

伏完・壁而(?〜209)

字は適当。なんかメッチャ凄い儒家の子孫で桓帝の長女陽安公主を娶った。字はアレだけど完見たら壁しか出て来なかったんで完璧の故事の完壁而帰から。


伏寿・賀姫(?〜215)

字は適当献帝劉協の妻。なんか縁起良さそうな寿賀に姫。……寿賀って長生きって意味だった。


劉華・伯盈(?〜?)

字一字適当。桓帝の長女陽安公主で、陽安公主の名前は華っぽい。けど伏皇后記だと最後に母親の劉盈も涿郡に流罪とか書いてる。劉氏二人も娶るのかよくわからんから面倒なので混ぜた。

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