飯くらい楽しく食いたい
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書けたんで全七話、13日まで一日一話で投稿します。
暇潰しにでも見てってくれたら幸いです。
注意)前に王允を尚書令って書きました。しかしもうちょい後でした。一応、サッと直したんですが見落としがあると思います。もし見かけたら御一報頂くか機関◯トーマスの事故◯起こるさを口ずさんでくれれば幸いです。
山麓の各所で大きな鼎が轟轟と湧き立っていた。墓場の近くだが多くの人々が鼎を中心に円となり大規模な宴会でも起きてるような有様である。そんな中で離れた場所に四人だけが座る座があった。
「まぁ政ぁ袁太傅と先生に任せるわ。何たってコッチは軍人だ。手ぇ出せるこっちゃねぇ」
豪快に粥を飲み干した董卓が言った。匙を置いた袁隗が頷く。
「全く儂も政はともかく戦は如何しようも無いのう。問題は後継じゃが盧尚書が居たのは幸いじゃった。それに尚書殿なら戦も期待出来ようて。儂と前将軍殿との間に立つに此れほど相応しい方もおるまい。一先ず劉弘を免職させ前将軍殿には司空となって頂こうか」
「司空、か。土木作業と治水だったか……?」
「案じられるな前将軍。当然ながら軍権はそのままじゃ。手間じゃが段階を踏まねばな」
「そう言うもんか。成る程なぁ」
「まぁ一年も経たずに大尉に成って頂く」
「大尉?!」
「当然よ。前将軍は軍事力の掌握もして貰わねばならん。儂も手助けするが大将軍殿の兵は必ず吸収せねば混乱の元じゃ。問題は丁執金吾と何苗車騎将軍に張衛尉じゃろう」
「車騎? ああ、なるほど如何動くか分からねぇな。何せ何氏唯一の親族だ。てっきりアレを担ぐもんだと」
「うむ。出来ればそうしたかったが宦官に付いては皇后も含めてなぁ。誰も納得せぬよ」
「そりゃぁ、まぁ、うん」
「そしてそれが済めば相国じゃな」
「相国?! 政は無理だっつたぜ太傅様よ。俺ぁ……」
「ああ、いや。案ずるな前将軍殿、対外的なものよ。見かけ儂と並んで貰うだけの事。これは子幹殿もじゃ」
絶句した董卓に続き盧植も絶句した。
「結論から言えば最終的には太保になって貰い参録尚書事として儂を手伝って頂く」
参録尚書事とは太傅以外の者が録尚書事に就任すると呼ばれる物だ。録尚書事は早い話が宰相である。政治的に言えば董卓が首相に立ち袁隗と盧植が宰相として実務を担う形。
「子幹殿は軍勢に関して如何程集められるじゃろうか。幽州の騎兵や黄巾の頃の兵じゃ」
「……宗護烏桓校尉が居られれば多少は集められますが」
董卓が痛ましそうな顔をして。
「アイツはいい奴だったな」
盧植が深く頷き袁隗もは気不味げに。
「亡くなって居られたか。涼州の戦は激戦と聞いた」
盧植は首を左右に振る。
「いえ、腰痛が酷くて帰郷いたしました」
袁隗は憮然とした。しかし直ぐに咳払いをして表情を変える。少し考えてから。
「まぁ人と人じゃから前将軍とソリの合わん者も居ろう。大将軍殿が募兵に向かわせたのもおるし、その辺りは前将軍殿と合議して頂こう。最終的には子幹殿は衛将軍かの」
袁隗はそう言ってから少々伺うように。
「それと後将軍を紹の奴に継がせたいが構わんかのう?」
「後継に関しちゃこの有様じゃ危ねぇから寧ろ最低限の軍権は握っててもらったほうが助からぁ」
「異存御座いません」
「では前将軍殿が相国として立ち、儂が太傅で子幹殿が太保として実務を回す。軍権は前将軍殿と子幹殿で実務を回して頂く。一先ずはとは言え凡そ此の形が最良じゃろうな」
袁隗は大きく溜息を漏らす。それは騒乱を治める道筋を提示できた安堵だった。懸念は多いが何より此の三人は一蓮托生に出来たのである。後漢でも上位の軍事力と政治力と求心力が揃った。これは政権運営の安定に直結する。
〓盧繁〓
いやぁ大変だなぁマジで。新政権の中心とか勘弁だわ。まぁ5年は俺にゃ関係ねぇけど。
「問題はこっちじゃな」
「大丈夫なのか先生?」
「大丈夫ではないです」
あー粥ウマウマ。ちょっとだけど魚肉も入ってるし。出汁がいいわ出汁が。
……?
何だ?
めっちゃ見てきとる。
「どしたんです? 御三方」
「……ハァー」
えぇ……。父上すげぇ溜息。マジ何、なんかした俺?
「お前は漢王朝の血統を守ったのだ。閔殿も中郎将くらいには特進させて当然。そもそも言ってしまえば私が太保になる理由は繁だぞ。その意味はわかるだろう」
……あー・・・。ね。ッスーーーー。偶々だけどそうね。
要は俺アレか。功績立て過ぎて王允ポジにされる可能性があんだな。皇帝と王を救った価値を神輿に俺だけは忠臣なテンションで。
王允がどんな功績があったんか知らんけど別に董殿を殺す気ねぇし俺は乗らん。けどそら此の人達が組んで主流派に成れなかった奴や権力欲のエグい連中は俺って駒を放っておかねぇわな。俺を使って父上を剥がせば儒学的な意味合いで正当性を穢せるし皇甫将軍や朱将軍も剥がせる。
まぁ俺まだ十五だし操り易そうだもんなぁ鬱陶しい……。
メチャクチャ面倒いぃ……。いや待てワンチャン。
「えーと。まぁ俺が一番狙われ易いって事ですよね?」
「その通りだ。私の息子で前将軍殿の孫娘と太傅様の姪孫を得ている。御両名の何方かを邪魔に思う程度の者さえも垂涎の獲物と言えるだろう。お前に近付く者が万と出てくる。それに備えねばならん」
「父上、俺幽州に帰って良いですかね。少なくとも元服まで」
「父としてはそうさせてやりたい」
「えーと……」
「宦官はもう用いれまい。故に殿上の仕事を回す侍中や黄門侍郎を増やす必要がある。公卿から黄門侍郎まで各家に一人の郎を任じ宦官の職を補わせねばならん」
イヤ、オレ、15。成人、20。
「この際、歳はとやかく言えん。
任子は知っているだろう。宣成候霍子孟や関内候馮君卿から昨今の事で言えば益州牧も成人前に官職を受けている。現状ではお前は代えがきかん程に有効だ。
ああ、此れは年齢に対する物だぞ。私の立場は抜きにしてだ。そんな物を考慮出来る状況ではない。
まぁ言わずとも察して居る様だが」
……クソ!! 父上二千石も無いってのを封じられた!! チクショオ!!
「繁、すまんがお前は強い。現状で陛下と殿下の側に起き如何なる賊が現れたとて討ち果たせるのはお前しか居らんのだ。どうか分かってくれ」
「……っハァ〜〜。分かりました父上。どうか頭を上げてください。その様な事をされては否とは言えません。分かりました」
「改めてすまんな。加えて感謝するぞ繁。陛下は、その……軽佻過ぎるからな」
「……その、アレ皇帝って本気ですか」
殿下が止めてるけどメチャクチャ女の子に話しかけまくっとる……。いや皇帝だっつっても限度があんだろアレ。と言うか玉の輿レベルMAXの皇帝なのに断られてんの何。
見た目は良いだろ。
見た目は。
「………………無礼だぞ繁」
「いや思いっきり視線逸らさないでくださいよ父上。今の状況で陛下が変な女に誑かされたら大事ですよ。そうで無くとも何太后の動きが分かりませんし」
だってなぁ……。
「ねね! 朕皇帝だよ?! どお? 良ければ妾にならない? 見た目も良いと思うんだけど」
「兄上!!」
……やばいって。
「陛下、臣劉弘。言上いたします。我が故郷の南陽に居る絶世の美姫を女官としてお雇い頂きたく。我が故郷には漢朝の宮中に相応き者共がおります。
宦官が居なくなったのは素晴らしい事ですが宮中の仕事を担える者が居りますまい?」
「え……?」
「劉弘殿。兄上は身を休めている。あの様な騒乱があったのです。政に関わる事は控えて頂けませんか。ですよね陛下」
「あ、お。おお。うん。そうだな協。
今は下がられよ。朕は忙しい。それに宮中の事に関しては母上にも意見を聞かねばならんのだ。
忠勤は覚えておくとしよう」
「……は。失礼致しました」
はい、超アウト。
「御三方、聞こえましたか?」
三人共お互いの顔を見合うって事は聞こえてねぇな。まぁ距離があったから当然だわな。劉弘が近付いた事に警戒はしてたが。
「劉司徒が早速宮中に女送り込もうとしてましたよ。陛下が驚いて殿下が止めましたが手を打たざるを得ませんね」
「繁!! 口を控えろ!!」
「いや先生、子昌殿に俺は賛成だ」
「前将軍殿?!」
「あの野郎ぉ白ちゃんに——じゃねぇ。どう言う意図かは知らねぇが軟派な真似を平然としやがる。現状じゃあ危険だろう」
「……うむ。否定が出来んが」
「子幹殿、儂も賛成じゃ。お分かりじゃろうが大将軍殿が討たれた今となっては何家と宦官の繋がりは色濃く見え過ぎる。じゃが何家を下ろすに群臣も民草も納得いくまいよ」
三人共、まぁ父上は一応反対で太傅様は消極的賛成、董殿は超賛成って感じか。
「じゃあ俺が陛下と殿下を連れて来ますよ。御二人の話を伺わ無いと面倒でしょ」




