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兵士と民兵の差

 広宗県の版築の城壁に黄色い兵が並ぶ。彼らの眼下には城門の四方には馬防柵と堀で作られた強固な陣営があった。その陣営の前では複数の雲梯。


 それを守る様に兵が集められており城門が開かれ雲梯の破壊を目指して黄色い濁流が解放された。


「良いかテメェらァッ!! この鮑飛泉に寸分違わず従え!! あんなもん弩と弓で削って残りを斬り殺しゃ仕舞いだ!!」


 その濁流から少し離れた場所で騎馬と戦車を含めた部隊を率いる男が声を張った。


「俺に続けェッ!!」


 そう言うと城壁に沿う様に騎馬が進む。当然だが城壁の上から矢が飛んできて被害が出るが先頭を進む男は見もしない。城壁から出た黄色い軍勢の背後に回って突破した。


「好きなだけ矢を射かけろ!!」


 城壁からの攻撃は無視して敵の背後から矢を浴びせる。前面の歩兵と後方に回った弓騎兵の挟み討ちだ。即座に黄色い軍勢は瓦解してしまう。


「さぁ追撃だ!!!」


 そして屯騎校尉、騎兵指揮官の本領、本分。


 逃げ散る敵を追い詰めて追い詰めて殺す。


 その途端に一騎の騎馬が全てを置いて出る。


 大きな馬に小さな身を乗せた騎馬は駿足。


 一直線に進み斧で兵を薙ぎ倒しながら猛進。


 唯々獲物以外の悉くを唯の肉塊に変えて。


 黄色い軍勢の中で数少ない鉄鎧を纏った男。


「何者だガキィッ!!!」


 応えることもなく大斧が馬と将の首を断つ。


 驚愕の眼に続いて落ちる馬の首と剣の切先。


「張梁は何処だああああああああああ!!」


 大きな騎馬の上の小さな男が怒号を挙げた。


「ヒイイイイイイイイイイイイイイイイイ」

「馬将軍が討たれたあ!!」

「逃げろ!! 退け!!」

「待て押すな!! ヤメ!」

「助けてくれ!! もう言う嫌だ!! 家」


 黄色い軍勢は壊乱を通り越し錯乱を始める。


 官軍に討たれる者、仲間に踏み潰される者。


 唯我慢の限界を超え一線を超えた民が死ぬ。


「気ぃ悪いわ」


 騎馬や下馬した兵が敵を追って己を追い越していく中で敵将を討った小さな子供が吐き捨てた。


 〓盧繁〓


「おう小僧。オメェ名前は?」


 なんか無駄に偉そうな。いや、ソコソコ偉いんだけど何つーか。妙に信用ならない感じのヤツが上機嫌に聞いてくる。俺が手に持つ首を見ながらだ。ハイエナっぽい。


 いや、実際ハイエナってハイエナしないどころかハイエナされる側だけど。


 ……ややこしいな。


「幽州涿郡涿県の盧家の出。繁、字を子昌と申します」

「ああ? 涿県の盧家。盧家? ……盧北中郎将先生の御一族か何かで?」


 スゲェな三段活用ならなぬ三段認証って感じだ。オモロ。


「父上ですね。今の北中郎将は」

「何で此処に?!」

「兄上の仇をブチ殺しに来たのですが父上に帰れと言われたもので」


 わぁ。宇宙猫。可愛くねーぞハイエナ。


「そそ、それでは子昌殿の事は父君にお任せしよう」


 スゲェ焦りながら言うやん。汗エグ。


「では取り敢えず塩を頂けますか。コレを詰めて父上に参陣を認めて頂きたいので」

「分かった。スグに用意させよう! オイ早く持って来い!!」


 ……コイツ何かやらかしてね?


 まぁ良いわ。


 さて、父上に怒られるとするか。


「馬鹿者が!!!」


 うん。メチャクチャ怒ってる。そりゃね。


「申し訳ございません父上」

「お前が強いのは知っている!! だが今回の事はは余りにも無茶だ!! 戦は遊びでは無いのだぞ!!」

「全くもってその通りです。ですが其れを圧して兄上の仇討ちをしたい。間違っているのは私です。ですが、どうか」

「分かっていてソレか!!!」

「返す言葉も御座いません」

「……〜〜ッ!!!!!」


 100コッチが悪いわ。


「ろ、盧北中郎将殿。此処は皆もいます。落ち着いてくだされ」


 ゴツいオッサンが言えば父上は怒りに震える身体をどうにか止め小さく息を吸い長く吐いて。


「……申し訳ない。宗護烏桓校尉殿。皆もだ」

「いえ。御気持ちは分かります。しかし御子息が手柄を立てたのも事実。しかもあれは馬元義の一族に御座いましょう。あの首に免じてせめて陣中に居させて差し上げては如何か。目を離すよりは其方の方がマシかと」

「そうだな。繁、お前は陣中で控えておけ。外に出る事は罷りならん」


 クッソ駄目か。流れによっちゃあ兵士として立てると思ったがしゃーねぇ。張梁ぶち殺したかったんだがな。


「承りました」

鮑鴻・飛泉

字は適当。屯騎校尉。後に董卓と共に涼州へ行く。後の西園八校尉。横領かなんかで獄死する。

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