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盧植のおそらくは居ただろう子供に転生?した系三国志の話  作者: 凡凡帆凡
年齢的に何もさせれんし時代的に出さんといけん人多過ぎて手に余る編
18/33

西園八校尉

「全く久しいのう!! 皇甫将軍殿!! そして盧尚書殿も来てくださり忝い!!」


 洛陽の屋敷にてドンと軍礼をする男は黄巾の英雄だった。

 朱儁、字を公偉。荊州南陽の黄巾を撃滅した実直豪胆にして文武に優れた男である。名族の皇甫家や学者の盧家とは違い叩き上げの将軍だった。今は黒山賊の再造反に対応する為に河内へ向かう任を受けている。

 だがその前に三人で話合いたいと持ちかけたのである。


「お元気そうで何よりです朱将軍」


 皇甫嵩が抑揚は薄くも嬉しそうに、何より洒脱に軍礼を返す。盧植もまた軍礼を返して笑った。戦った場所は違えど肩を並べた英雄との再会を喜ばぬ者は居ない。


「それを言うのならば貴方もだ皇甫左将軍殿」


 盧植が頼もし気に言う。


「四方騒乱の渦中に貴方方が居た事は天の慈悲でしょう。皇甫左将軍殿など宦官の屑供にあの様な目に遭わされたと言うのに今また天下の為に立とうとしておられる。士大夫と言うのは貴方の様な者こそ言うのだろうな」

「ハハハ、その様に申されては恥ずかしいですね。もとより八千戸などと言う食邑は過分な物でした。アレのおかげで小人に集られる事も無くなった」

「うーむ、盧尚書の御言葉、余りにも過分ですのう!! ガハハハハハハハハハハハハ!!」


 穏やかに言葉を返す皇甫嵩と照れ隠しに呵呵大笑する朱儁。二、三の世間話、主に息子の事を話した。そして三人の英雄は本題に入った。


「さて、御二方!! 相談の事じゃあ!! と言うのも陛下の西園八校尉!! これが随分と拙い事になった!!」

「ふむ西園八校尉と言うと、ああ。御両名が送って下さった手紙の話ですね。確かより陛下の意図通りに動く軍勢とか」

「そうなのです皇甫左将軍殿。アレは余りにも問題が大きい」

「確かに手紙の通りであれば必然的に陛下と近しい位置に居る事になりますね。軍事力を持った宦官の様な代物になりかねません。外戚宦官とその虎賁擬が争う事になりかねない」


 皇甫嵩が非常に明敏な将来的懸念を言ったが朱儁と盧植は顔を合わせた。

 確かにそれも問題である。少々時代はズレるがローマの軍人皇帝時代の親衛隊プラエトアニは皇帝の擁立どころか強引な暗殺という手段まで可能とした。政治体系や風土の差は在れど懸念としては真っ当。

 だが二人の懸念はそれ以前の問題であった。寧ろ皇甫嵩の懸念であればまだマシかもしれない。


「皇甫将軍殿!! それもまた確かな問題じゃが違うての……!! それよりも拙い!!」

「……これよりも、ですか?」


 盧植は溜息を漏らして。


「西園八校尉はその名の通り八名の校尉をを任じますが総帥は上軍校尉になります。その上軍校尉は司隷校尉を督し大将軍さえも麾下に置くそうです」

「何と……」


 流石にこれには皇甫嵩も絶句した。それは軍事力を持つ全ての組織に指示を出せる絶大な立場。ともすれば軍事力に限って言えば皇帝と同等の発言力を持つ事になる。

 それは将兵により近い立場で軍の監察官と実行部隊を統べるのだ。ともすれば軍の皇帝に等しく誰がなっても末期は悲惨になる。周囲のやっかみは勿論、皇帝の信頼が命綱となるだろう。

 要は殺されるか簒奪者となるかしか無い程に強力で難しい役職と言える。


「多少頭が回る者ならば就任など出来ず、喜んで就任するとすれば底抜けの愚物か、ともすれば底知れぬ野心家ですね……」


 皇甫嵩は熟も、極めて、心底に呆れながら言った。己が此の後漢に於いて其の唯一の適合者である事を無自覚にだ。二人は唯一の適合者が胃の痛くなる様な役職に興味が無い事に安堵して朱儁が口を開く。


「その上軍校尉!! 陛下は黄門侍郎の蹇碩を就ける御積りですわい!!」

「であれば宦官ですか……。それは随分……」


 皇甫嵩は言葉を選ぶことが出来ず閉口した。豪族の反感で済めば良いが孝行を至上とする世界で宦官を据えるのだ。であれば相当な実績と才能を必要とする。


 が、そんな名は聞いたことがない。


「しかし聞いたことがありませんね。十常侍では無いのでしょうが。如何様な者です?」

「奴は宦官とは思えん程に屈強な肉体を持つそうです」


 黄門侍郎はある意味で盧植の尚書が属する尚書令と近しい職だ。大雑把に言えば勅命の伝達を行うのが黄門侍郎で尚書令は上奏を司る役職である出口と入口の様な関係と言えた。だからこそ盧植は様々な情報を集められたのである。


「御察しの通り陛下の信任は甚だしい。それこそ十常侍以上でさえ確認できぬ陛下の後継に付いても知るとの事。同時にそれしか情報が無いのです皇甫左将軍殿」


 皇甫嵩の頭に痛みが迸った。その程度の人間が就て良い、乃至は就ける役職では無い。誰も得しない選択だ。


「後将軍殿も頭を痛めておられた。中軍に甥子殿と典軍にその腹心を入れられたが混乱の元となりかねぬ代物になってしまったとお考えです。外戚宦官と鼎立させて均衡を保つ御積りであったそうだが」

「その支えとなる足が酷く貧弱、と。そう言えば他の構成も記して頂きましたが幾人かの者が聞及びませんね。ある程度は黄巾の乱で名を聞いた者でしたが」


 朱儁が溜息を漏らした。


「皇甫将軍が知らぬのも当然!! 袁本初と曹孟徳が入るが故に辛うじて立った様な代物ですわい!! しかも馮芳など宦官曹節の娘婿で夏牟はあの十常侍夏惲の縁者よ!!」

「成る程、問題ですね。私も涼州に行かなければ成りませんが分かりました。何か策を考えておかなければ」


 盧植は頷き自身が想定する皇帝の意図を打ち明ける事にした。


「御両名、私の憶測になりますが陛下は——」


 盧植の言葉に二人は納得し頭痛を覚えた。


 〓盧繁〓


 あー斧ブンブン斧ブンブン。もう何回振ったけコレ? とりま斧ブンブン斧ブンブン。


「ねぇ盧繁。キミの腕は何で出来てるんだい? 鉄とかで出来てる?」

「周瑜。俺の腕は骨と肉と皮だ。何で鉄?」

「そんな重そうな斧を軽々振らないで欲しいなって。自分の腕が折れるよね普通。秦の武王みたいにならない?」

「誰が力持ち自慢自爆野郎だテメー。まぁ確かにちょっと疲れたし休むか。よーし打ち込みの相手しやがれ」

「死ぬね。それ。殺す気か」

「アーラ!! アララ!! 本当に噂通りじゃナぁい!!」


 ……あ? 人が消えた? …………いやウッソだろオイ。


 半裸のムキムキなオカマだ。えぇ……しかも暑苦しいタイプじゃねぇか。今日日クレヨンし◯ちゃんでもレアなタイプだぞアレ。


 リアルで見るとガチきついな。んで周瑜ドン引きじゃねぇか。まぁ時代と文化的に当たり前だが。


「アナタ盧尚書の子でしょう? どう? 蚕室にいかナい? 陛下の御為に全てを捧げるのヨ!!」

「ダァルェがチンコ切るかボケェ!!」


 ウインク止めろやキメェェェェェェェェ!!


「フフフン。ま、そうでしょうネ。私程の忠誠はなかなか抱け無いでしょう。それはとっても良い事ヨ。忠孝並び立たずって事なんだから」

「……何で女みてぇな喋り方をしてる。粟立つわ」

「陛下が笑ってくれるからよ。にしても警戒されてるワネェ。名乗っても無いで喋ってるのだから仕方ないのだけド」


 オカマがその場でくねりとシナを作るんじゃねぇよマジでキモイから!!


「ま、礼儀は大事よね」


 クルリと回ってズンと止まりパンと乾いた音を立てて力強く軍礼をした。


「我が名は蹇碩、字は偉徳。陛下が御為に立つ宦官である。盧子昌殿、一つ賭けをしてくれんか」


 ……オカマキャラ何処行った。


「…………賭けですか」

「あの乱の中、戦い仇を討った剛勇。俺は君に挑もうと思う。己の半分の年月も生きてい無い君に挑む。その恥を承知で俺が君に一撃を入れられたら知恵を貸してほしい」


 覚悟ガンギマリな顔しちゃってまぁ……。


「まぁ、良いけど。ガキの知恵に期待しない事ですね。あと鎧は来てください」

「盧繁!!」

「どした周グエーーーーーー」


 襟奥掴むな引っ張るな!!


「なんだよ!!」


 周瑜は目だけで蹇碩を一瞥して。


「盧繁! アレは蹇碩だ!」


 どうやってんだスゲぇな。コソコソ喋ってんのに怒鳴ってやがる。耳マジくすぐってぇ。


「父上から聞いたが関わるだけで類が及びかねない。関係を勘繰られるだけで名声に傷が付き睨まれてしまう。今日は帰って父君に相談すべきだって」


 あー……まぁ、そうなんだよねぇ。大将軍と敵対するのが確実な上に宦官なのに何か十常侍とも距離置いてるっぽいって父上が言ってたし。いや、そんくらいしか知らんけど。


「ああ、そうだな。だが気概ってもんがあるぜアレ。恥だと分かって挑むってな」

「バカ! それは好漢じゃない。ただのバカだぞ!」

「……すまんな周瑜。ちょっと先に帰っててくれや。賭けだってんだからコッチも聞きたい事を聞く良い機会だ」


 うわ苦虫を噛み潰したようってこーゆー顔を言うんだな。てか顰めっ面でコレってコイツマジでイケメンだな。


「……逃げる準備をしておく」

「すまんな周瑜……オメー!! 何言ってんだボケコラァ!! 俺のが強いに決まってんだろ!! 誰がクソ雑魚ナメクジじゃオラアアアン!!?」

「猪に腰抜かした様なのが一騎打ちってアホかバーーーカ!! お前の事を思っての忠告だぞ!! もう知らん!! 暴虎馮河死して悔いる事が無いなら勝手にやってろ!!」

「ウッセバーーーーーーーーーーカ!! 孔子気取りかバーーーーーーーーーーーーカ!!」


 悪いが頼んだぜ周瑜。


 ……さて。


 斧頭取って棒にすりゃ良いか。


「蹇偉徳殿、鎧は着たか。アンタが勝ったら知恵を貸す。代わりに俺の質問に嘘偽り無く答えて頂くぞ」

「……約束しよう」

「あの野郎に怪我するから止めろって言われてな。加減はあんまししねぇぞ……。得物は好きにしな」

「望むところ」


 向こうは鍛錬用の棒か。間合いはコッチが上だな。


「来い!!」

「行くぞ!!!」


 突きか。まぁ確かに鍛えてる。が。


「ほれ」

「グッ」


 お、受け止めたか。まぁ大振りな横薙ぎなんざ止めれて当然だけど。


「じゃあサイナラ」

「は?」


 ちょっと力を込めれば横にブチ飛んでく。マジでムキムキチートだよなコレ。バカ程腹減るけど……。


 今日、何食って帰ろうかな。


 ……。


 …………起きてこねぇな?


「ったく」


 いつまで寝てんだあの宦官。


「……それで話を伺い」


 ん?


「白目剥いとる……」


 ……。


 …………。


 ………………もう1時間くらいになるな。


「ンがッ?! こ、ここは?!」


 お、やっと起きたか。


「お目覚めですか」

「あ、うぅむ。……私、どれだけ寝てたノ」

「半刻程」

「アラそんなに。悪いわネ。で、賢者殿が聞きたい事って?」

「陛下って董侯を後継にしようとしてます?」


 うわエグい目ェ開くやん。


「流石は盧子幹の御子息だ。だがその問いは胸の内にしまっておくが宜かろう。その問いは余りに軽挙だ」


 否定しねぇって事はガチかぁ……。

 後継者を劉協にするのに邪魔な何進を抑える為に、か。しかもコレ状況的に十常侍も董侯を押す気はねぇな。外戚宦官を相手に政争内乱ってか。

 バチクソ荒れるぞコレ……。


 あー、マジで父上に相談しねぇとヤベェな。つか此の状況で後継者問題とかアホ暇かよ。毎年重臣チェンジに各地の氾濫してんのに?


 ……まぁ、董前将軍は涼州だし未だ大丈夫か。

馮芳

西園八校尉の助軍右校尉としか出てこない。もしかしたら宦官の曹節の娘婿かもしれない可能性が無きにしも有らずかもしれない。あと袁術の妾の演者の可能性もあるとか無いとか?


夏牟

西園八校尉の助軍右校尉。情報無さすぎてもう面倒クセェから十常侍夏惲の縁者って事にした。同じ夏だしええやろ!! 知らん!! くらいのノリで。あと豪族と宦官とでバランス取ってますよ的なノリに出来るかなって。


蹇碩・偉徳

字は適当。西園八校尉のトップ上軍校尉。演義だと十常侍っぽいが後漢書だと十常侍じゃ無いっぽい。字は碩と偉で合わせて碩徳で偉徳。本当は忠にしたかったけど良いの思い付かんかった。


ここ迄御覧頂き有り難うございました。もし良かったらポイントとかお願いします。

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