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盧植のおそらくは居ただろう子供に転生?した系三国志の話  作者: 凡凡帆凡
年齢的に何もさせれんし時代的に出さんといけん人多過ぎて手に余る編
15/33

来る、きっと来る、たぶん来る

 洛陽の壁の周りに広がる畑の近くに子供が立つ。斧と弓を持ち洛河の辺りで佇んでいた。十一にして名を知られた子が矢を掴む。


 違和感の酷い小さな弓をキっと引く。


「ッシ!!」


 ドッ、と円形に炸裂した空気を残して直進する矢は一直線。ケツに矢を撃ち込まれた猪が心なしか青筋を浮かべてブオッと鳴いた。振り返り少年を見て猪突猛進。


「あばよ」


 その頭に少年は斧を叩き落とした。


「いやぁ〜デッケえの取れたなぁー」


 下手をすれば大の大人の二倍はあろう首の無くなった猪をズリズリと引き摺り洛河に放り投げ入れる。ドボンと河に投擲された猪は引きずる為の綱を残して水面下に落ちて綱の先を木に縛った少年も河に入り腹を割き臓物を掻き出す。

 熱と腑と血が河に洗い流されていく。田畑を荒らし周り人を襲う獣は人の血肉へと変わろうとしていた。下処理を終え調理法を思い浮かべながら子供は昼寝を始めた。


 蒼天に薄い白雲が西に流れ清水は東に流れていく。田畑の麦が風に囁き小鳥が小さく歌っていた。城の壁の内と外は対極で少年の周りだけ何処か神聖で閑静な空間となっている。


「これが噂の英雄殿か」


 そこに長身というより長い印象を受ける男が現れた。

 非常に整った見た目で髭がなければ性別が曖昧になりかねない程に中性的だ。何処か色気さえも漂うが品位があって雅でありそれ相応の装い。しかしそれらの特徴を鏖殺する鋭利で威厳のある目付き。

 その何よりも黒い瞳は深い野望に染まっていた。


「文王は渭水で太公望を得たが、さて」


 スゥスゥと眠る子供を前に大の男が己が天運を掛けている。普通の少年に対してであれば何とも酷い期待をかけていた。


 〓盧繁〓


 ……なんか目ぇ覚めたら見た事ねぇ男が居るんだけど何アレ。誰? いや気配がするなって薄め開けたら変なオッサンに監視されとるの何コレ。めちゃくちゃ見て来るけど?


 は? コエーよマジで。人攫い?


 ……人攫いならド頭叩き割ってやるけど何かそういう感じでもねーし。何だろ。


 もうずっと5、6㍍先からジッとこっち見て来るだけだ。いや、それはそれでスゲー怖エーなオイ。


 ……寝たフリしときゃ良いか。


 どっか行くだろ。行け。マジ頼むから。失せろ。


 いやでも目ぇ閉じてから近付いて来られてたら泣くぞ俺。どうしよ。いや! いやいやいや。きっと次に目を開けたら居なくなってるってたぶん。


 頼むから居なくなれ。


 ……。


 …………。


 ………………。


 気配消えねぇえええええええええええ!!


 長ぇよ!! 暇かよ!! 肉が魚と蝦に食われるだろーが!!


 え? もう2時間くらい経ってんだろ!! 身体どころか服まで乾き切ったわ!! バカかあのオッサン!! 何でずっとコッチ見てんだよ!! 見てるの気配で分かるレベルで見てくんじゃねーよ!! コエーからマジで!!!


 ……もうガン無視して帰ろうかな。いや、うん。メチャクチャこっち見てるけどワンチャン俺に用って訳じゃ無いかもしれん。メチャクチャ見てきてるけど……。


 てか、もう帰らねぇと普通に塩漬けとか燻製とかの時間がなくなっちまうし、うん。


 ……関わりたくねぇ。


 ふぅ……。


「起きたか」


 ……うわ。


 こっちくんなマジで。


 マジで何。


「初めましてだな小さな賢者よ」


 ん? その呼び方……。


「私は袁紹、字を本初という。端的に言えば汝南袁家の者だ。君も知っているだろう後将軍は叔父上になる」


 ……うわー。ッスー。マジか。


「俺は盧繁、字を子昌と申します。それで虎賁中郎将殿は何用でしょうか?」

「私が虎賁となる事を知っているとは耳敏い。

 成程、流石は噂の賢者殿だ。用件と言っても然程のことは無いぞ。

 虎賁中郎将になって漸く隠れて動けるので顔を見に来た。それだけだよ」


 まさかコイツ……。


「何せ私は宦官に睨まれているからな。叔父上にも君に会うのは止せと言われていたのだ。宦官共が如何反応するか分からんと」


 は? じゃあ来るなよ。何処から来るんだよテメェの自信。何で監視されてねぇ前提なんだ。後将軍の話聞けて。


「叔父上は心配性なのだ」


 何ヤレヤレ的な顔してんねんコイツほんま。


「あの。虎賁中郎将殿、思いっきり付けられてますけど?」

「え?」


 え? じゃねーよボケ。何か木の影にいるだろ。いや位置的に見えねぇのは分かるけど城からここまで田畠だぞテメェ。身を隠すとこねぇじゃん。


「……斧投げるんで掛け声に合わせて右へ跳んで頂けます?」

「え? あ、うむ。……え?」


 斧を抜く。


「オラァッ!!!」

「ホアッツ?!」


 俺の斧は上手いこと木の幹にブっ刺ささり腰を抜かす密偵とボケ。さーて宦官の刺客じゃ無きゃ良いが。マジで未だ官にも付いてねぇってのに何この状況。


「グェ……」


 逃げる前にちっさいオッサンの襟首引っ掴んで引き摺りあげて首に長斧を添えとく。


「で、何処の何方様?」

「曹操?!」


 ……はい?


「た、助けて本初殿ぉ!!」


 ……はい?


 ……マジで帰りたい。

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