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盧植のおそらくは居ただろう子供に転生?した系三国志の話  作者: 凡凡帆凡
年齢的に何もさせれんし時代的に出さんといけん人多過ぎて手に余る編
13/33

宴わっしょい

 洛陽で大きな大きな大宴会が開かれていた。

 盛大な催しの主賓は二人の英雄。左車騎将軍に任じられ長安駐屯を命じられた後漢王朝今代最強の名将と、右車騎将軍に任じられ河内駐屯を命じられた戦歴を重ねた卒無き勇将だ。彼等の必勝を願った宴会である。

 そして並み居る客人は王朝の重臣と名士達。


「さぁさあ皆々様!!」


 主催者が鼎を持って立った。それは先月に司徒を免職されたばかりの人物である。だが此の場で二番目に金の掛かった豪奢な服を身に纏う天下一番の金と権勢の持ち主。良い意味で何処か軽々しく快活な印象を受ける老人。髭撫で溌剌に活発で朗々と。


「我等、汝南袁家の主催した此度の宴、どうかどうか楽しんで! 此の洛陽と、延いては天下を守護する!! そう!!」


 二人の英雄へ大仰に広げた掌を向け皆の視線を誘導して。


「彼等英雄の、天下の車騎、その両輪たる皇甫将軍と朱将軍の!! 無事と必勝を祈願して下され!! さぁ召元殿、音頭を!!」


 更に主催者に似た、息子程の歳の男が頷き並ぶ。重々しく慇懃で宴とは縁遠い雰囲気だ。しかし不粋では無い。


「天下と、陛下と、英雄達に……」


 鼎を高らか。


「「「「「乾杯!!!」」」」」


 唱和に続いて楽曲が響き踊り子が舞う。銘々が酒を酌み交わし珍味美食に舌鼓を打つ。喜怒哀楽の内で最初と最後のみ広がっている。


「おお子幹殿、子昌殿。皆皆、見られよ。彼等も来てくださっている。やぁやぁ、よく来てくださったな御二人共」


 主催が朗々と明朗快活に言う。黄巾の乱で特に活躍した三名が当然の様に揃っていて、更には特に名を知られる事となった子も居た。その特に注目を集める席へだ。


「何の、息子はともかくです。皇甫将軍のおかげで此処に居れる私の様な者まで呼んで頂いた事、深く感謝しております次陽殿」

「おお! なんと言う事を言うのだ子幹殿。皇甫将軍のおかげと言うのは黄巾鎮圧の功績を思えば頷ける!! が! しかし!! 貴公もまた賊軍一万を討ったのは事実なのだ!! 全く袁赦が生きて居ればなぁ……」


 主催者の弟が染み染みと言い主催者の兄は小さな溜息を漏らした。盧植は明確に二つの意図を受け取り特に深甚に思って感謝する。だからこそ心を込めて拱手して深く頭を下げて見せ察した息子も同じく続く。


「……御言葉、有難く」

「まぁまぁまぁ、子幹殿。何の事やら。礼を言われる事ではなかろうよ。貴公が功績を挙げたのは唯々事実だからのう」


 そう片目を閉じて笑みを浮かべながら鼎を傾けた袁隗は英雄の息子が頭を下げている事に漸く気づいた。


「御子息殿は、如何なさったかな?」

「無粋にも申し上げてしまえば袁後将軍様が庇い立てて下さいましたので」

「ふぅむ、御見通しかね小さな賢者殿。ならば言ってしまうが尚、気を付ける事だ。宦官の良識は薄れ、相応に敵意も集っている。

 鄭颯と董騰は任侠で好漢、いや好宦だが陛下に取って触られたく無い過去だ。また呂強は陛下御本人の汚点であり趙忠の明確な敵だった。曹騰などは宦官どころか朝臣でさえ頭の上がらぬ人物だったのだ。

 悲しきな今、彼等を褒める事を喜ばぬ小人は多く、そういった匹夫は加減を知らん。類が及ぶのが君だけとは限らんのだ」

「肝に銘じます」

「……そうしてくれ。良い子息を持たれたな子幹殿」


 〓盧植〓


 うぅむ……。萎びて居られる。噂には聞くが苦労しているのだな。後将軍殿は。


 侍御史殿は評判が良いが過激だと聞くし、折衝校尉殿は評判が悪いと聞くが。


 いや、まぁ繁も腕白では済まんか。


「甚だ辱く。真に勿体無い御言葉、駟も舌に及ばぬを知りながら気を抜くとこの有様とは言えど鳶が鷹を産んだ様に思えている自慢の息子です。特に力は」

「……力?」

「ええ。怪力乱神、此れを夫子が語らなかった事が大いに悔やまれる。無論、読み取れる事は御座いますが、確とした言葉が残っていれば此の子も生き易かったたろうにと思えてなりません」

「大変なのだろうが羨ましい事だ。長男の福のヤツは身体が弱くてなぁ。可哀想でならん」


 ……うぅむ。


「では地元で薬とされる人蔘を送れるだけ送らせて頂きましょう」

「それは有難い。薬師にも言われておりますが何せ世が乱れて手に入らぬ物も大い。感謝しますぞ子幹殿」

「何の。私も子も恩が御座います。少しでも返さねば立つ瀬が無い。また子を思うのは当然の事。どうか御気になさるな」

「それは無理だ子幹殿。どうか深甚に感謝させてくれ。妬みを恐れず言えば権勢など虚しいものだ。病弱な息子一人救えん。情け無い話だ」


 そう耐え難い心傷に諦念を混ぜて言うと後将軍殿は鼎を傾け一気に酒を呷った。繁がそこら辺の賊徒を殴り飛ばして来たり、烏桓鮮卑を薙ぎ払って騎馬を奪って来たり、猛獣を狩って来たりした時は酷く困ったが。これは随分と幸いな悩みだったのかもしれん。


 ……いや、どうだろう。


 ……。


 幸いな悩みだな、うむ。


「そうだ子幹殿。確か御嫡子の子昌殿は今年で齢十だったと記憶しているが? ……改めて壮絶な、うむ、うーむ……」


 これはアレだな……後将軍殿は婚約関係の話をしたかったのだろうな。それで年齢を思い出して、成した事を思い出した形か。まぁこういう反応にもなるだろう。


 唸っておられる。


 ……繁のヤツは、逃げない様に捕まえておくか。


「……ちょ、父上。厠、厠」


 声を顰める分別はあるか。


「嘘つけ。観念せい」


 諦めたか。全く誰が逃すか。お前の話だというのに。


「ん、あ。すまんな子幹殿」

「いえ、御気になさらず」

「それでだ。まだ早いとは思うが許嫁の世話をさせてくれんか。此の齢で此の勇は、その。

 ハッキリ言って素晴らしい事ではあるが、不安になる。万一があっては天下の損失であろう」


 何という御言葉か。


「御礼申し上げます」

「うむ。少なくとも我が一族から一人を、と思っている。それとも子昌殿には想い人がいるかな? まぁその時は側室か妾にでもすれば良いと思うが。英雄の妻など多ければ多いほど良いからな」

「其れについては御心配無く。どうも愚息は女子に懸想される事に気付かぬ朴念仁の類でして。周りの者を惑わせる妖婦ならぬ妖夫の類です。懸想されこそすれ懸想はしたりはしておりません。後腐れも御座いませぬ」

「よ、妖夫……? まぁ見た目も整っているが。それは本当かね?」


 ん? 後将軍殿は何を見て……あ。全くコイツは。


「繁、何だその顔」

「いや、あの、父上。俺って懸想されてたんです?」

「されていたぞ。お前に妹扱いしかされずに皆が身を引いたが。遠巻きに見られてたろう」

「そんな、馬鹿な。アレ俺の事を忌避してるのかと……。睨んでる者も居ましたよ?!」

「ああ、そうだな。お前が朴念仁過ぎて睨む者もいたな。大体が諦めていたが」


 絶句しおったなコイツ。本気で気付いてなかったのか。県で一二を争う娘に妹扱いするなと言われて笑って子供扱いした辺りで不安には思っていたが全く。何れ自覚すると思っていたが拙いな。うーむ……あ!


「繁。お前、仲穎殿の孫娘に惚れられていた事に気付いてるか?」

「はい? いやアレは言わば英雄譚に憧れただけでしょう? それで父上との縁を欲した董殿が顔合わせの理由にしたんじゃ……」

「……ハァ。後将軍閣下、繁は此の為体な故、どうかお願い致す」

「うぅむ……これは重症だな。実は言うと子昌殿とは董卓を始め縁組を相談されていてる。嫉妬深い女など娶れば大事だぞ。まぁ、腕が鳴る」

「感謝いたします……。繁、驚き過ぎだ。お前も礼を言え。、礼を」

「あ、えと。はい。ありがとうございます」


 ……大丈夫かコイツ。まぁ嫁は多いに越した事はあるまい。繁も守る者が多ければ落ち着くだろう。


 落ち着くと良いなぁ……。


 ……無理かなぁ。

袁基・召元

字は適当。荀彧のオトンの話的に袁逢は黄巾の前に死んでる? っぽかたので出した。字は汝南袁家の始祖と言われる袁安の字の召公から取った。それと基と似た意味の元。ちょうど袁術の字にも袁安の字の公が入ってるから良いかなくらいのノリ。


袁福・満来

名は適当。袁隗のたぶん長男。袁満来としか出てこないで皇甫堅寿と同じノリで名前を考えた。

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