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魔法少女と転生者  作者: 本まぐろ
第一章 僕らの明日に祝福を
3/3

初任務:怪物退治 モモ

今回はモモ視点です。

戦闘シーン、かなり書くのが難しかったです。大苦戦しました。

感想・リアクション・評価などぜひぜひお願いします。

わたし、安田桃花13歳、中学2年生!

異世界から来たナゾの少年エドワード君にスカウトされて、魔法少女になっちゃいましたっ!!


さかのぼること数分前、公園にテレポートしたわたしは巨大な怪物と対峙していた。岩を積み上げたような見た目で、体長はたぶん5メートルくらい。少年によると、人の負の感情から生まれて人を傷つけるらしい。


少年は「魔法は気持ちが大事」って言っていた。

静かに深呼吸して、魔物を睨みつける。みんなの普通の暮らしを守りたい。選ばれた女の子として、何が何でもコイツはわたしが倒す!

…だったら、『アレ』しか無いよね。


「変身!」


直後、わたしの体の内側から、ぐわーんと力が湧いてくるのを感じる。湧いた力は広がって広がって、わたしの周りの空間をピンク色に染める。

鼻歌を歌いながら、肩から太ももにかけて、それにツインテールも両手でするりと撫でる。上半身はフリルのついたシャツに、下半身はふんわり広がった淡いピンクのひざ丈のスカートになった。髪は解け、かなり長い金髪になる。お団子とツインテールが一緒になったような腰まである長い髪型に変化する。ついでに髪飾り付き。

イイ感じ!

それから、肩や胸や脚をポンポンポンと軽く叩く。肩に丸い形の袖が、胸元にリボンが付く。脚には側面にリボンのついた長い白のブーツができた。

カワイイ盛りだくさんの、わたしだけの魔法少女コスチュームの完成だ。


あとは武器と…妖精さん?

ふとそう思ったとき、手元にはハートとリボンの飾りがあしらわれたステッキが、わたしの真横にはクマとウサギのハーフみたいな生き物が現れた。昔持ってた、星がモチーフの妖精のぬいぐるみに似ている。よおし、君の名前はキラルンだ。うんうん、わたしにピッタリで結構かわい…


「待てキラ!!『キラ』!?」


真横からエドワード君の怒鳴り声が聞こえる。真横?

「えーっと…エドワード君?」

「そうキラがこれは何キラ?これじゃ援護も出来ないだろうがキラ。このふざけた語尾も、すぐ戻せキラ」

どうやら、キラルンの正体はエドワード君らしい。さっき妖精さんのことを考えたから、わたしが変身させちゃったみたい。

さっきまでの優しい感じはどこかに吹っ飛び、 少年らしからぬ気迫で詰められ、後ずさりする。こ、怖いよエドワード君。あとつぶらな瞳でそんなに睨まないで、語尾つけないで。笑っちゃうから!

「申し訳ないんだけど厳しいかなぁ…。たぶん、変身も戻る。わたしの直感がそう言ってる」

「ああそうキラか、ならお前一人で倒せキラ。自業自得キラ」

え〜っ、これわたしが悪いの?


それで、現在に至る。

目の前では今も魔物がこちらを睨んでいる。何もしてくる気配が無いのは、魔法少女のお約束ってやつだろう。


先に動いたのは魔物のほうだった。持ち上げた重い手を、わたしに向かって地面へ叩きつける。地面にははっきりと手形が残り、砂が足元にビシバシ飛んできて痛い。

くっそお、やったな!

魔物に突進しながら、ステッキに力を込める。魔物の足元をぶん殴る。殴った辺りに直径20センチ程の窪みができ、魔物は金属がギリギリとこすれるような金切り声をあげる。

魔物は、何だか知らないが、わたしをかなり嫌っているようで、雪だるまみたいな球状の下半身をゴトゴトと動かして目の前の敵を今にも轢き潰そうとしている。


「おいキラルン!」

「だ・れ・が、キラルンだキラ!何だキラ!?」

「コイツさ、人の負の感情から生まれるんでしょ?どーやって倒すわけ?浄化技とかあんの!?」

「知るかキラ!!ノリで何とかしてくれキラ!!」


エドワード君、というかキラルンが泣きそうな顔で言う。異世界人だというのになんにも知らないじゃん。


「まともに練習もないまま魔法を使ったから、魔力がかなり不安定で危なっかしいキラ。今下手に教えて、モモの魔力のイメージが変に固定されたら困るキラ。本当に、モモの気持ち次第でどうにでもなりうるキラ。何とか自力で倒せキラ!」


あっ、はい、ごめんなさい。

魔物は結構な速度でこちらに突進してくる。何とか避けながら、攻撃法を模索する。1メートル程離れてビームを撃ってみる。2、3メートルくらいは魔物を動かすことができた。下半身は一部だけ変色し、高温にさらされたように見える。突進する巨体からするりと身をかわし、変色した部分をステッキで殴りつける。初めて亀裂が入り、石の破片がボロボロと落ちる。確実に効いている。だけど…、あまり効果的には見えない。

さっきまで4、5発殴ったが、下半身が少しくぼむばかりで大して効いている感じがしない。別の方法を考えたほうが良さそうだ。

改めて、状況を見てみる。魔物に荒らされてボコボコになった、公園のグラウンド。こちらを睨む、石でできた魔物。球を積み上げたような見た目だから…ボール?

少しずつ分かったような気がする。相手はこちらを物理的に潰そうとしている。ボール「で」なのかボール「が」なのかが微妙に分からないが、ある心情が発生源だとすれば、「敵意」とか「プレッシャー」にあたるのだろうか。

それで、どうするんだろう?

わたしはうーんと首をかしげた。頭使うの、苦手なんだけどなあ。

そのとき、わたしの身体に湧いていたエネルギーが、テレビのコンセントを抜いてしまったみたいにブツリと途切れた。


モモは全く気づいていないが、エドワードは非常に焦っていた。本来ならば、魔力の増やし方から順番に、せめて攻撃魔法と防御魔法くらいは教えておくつもりだった。

今のモモは自身の魔力すら持って無い。エドワードが溜めておいた魔力も、変身の為に使われ続ける。かと言って、変身を解かせて自分が戦うには、せいぜい平民生まれの男児の身には、魔力が足りない。腕輪から移し替えるのにももたつくだろう。

モモに戦わせるしかない。それでも、決して都合の良い展開が始まることはない。

エドワードは祈るような目でモモを見る。モモの持つ魔力は既に底をついていた。


あ、あれっ?エネルギーは?

そう思ってステッキをさすったり、握りしめたりしてみるけれど、なんにも変わることはない。

自分の背丈をはるかに超す魔物が、表情を変えず、今もわたしを見つめている。

意思すらないとか、ない…よね?


そう思った瞬間、キラルンの声が届くより早く、魔物の手がわたしの身体をさらっていった。わたしは、左手に握り込まれる形で魔物の目の高さまで持ち上げられる。必死に抵抗してみるけど、脱出どころか、魔物の手に食い込む感触すらなくて血の気がさぁっと引いていく。少しずつ、だけど確実にだんだんきつく握られている。変身もいつの間にか解除されたのか、視界には元の黒髪が映り込んでいる。

わたしじゃダメだったったのかな?正義感のある子や守りたいものがある子だったら違ったかも。

キラルンが必死に手を剥がそうとしている。ごめんね、でもたぶん無理だよ。身体が動きそうもないし、きっとこのまま、この知らない場所で、世界も救えずにキラルンと友達を置いて…。


なんだか急に腹が立ってくる。

なんで、ここで死ななきゃいけないの?

どう考えても説明不足だ。魔法の使い方すらまだ聞いていない。そんな状態でバケモノに潰されてあっけなく死ぬなんて、納得いかない。

なりたい自分でいたい。可愛くありたい。だから引き受けた。別にみんなのためじゃない。だったら今度は自分のために、自分のやり方でやらせてもらいたい。

叫ぶ。この辺り中に響くくらい、大声で。

「ナメんな、ちくしょーーー!!」


ちょっと前、公園に向う途中でキラルンは言っていた。自分の世界では神様が世界を統べていると、自分は神様の要望で仕事を引き受け、ここにいるのだと。

だったら神様、いるなら力をください。わたしを邪魔する奴らは、魔物でも魔獣でも全部ぶっ倒してみせます。こんなただの石の塊なんか叩き割ってみせます。あんたらだってその方がいいんでしょ?わたし、これじゃ納得できません。


魔法は気持ちで出来ている。

必要なのは心の強さとイメージ力、それに信仰心。


突如、わたしにまた力が湧いてくる。心臓がどくんどくんと脈打つのと一緒に、力もどんどん増えていく。

髪はまた金髪に、服もさっきのコスチュームに戻っていく。勢いに任せ、魔物の手を引き剥がして地面に飛び降りる。自分の武器を握り直す。もうステッキじゃない。ハートとリボンの飾りが付いた、黒く鋭い大鎌。

魔物の振り下ろした左手に飛び乗る。振り落とされるより早く、次は右手。それから魔物の頭上に、高く、高く。

なぜだか、今なら何でもできる気がしている。どれだけでも跳べるし、斬りたければ斬れる。やりたいからやれる。

大鎌を構え直し、魔物の脳天へ振り下ろす。そのまま突っ込む。

「とりゃーー!!」

前が見えない程の火花が散ったあと、そこには真っ二つになった魔物が転がっていた。それは外側からボロボロと崩れていき、ピンク色の小さな石を残して跡形もなく消えた。


「お、終わったキラ…。」

疲れと安堵の入り混じった声でキラルンが呟く。

「ほんっとにマジで死ぬかと思ったんだけど。で、これ何?」

変身を解除して、残された石を拾う。2センチくらいのハート型をしている。夕日に透かして眺めると、キラキラと光って宝石みたいに見える。

「後でじっくり説明するから、とりあえず帰るのが先キラ」

それもそうかとテレポートを使おうとして、慌ててキラルンに止められる。

「待てキラ。なんか大事な事を忘れてるキラが、まさか気づいていないキラ?…一度モモの変身が解けた時点で嫌な予感はしていたキラが、俺の変身はいつ解くキラ?まさか戻せない〜とか言うんじゃないキラよね?」

…やっば!忘れてた!

戻そうと意識してみるけど、方法がよく分からない。エドワードの容姿をそんなにはっきり覚えてないし、わたしの中で魔法少女とキラルンのイメージが結構定着してしまっている。う〜む、参ったなぁ。

「え〜と、申し訳ないんだけど、厳しい…かも。元の見た目とか、あんまり覚えてないし…。」

キラルンが、わたしを睨みつける。つぶらな瞳で。頭を抱えようとして、手が短くて届かずにほっぺたを触った。

「…」


キラルンが叫ぶ。街中に響くくらい、大声で。

「こんの、馬鹿ヤローーーーー!!!」

次はキラルン視点。魔法についてちょっと説明したい。

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