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魔法少女と転生者  作者: 本まぐろ
第一章 僕らの明日に祝福を
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出会い エドワード

主人公とかまだ決めてません…。

各話ごとに語り手を変えることになると思います。

今回はエドワードの視点です。

まばゆい光に包まれ、思わず目をぎゅっと閉じる。一瞬だけ身体がフワッと浮く感じがしたが、すぐに収まった。

人の声、車の走る音、蝉の声。きっと日本だと確信を持って目を開ける。目の前にはフェンスと車道を挟んで民家が並んでいる。どうやら公園の公衆トイレの裏に飛ばされたらしく、真横に薄汚れたクリーム色の壁が見える。

間違いなく、昔からよく訪れた公園だ。あまりの懐かしさに興奮して心臓がうるさいほど高鳴っている。今は真夏だろうか、蒸し暑さに身体が汗ばみ、ここで生きているのを実感する。ようやく日本に帰ってきたのだ。大して綺麗でも大切でもないこんな場所で、少し泣いた。


公園を出て、近くの駅までのんびりと歩きながら協力してくれそうな人を探す。

「魔法や戦闘に嬉々として飛びついてきそうな、アホそうでお人好しな未成年の女子」

もちろん俺の性格が悪いのではなく、ちゃんと合理的な理由がある。

俺のいた異世界では、世界を統べるのは3人の女神様だそうで、魔力はたいてい女の方が強いと決まっている(その代わり、こちらと同じく男は腕力が強いそうだ)。魔物と戦うならば、腕力よりも魔力が優先だろう。

それに、社会人よりも学生の方が都合がいい。きっと今は夏休み前後だろうから魔物退治に駆り出しやすいし、学校なら仕事よりも楽に休んだり抜けたり出来る。

「アホそう」は言い過ぎにしても、協力的なのは絶対条件だ。魔法の仕組みや異世界の接近に過度に興味を持って自力で調べたり、良からぬことを考えて魔法や転移陣を悪用したり、神話を知って「見ろ一般市民共、神など所詮こんなものだー」なんて主張されれば、こちらとしては非常に困る。そもそも俺は日本円を持っていない。少年マンガよろしくお家でしばらく養ってもらう必要がある。

転移陣が出来ているならば、先に何人か送って色々支給してくれても良かったんじゃないかとも思うが、せっかくのチャンスが延期や中止になっては困る。裏の事情については考えないことにしている。

とにかく、協力してくれる少女には、ただ魔法に目をキラキラさせて、世界を守る正義の味方としてこちらに従って欲しい。少なくとも、俺はずっとそうしてきた。結局、ただ平凡に生きているのが一番良いのだ。


久々の駅前は、ラーメン屋が居酒屋になったり新しいビルが建ったりしてはいるが、十年前の面影を残して今も賑わっていた。何なら以前よりも若者が増えているようにも見える。

手始めに、楽器ケースを背負った、お団子ヘアの活発そうな女子高生に声をかける。

「あの、ちょっと良いですか?その、魔法に興味はおありでしょうか…」

彼女は困ったように目をそらして、かなり言葉に迷いながらこう答えた。

「いや、そんなに…」

当然かつ予想通りの反応だ。次。


しかしながら、まぁ予想通りちゃんと話を聞いてくれる人が現れない。金髪の少年に魔法の話をされればどう見たって怪しいし、関わりたくもないだろう。駅構内や駅の近くのお店も回ったが、良さそうな人は現れない。

夕方になって、諦めてさっきの駅前に出てきたとき、その少女はいた。こいつだ、と直感した。


その少女はニンマリしながらベンチに座ってスタバのフラペチーノの写真を撮っていた。恐らく中学生で、髪型は高めのツインテール。何らかのキャラクターのバッジが中途半端についたリュックやピンク色のパーカー、それに厚底のスニーカーから、彼女の「かわいい」への憧れが伺える。正面に回って遠目で見れば、ちょっと濃いめにメイクしたその顔は幸せそうに緩んでいるのがわかる。が、あれは多分「フラペチーノだぁ〜カワイイ〜」というよりは「と、とうとうあの飲み物…スタバを買ってしまったぜ…!!」という顔だ。相当写真を撮っているので、下手したら俺より不審者なんじゃないかとすら思う。


憧れの強い、アホそうな女の子…完璧。


これ以上の逸材は恐らく現れないので、一気にけしかける。

「ねぇ、ちょっといいかな?」

「?」

「実は僕、異世界から協力者を募るために来たんだ…」

そう言いながら、手の上に小さな小さな炎を浮かべる。ハテナの浮かんだ少女の顔が、みるみる驚愕の色に変わる。

「こんなふうに魔法を使ってさ、これからこっちの世界にたくさん迷い込む、異世界の動物や悪さを企む魔法使い、それから人を傷つける危険な魔物に対処して欲しいんだ。退治したり、捕まえて送り返したりね」

少女は困惑しているが、目を大きく開けてこちらをじっと見つめている。なんで私が?って言いたいんだろ?答えてあげよう。

「良さげな人を探してたらさ、目をキラキラさせて飲み物を見つめる君を見つけてさ。君の純粋な瞳が、他の女の子たちとは違う感じがしたんだ。魔法はね、気持ちで出来てるんだ。心の強さと想像力が何よりも大切なんだよ」

あと信仰心。 

「…だから、君はピッタリなんだ。制約がないわけではないし、僕には帰るところがないから、しばらく泊めて貰うことになる。だけど、どうか、僕に協力して……世界のために、戦ってくれないかな?」 


完璧。若干都合良く伝えたが、まあ別に問題はないだろう。

「私が…?」

「うん。君にしか頼めない」

「やる。私、戦う!」

いいぞいいぞ、ぜひとも戦ってくれ。

「じゃあ、交渉は成立だね。ただ君はこちらの世界の人間じゃないから、魔法を使うにはちょっと道具が必要なんだ」

自分のカバンから魔術具をひとつ取り出す。直径10センチくらいの金属の輪っかで、ハート型の魔石がついている。

「どの色がいい?それと、利き手はこっちだね?」

少女の選んだピンクゴールドのそれを、ゆっくり少女の右手に通す。

「今から契約魔術を使う。魔法を使うなら、決まりは守ってもらう。まず、魔法のことを決して口外しないこと。そして、魔法を悪用しないこと。それから、僕の命じたことには従うこと。一応警告はあるけど、これを破ればその腕輪から電気が流れるから、破らないように。できるね?」

「うん」

少女はしっかりと頷く。

「いいね。名前は?」

安田桃花やすだももか。モモって呼んで」

「よし、じゃあここにサインして。書き間違えないように気をつけてね」

そう言って、カバンから羊皮紙と専用のインクやペンを取り出す。紙には、先ほど教えた契約の条件が簡潔に書いてある。

「そうそう、僕の名前はエドワード。これからよろしくね」

そういって、モモの名前を確認しつつ自分の名前を書き記す。紙にたっぷりと魔力を込める。黒い文字がだんだんと青く変わり、ほのかに光り始める。紙をクルクルと巻いたら、エイヤッとモモの腕輪の魔石に押しつけ、そのまま手を当てて魔石にもしばらく魔力を溜めておいた。

モモの腕輪が小さくなり、腕にピッタリのリストバンドのような形に変化する。

神に祈りを(バイネ・ヴィルモーラ)

魔石が一瞬明るく光った。契約成立だ。


「…ま、そういうわけで、これからよろしく。もしも魔物とか、対処するべきものが現れたら、その腕輪に通知が来る。…とりあえず、家について行っても良いかな?もう夕方だし、実は日本のご飯が楽しみでならないんだ」

フラペチーノをずぞぞぞぞ、と飲み干してから、モモは答えた。

「いいよぉ〜。今家に誰もいないから、異世界の話聞かせて!あと魔法の練習もするから!!」


うんうんと頷いてベンチを立とうとしたその時、モモの腕輪が光った。

俺の腕輪も光り、数秒感覚でパチパチと電気が流れている。

「行こう」

この腕輪…もとい魔術具は、どんな仕組みかは知らないが、かなり精密で多機能となっている。

先ほどの公園へ急ぎつつ、小声で使い方を説明する。

「便利なことに、これにはテレポートの機能があるんだ。これが光ったら、全力で念じつつ石の部分に魔力を流すんだ。今、モモの腕輪には僕の魔力が溜めてある。なんというか…ぐっと力を込めるイメージでね。あとは感覚で何とかなるはずだ」

「めっちゃ便利じゃん!?」

「出番があるときに現場に行くことにしか使えないからね?…あとはまあ、トランシーバーの機能もある。でも、絶対に人に見られないように」


俺が転移した例の公衆トイレ裏で、魔術具を起動させて転移魔法を使う。モモはものすごくワクワクした顔だが、ぶっつけ本番なので俺はそんな余裕が全くない。人に見られないか、怪我をしないか…正直かなり不安だ。

「はぁっ!テレポーーート!」

不安が高まった。


転移先は公園かどこかの野球コートだった。人の気配はない。

視線をあげ、目の前のソレを見る。


5メートル位ある魔物。5段積みの雪だるまのような形で、身体はそれぞれ大きな岩で出来ている。2メートルはあろうかという、これまた岩で出来た手は、魔物の胸の高さ辺りで宙に浮いている。頭には丸い凹んだ眼だけがあり、じっとこちらを見つめている。


…初っ端からデカくね?

俺、迷い込んだ動物&魔獣退治を想定してたんだけど。


「あれは魔物、討伐対象だ。人の負の感情から生まれ、人に害を成す。そんでもって、様々な姿を持つ」

「あ〜、了解。そんで…攻撃魔法?も、ノリとイメージでいいわけ?」

「ああ、モモに任せる」


ホントに、頼むから怪我しないでくれよ。俺はただテキトーに済ませて平凡にのんびりと過ごしたいんだ。


「じゃあエドワード、いくよ…『変身』!!」


なんて?


たちまち俺達2人はピンク色の空間に転移する。モモは短いワンピースの形をしたピンク色の光に包まれて、宙に浮いている。俺はというと、薄い黄色の、いかにも魔法少女と一緒にいそうなもふもふの小動物になっている。


一体全体なんの魔法だよこれは!

なぜ魔法少女になる気満々なんだ!?

予想外の出来事に頭を抱える(もっとも、頭に手が届かないのだが)。

あいにく、こちらの心の叫びは少女には全く届いていないようだ。

書き終わらなかったので、短いですがとりあえず投稿します。次回は戦闘です。

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