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MMOやり込みおっさん、異世界に転移したらハイエルフの美少女になっていたので心機一転、第二の人生を謳歌するようです。  作者: 遠野紫
終章『アヴァロンヘイムと悪魔の軍勢』

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76 魔王殺しの化け物

「二人共、ありがとう」


「いいのよ、近接戦闘なら私の担当だもの」


「あたしも直接戦闘してくれた方が戦いやすいからね」


 低級悪魔と中級悪魔が一斉に攻めてきたうえに、恐らくあのアスモデウスと同格の上級悪魔が二人も襲ってきた。

 幸いにも二人が守ってくれたが、彼女たちがいなかったら結構危なかったかもな……。


「よし、戻っていった悪魔に警戒しつつ、残っている雑魚悪魔を倒そうと思う。二人はさっきみたいな事が起こるかもしれないし、警戒していてくれ」


 最初の奇襲もあってか、ほとんど中級悪魔は残っていない。

 だがまだ低級悪魔はかなりの数が残っているし、全体の数が減ったことで上級悪魔が確認しやすくなった。

 中でも特にヤバそうなのが七人いるし、アイツらには俺も警戒しないとな。


「エクストラマジック、ロストタイフーン!!」


 第八等級魔法であるロストタイフーンを発動し、残っている低級悪魔を一掃する。

 さっきまで使っていた魔法と同じくコイツもロストの名を冠するだけあって、範囲も火力も他の魔法と比べて段違いだ。


 その分MPの消費量も多いけど、それはもう今の俺にとってはどうでもいいことだった。

 何しろステラから記憶を受け継いだ時に最大MPも物凄く上昇したんだ。

 おかげでこのレベルの魔法をエクストラマジック付きでバカスカ撃てる。


 ゲームでは絶対に出来なかった脳筋魔法連打戦法……正直楽し過ぎる。


「ステラ、危ない!!」


 爽快感と脳汁を楽しんでいたら、ルキオラがそう叫びながら俺の前に飛び出た。

 そして飛んできた魔法を拳で弾き返す。


「あっ……やっぱり駄目かぁ」


 どうやら魔法を撃ってきたのはあの女性悪魔のようだ。

 戦場にいるとは思えない程の退屈そうな表情だが、明らかに今の魔法は俺を殺すための一撃だった。

 

「早く終わらせて寝たいんだけど……これは長引きそうだなぁ」


 その眠そうな声を聞いているとこっちまで感覚が鈍る気がした。


[『状態異常:睡眠』をレジストしました]

[『状態異常:感覚鈍化』をレジストしました]


 ……いや違う。実際にそういう能力だったらしい。

 その証拠に視界の端に状態異常を無効化した表示が出てきた。

 今の俺のステータスと装備なら大体の状態異常を無効化出来るが、二人の方は大丈夫だろうか。


「君、なんであの声を聞いて寝ないわけ? ずるいよ、ボクだって最初から怠惰への耐性があった訳じゃないのにさ!!」


「残念だけれど、私にそう言ったものは効かないのよ。吸血鬼に状態異常を通そうだなんて数万年早いわね」


 少女の姿をした悪魔と戦っていたメイデンはそう言って煽っていた。

 そこの単位、吸血鬼にとっては数万年とかになるんだな……。


 あれ、いや待て……あの悪魔、よく見たら男か?

 ならなんであんな恰好を……男の娘ってやつなのだろうか。

 

「よそ見している場合じゃないわよぉ」


「ッ!!」


 二人に気を取られていた間に、いつの間にかアスモデウスが目の前にまでやってきていた。


「さあ、私の眼を見なさい」


 彼女はそう言いながら目を紅く光らせた。


「ぐっ……これ、魅了か……!?」


 それを見た瞬間、体に力が入らなくなっていった。

 不味い、魅了に関しては完全には対策出来ていない。


「うふふっ、いくら腕の立つ者でも私の色欲の権能には勝てないのよぉ♡ 大丈夫、貴方は私がゆっくりと壊してあげるから。さあ、すっごく気持ち良くて、魂まで蕩けちゃうほどの快楽に身を委ねなさぁい♡」


「がっ……んぐっ……」


 駄目だ、口が上手く動かないせいで魔法を発動出来無い。

 このままだと完全に魅了されて……。


「ステラ!!」


「ルキオ……ラッッ!?」


 それは突然の事だった。

 兜を解除していたルキオラが俺に口づけを行ったのだ。


「……ぷはっ、ルキオラ急に何を……って」


 魅了が解除されたのか、体が動くようになっていた。

 そして問題なく発声も出来るようになっている。


「は……はぁっ!? 私の魅了がその程度で解ける訳がないでしょう!?」


「そんなこと俺が知るか!! エクストラマジック、極炎砲バーンフレイムバーン!!」


「キャアアァァァァァッッッ!!」


 俺の放った魔法に焼かれ、アスモデウスの体は奇麗さっぱり消失したのだった。


「アスモデウス!? そ、そんなバカな事あるはずが……!」


「……油断大敵ですよ」


 彼女が消えたことがそれだけ衝撃的だったのか、女性悪魔は退屈そうな顔から一変、焦った様子で叫んでいた。

 そんな隙だらけな所にルキオラが拳を叩きこんだ。


「ぐぅっ!? ぅ゛がッッ、な、なにこれ……体が、破裂し……」


 彼女が編み出した新技、それは対象の内側から爆発を引き起こすと言う中々にエグイものだった。

 それは悪魔が相手であっても問題なく通用するらしく、彼女の体は内側から盛大に破裂し、弾け飛んだ。


 ……正直、二度と見たくない光景だな。


「そんな、アスモデウスに続いてベルフェゴールまで……ずるい、ずるいよ。どうやったらそんな強さを手に入れられるのさ……!!」


「危ないメイデン!!」


 二人をやられて逆上したのか、少女の恰好をした少年悪魔がメイデンに斬りかかった。

 

「ッ!! 貴方、急に強くなったんじゃないかしら?」


 それをギリギリで受け止めたメイデンだが、明らかにあの少年悪魔はさっきまでよりも強くなっていた。

 現に今、彼はメイデンと同等の力で鍔迫り合いをしている。

 だがどうして急に……。


「当然だよ。ボクの嫉妬の権能は相手の力をコピーすること。だからどんな相手でもボクには絶対に勝てないんだ」


 なんだって?

 確かに能力を全く同じにされたら真正面から打ち勝つのは無理だ。

 クソッ、他の悪魔もそうだったがコイツらは本当に厄介な能力を持っているな……。


「そう……。確かにそれだと私に勝ち目はないでしょうね。でもそれって……コレにも使えるのかしら?」


「なッ!?」


 メイデンの瞳が紅く光る。どうやら彼に魅了を使用したようだ。

 でもどうして彼に通ったのか。

 彼の能力なら魅了に対する耐性だってあるはずだが……。


「な、なんで……お前は戦士のはずなのに……」


「確かに戦士よ。けど同時に吸血鬼でもあるの。貴方、相手の持つ能力の一つしかコピーできないのでしょう?」


「どうしてそれを……!!」


「簡単よ。私の全てをコピーしたのなら、それこそ魅了で私を無力化すればいいだけだもの。こんな真正面から打ち合わずにね。……でも貴方はそれをしなかった。いや出来なかったのね」


 ……彼女の言う通りか。

 さっき俺が魅了を受けた時に実感したことだが、戦闘においては体が動かなくなるだけで圧倒的に不利になる。

 そんな勝利が確定するような方法を使わない時点でおかしかったんだ。


「じゃあね、可愛い悪魔さん」


「ぐぁ゛ッッ」


 メイデンは一切の抵抗が出来ない状態の彼を斬り刻んでいく。

 この戦いの前に彼女が言っていたが、悪魔は心臓や脳などの要となる部分が損傷しない限り何度でも再生するらしい。

 だからこそ、これだけ念入りに斬り刻む必要があるのだろう。


 さて、これで上級悪魔の数は残り四人だな。

 こちらの手もある程度出したし、これからどう戦っていこうか。

 と、そう考えていたところ……。


「貴様は……一体何者なのだ」


 一人の悪魔がそう言いながらゆっくりと近づいてきた。

 その後に続いて他の三人も飛んでくる。恐らくは彼らが悪魔の軍勢のトップなんだろうな。


「何者……と言われても、見た通りのハイエルフだよ」


 ここは少しでも情報を引き出したい所だし、少し彼と話してみることにしよう。


「ハイエルフだと? そんな訳があるものか……!! ハイエルフごときがどうしてこれだけの魔法を使える……! どうして悪魔を前にしてこれほどまでに戦える……!!」


「それは俺が……」


 プレイヤーだから……とは言った所で意味が無いだろうし、勇者であることも軽率に知らせるのは不味いか。

 なら、これしかない。


「……魔王殺しだからだ」


「なに? 魔王殺し……だと? 貴様があの魔王殺しだと言うのか……?」


 目の前の悪魔は目に見えて動揺していた。

 どうやら俺の魔王殺しとしての名は悪魔にも伝わっていたらしい。

 

「そうか……納得だ。あの化け物じみた強さも、その仲間があれだけの実力を持っているのも、貴様が魔王殺しであると言うのなら納得するしかあるまいよ」


「納得してくれたなら良かった。ならそのついでに、このまま抵抗せずに倒されて欲しいんだが」


 滅茶苦茶な要求だけど、向こうが魔王殺しの強さを知っていればワンチャンある……と思いたい。


「ふっ、とんでもない要求だね。流石は魔王殺しと言ったところか。……だが、それは出来ない」


 まあそうだよな。

 素直に受け入れたらそれこそ驚きだ。


「私たちにもプライドがある。それに今なお、こちらの方が数は多いのだ。故に……勝利を手にするのは我々悪魔だよ」


「そうか。なら……無理にでも倒すしかないみたいだな」


 俺がそう言った瞬間、最初に攻撃を仕掛けてきた二人の悪魔が飛び掛かって来たのだった。

本作をお読みいただき誠にありがとうございます!

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