74 悪魔会議
アヴァロンヘイムの木内部、悪魔たちの住まう悪魔城にて。
円卓を囲む七人の上級悪魔がいた。
「首尾はどうかね、アスモデウス」
「問題は無いわよぉ。何人か残してきたから、近い内に恐怖も伝染して大惨事になるんじゃないかしらねぇ♡」
一人の上級悪魔の問いに対してアスモデウスがそう答える。
恍惚としたその表情はまるでたった今一発ヤったのかと言った様子だが、彼女にとっては人間をいたぶることは性行為にも似た快楽をもたらすものであった。
故に、このような状態となることも何らおかしいことでは無いのである。
「そうは言ってもよルシファー。わざわざ人間なんかに宣戦布告なんかしなくとも、いきなり攻め込んで全部焼き尽くすんじゃ駄目だったのか? 俺はなぁ、とにかく人を殺してえんだ。こんなまどろっこしいことしてらんねえよ」
「確かに、その方が手早く済むのは事実だね。けどねマモン……せっかく忌まわしい人族を滅ぼすんだから、出来る限り楽しみたいじゃないか」
ルシファーはニヤリと笑いながらそう言う。
「そう言う事か! 出来るだけ恐怖に怯えさせ、苦痛にゆがませた方が楽しいもんなぁ!!」
その返答にマモンも賛成のようで、楽し気な声でそう叫ぶのだった。
「それは良いんだけど、この会議まだ終わらないの……? 私、もう眠たいんだけど……」
そんな二人とは裏腹に、一人の女性悪魔が退屈そうな顔をしたまま眠そうな声でそう言った。
「ベルフェゴールの言う通りだぜ。こんな会議をしたところでオレたちが優位であることに変わりはねえし、腹が膨れる訳でもねえ。こんなことしてるくらいなら外で人間を喰って来たいんところなんだが?」
そしてベルフェゴールに同意するように、男勝りな口調の女性悪魔もそう言って会議の意味を問うのだった。
「ずるいよベルゼブブ、ボクだって人間を食べたいのに……!」
さらには少女の恰好をした少年悪魔もそう言って会話に入って来た。
関節や筋肉量の多い部分を的確に隠すその服装からして、彼が本気で女装をしているのは確実と言えるだろう。
「おう、レヴィアタンもそう思うだろ? だからよ、このまま二人で一緒に……」
「はははっ、うるさいですよ三人共」
その時だった。一人の男悪魔が満面の笑みのままそう言い、その瞬間に円卓の空気が変わったのである。
「わ、わりぃなサタン……別に会議の邪魔するつもりじゃ無かったんだ。ちっとばかし退屈だっただけでよぉ」
「……わかればよいのです。ではアスモデウス、報告を続けてください」
サタンは重苦しい雰囲気を消し、再び円卓の空気が元に戻る。
そして、彼の言葉通りアスモデウスが報告の続きを行い始めた。
「理解した。それでは次の標的はそうだな……。イダロン帝国……は既に崩壊している……か。ではさらに侵攻を進め、エルトリア王国を落とすとしよう」
最終的に出されたルシファーのその案に他の悪魔たちも賛同し、こうして悪魔たちの会議は終了したのだった。
――――――
「……来たか」
王国の遥か遠くから大量の悪魔が迫ってきていた。
見たところ低級悪魔と中級悪魔が混ざっているようだが、正直この辺りはどうでもよかった。
本当にヤバイのはあのアスモデウスとかいう奴と、そいつと同格……或いはそれ以上の存在と言える悪魔だろう。
このまま進めば、きっとあと数十分もしない内に国境に辿り着くだろう。
そうなればそこに駐屯している王国の騎士たちじゃ勝ち目は無い。間違いなく全滅だ。
そしてそこから国王のいるこの街までの間にある小規模な村や町もまた、奴らに蹂躙されることになる。
そうさせないためにも、こちらから迎え撃ってやる。
「ルキオラ、メイデン……改めて感謝するよ。危険な戦いになるだろうに、俺と一緒に戦うことを選んでくれてありがとう」
「ううん、いいの。あたしもステラのために戦いたいし、この世界が悪魔なんかに滅茶苦茶にされちゃうのも嫌だから」
「私も、悪魔程度の存在があれほど好き勝手やってるのは少し気分が良くないのよね。正真正銘の本当の魔族がどういう物なのか、見せてあげないと」
なんだかメイデンが怖いことを言っているが、頼もしいことに変わりは無かった。
二人共やる気は充分のようだし、俺も負けてはいられないな。
「ここで俺たちが負ければ、王国どころかこの世界が危うい。それでも、俺たちは魔王も、終焉の魔物も倒したんだ。悪魔くらいなんてことないさ。それじゃあ、行こうか」
俺とメイデンはフライの魔法を発動し、ルキオラは鎧の飛行機能を起動した。
俺たちの飛行能力であれば、この程度の距離ならあっという間だ。ものの十数秒で悪魔の軍勢の元にまでたどり着けるだろう。
そして初っ端、無抵抗な所にデカイ一撃をお見舞いできる。
レベルカンストプレイヤーによる特大の奇襲を、とくと味わってもらおうじゃないか。
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