33 ビキニアーマーのドスケベ痴女戦士
覚悟を決めた俺はアイシャたちの元へと向かって走り出した。
「アイシャ! ルーク! 俺が奴を引き受けるから一度下がってくれ!」
「おう、わかっ……たぁ!?」
「ス、ステラ!? その姿は一体!?」
二人のその反応は至極当然のものだった。
死人が出そうな程のデカパイや肉付きのいい太ももをばるんぶるんむちむちっと揺らしながら剣を振るう俺の姿は、さぞ滑稽に見えたことだろう。
「ぶばっ……」
「ルーク!?」
それどころかルークは鼻血を出して倒れてしまった。
刺激が……強かったか。
そりゃそうだな。乳も、腹も、太ももも、尻も、今の俺はドスケベな全身を余すことなく露出しているんだ。
それこそがビキニアーマーの役目であり、恐ろしさなのだから仕方ない。
そんだけのエロに一斉に襲われてしまえば、キャパを超えてしまうのも致し方の無いことなのだ。
こうなってくるともはや恥ずかしさよりも申し訳なさが出てくるな……。
間違いなく彼に良くない影響を与えてしまったと確信できる。
「まさか、これも幻惑魔法の効果なの……?」
と、ここで彼女は何か勘違いをし始めたのだった。
そうか。普通に考えてこんなふざけた格好で前線に出てくるやつなんかいる訳無いもんな。
だが、それならそれで好都合だ。
「……そうだ。アイツは幻惑魔法を使って俺の姿を別のものに見せている。さあ、早くルークを連れて後方へ」
「でも貴方は魔術師では……いえ、わかったわ。後は任せるわね」
そう言ってアイシャはルークを抱えて後方へと戻って行く。
「おい、てめえ! なんなんだその恰好はぁ!! この状況でふざけてやがんのか!?」
「違うわ、これは奴の幻惑魔法よ! きっと私たちを混乱させるためにこんなことをしているの。だからここでパニックになったら奴の思うつぼよ!」
案の定彼からの怒号が飛んできたが、アイシャが良い感じに言いくるめてくれている。
「後はステラがどうにかしてくれる……だから私たちは巻き込まれないように離れるの。ほら、貴方も!」
「また、またお前が全て持っていくってのか!!」
そう叫びながらも彼はアイシャに引っ張られていった。
さて……これで心置きなく戦えるな。
「すまんな、俺のこの姿……あんたのせいにしてしまったよ。お詫びに、せめて苦しまずに殺してやる」
いくら近接戦闘が出来るようになったとは言え、マナウォリアーのスキル以外に魔法系で使える近接戦闘用のスキルは無い。
だが、相手が幻惑竜程度であればそれで十分だった。
「魔斬刃!」
魔法の刃を飛ばして対象に物理的ダメージを与えるスキルである魔斬刃。これを幻惑竜へと向けて発動させた。
このスキルはダメージ倍率こそ低いもののクールタイムが無く、マナウォリアーとして戦う時には重宝していた。
「グガァァッ……!?」
突然放たれた飛ぶ魔法の斬撃に対応出来なかった幻惑竜は、首を豆腐のようにスパッと切断されて絶命した。
たわいもないな。たわわはあるけど。……は?
「ふぅ、終わったか……っと、忘れない内に解除しないと」
忘れずにモードチェンジを解除する。アイシャたちには奴の幻惑魔法によってこの姿が見えていることになっているのだ。
このままでは本当にこの世界にビキニアーマーのドスケベ痴女戦士が爆誕することになってしまう。
「ステラ! ……無事で、いいのよね?」
アイシャが駆け寄って来る。どうやらルークはまだ気を失ったままのようだ。
「ああ、そっちこそ怪我は無いか」
「私たちは何ともないわ。貴方のおかげでね」
「あぁクソッ! 納得がいかねえ! なんでまたてめえに手柄を取られなきゃいけねえんだ!」
「でもあのまま戦っていたら、私たちはきっと取り返しがつかない負傷をすることになっていたわ。いや、ステラがいなければそもそも生きて帰れたかすら……」
「チッ……」
「ちょっと!」
彼は舌打ちをしてそっぽを向いた後、そのまま来た道を戻り始めた。
「俺はもう戻る。先に進むにしろ戻るにしろ、俺はもう関係ねえからな」
「待って、戻るなら一緒に……」
アイシャのその言葉に反応することなく、彼は行ってしまった。
仕方ない、彼のことは一旦おいておいて俺たちも撤退の準備をするべきだろう。
「とりあえず、俺たちも戻ろうか。またいつ襲われるかもわからないんだ」
「……そうね。皆、それでいいわね?」
魔王殺しの提案ともなれば、この場の誰も異を唱えることは無かった。
その後は目立ったトラブルも無く、こうして初めてのダンジョン探索は中々に波乱に満ちたものになったのだった。
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