28 ダンジョンの探索クエスト
王国に帰って来てから気付けばもう十日程が経過していた。
あれからずっとルーシオについて色々と情報を集めてはいたものの、残念ながらこれと言った手がかりは無かった。
「今日もお疲れさまね」
そろそろ日が暮れるため泊っている宿の部屋に戻ると……メイデンの声が聞こえてきた。
アーロンは彼女の部屋も手配してくれたはずなのだが、どういう訳か彼女はずっと俺の部屋に入り浸っているのだ。
「自分の部屋に戻らないのか?」
「だって未知の異世界に召喚されたうえに、部屋でひとりぼっちだなんて……心細いじゃない?」
「それ、今までスラム街の頂点にいた者が言うセリフかよ」
この世界に召喚されてからは見知った者もおらず、彼女はずっと一人だった。それは事実だ。
だが、そんなことなど関係なく彼女はスラム街での戦いの生活を謳歌していた。
そのため、今更そんなラブコメ染みたことを言ったところでキュンと来たりなんかしない。
「ふふっ残念。もう少し焦ったりしてくれるかと思ったのだけれど」
「生憎と、だんだん慣れてきたからな」
「そうなの? ふーん、つまらないわね。それなら……よいしょ」
「メイデン?」
言葉だけではもう勝てないことを理解したのか、彼女は実力行使に出たようだった。
簡単に言えば、薄着のまま俺の膝の上に乗って来たのである。
チョコンと座っているその姿はとても可愛らしく、それでいて見た目の年齢には不相応な程の色気があった。
だが、見た目に騙されるな。コイツに隙を見せたら終わりだ。
「いくら慣れてきたと言っても、これは流石に刺激が強いでしょう?」
メイデンは俺の大きい胸に顔をすりすりと擦りつけてくる。
そのしぐさが可愛いのなんの。
いや、待て待て落ち着け。耐えろ俺。
「おいおい、まさか。俺の中身はそれなりの年齢だぞ。君みたいな少女になんか興味は無いよ」
「そう……」
メイデンはつまらなそうな様子で俺の膝から降りた。
よかった。これ以上は不味かった。
……いや、俺はロリコンでは無いけどね?
結局、そのあとも彼女が自分の部屋に戻ることは無く、今日も彼女と共に寝ることになってしまったのだった。
そして次の日。
明朝にアーロンが俺の部屋を訪ねてきた。
なんでも、ダンジョンの探索クエストの人員が足りていないらしいのだ。
ダンジョンはネワオンにもあった概念で、入るたびにその構造や入手アイテム、出現する敵が変わるものだった。
ただこの世界のダンジョンは俺の知るそれとは違って構造や敵などのランダム性は無いらしい。
んで、そのダンジョンを攻略して手に入るアイテムや装備は強力なものが多いため、国家事業として定期的にクエストを出しているのだと言う。
またこの世界のダンジョンは内部の魔物をある程度間引きしないと外に漏れ出て来てしまうらしく、それらを狩ることで初心者冒険者の稼ぎを維持したり練度を上げさせたりしているようだった。
要はダンジョンの探索クエストは良いことずくめと言う事だ。
しかし、今は少し状況が違った。
と言うのも、魔王の復活によって魔物の活動が活発になっているらしく、多くの冒険者がそれらの魔物の討伐に駆り出されているらしいのだ。
その結果、ダンジョン内の魔物の間引きにまで手が回らず今に至ると。
「お願いしますステラさん! いつもいつも面倒事を押し付けているみたいで申し訳ないんですけど、ダンジョンの探索クエストに参加していただけませんか!!」
「良いですよ。お受けします」
「えっ、良いんですか!? 本当の本当に!?」
「はい。これに関しては私も無関係では無いですし」
正直なところ、これに関しては見て見ぬふりは出来なかった。
ダンジョンから魔物が溢れれば人の往来は減り、王国での産業や商売にもダメージが入ってしまう。
そうなれば待っているのは国の治安の悪化。そして最悪の場合、イダロン帝国のように……。
いや、最悪な予想はやめておこう。
そうならないために、今から対策をする必要があるのだ。
「それなら私も同行するわね。同じパーティの仲間だもの」
「助かるよ、メイデン」
「それでは、早速クエストについてお伝えしますね!」
アーロンはカバンに入れていたクエスト依頼書を取り出して説明を始めた。
……さては、最初から何としてでも俺たちにダンジョン探索のクエストを受けさせる気だったな?
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