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24 召喚された少女

「ま、待て! 俺は別に君と戦うつもりは!」


「あら、貴方にその気は無くとも私にはあるのよ?」


 少女はどこに隠し持っていたのやら、剣を取り出すやいなや俺へと斬りかかってきた。

 いや、彼女もプレイヤーだと言うのならきっとアイテムボックスから取り出したんだろう。


「うぉっ、危ない!?」


 その太刀筋は俺のような素人から見ても全く訓練を積んでいない者のそれであるとわかる程に、未熟そのものだった……が、どういう訳か攻撃自体は滅茶苦茶な切れ味となっていた。

 

 ……間違いなく、彼女が召喚された勇者だ。

 あれは恐らくステータスによる補正が乗っている。

 俺は魔法系だから分かりにくかったが、近接系の職業だとここまで分かりやすいものなんだな。


 型だとか、太刀筋だとか、そんなことは関係ないんだ。

 攻撃を行えばステータスと武器の持つ攻撃力が相応の結果を呼び出してくれる。

 世界側を書き換えているとでも言えば良いのか?

 そんな超常現象のようなことが今、目の前で起こっていた。


「ステラ!」


「貴方とは今戦っていないの。大人しくしていて頂戴?」


「ぐぅっ……! この程度!」

 

 ルーシオが俺と少女の間に割り込み、彼女の剣を片手で受け止めた。

 そしてそのままもう片方の手で彼女へと拳を叩きこみ、魔王の時と同じように爆発させた。


「ルーシオ!?」


「私なら大丈夫です。それよりも……」


「けほっ、今のは中々効いたわ。貴方、随分と強いみたいね……けど、今は邪魔しないで頂戴?」


 見たところ少女にはかなりのダメージが入っていた。

 しかしそれでもまだ彼女は戦う気のようだ。

 それどころか今ので本気にさせてしまったらしい。目つきが怖すぎる。


「ねえ、ステラ。避けてばかりではつまらないでしょう? 貴方も攻撃したらどうかしら」


「だから、俺は戦うために来たわけでは……!」


 駄目だ、このままだと話も出来ない。

 仕方がない。怪我しても恨まないでくれよ……。


「ルーシオは離れていてくれ! ミニメテオ!!」


「ッ!!」


 ルーシオを範囲外に退避させた後、第七等級魔法であるミニメテオを放ち少女の動きを止める。


「この程度の魔法、きちんと見れば避けられ……んなっ!?」


「悪いけど、本命はこっちだ」


 そして無防備になった一瞬の内に、本命の攻撃を叩きこむ!


「エクストラマジック、魔龍の業火!!」


 魔法の発動時にエクストラマジックというものを同時発動することで、通常よりも多くのMPを消費してより高威力な魔法を放つことができる。

 これを使えば瞬間的なダメージを大幅に増やすことができるのだ。


 その反面消費するMPは数倍に膨れ上がってしまうため、第八等級魔法ともなればその消費MPは五桁に到達するだろう。

 当然そうなれば他の魔法を放つためのMP管理が難しくなり、仮に外そうものならあっという間に窮地に陥ってしまうのは確実と言える。


 そんな諸刃の剣だが、彼女がプレイヤーである以上は出し惜しみなど出来ない。

 これで確実に決めるくらいの気持ちでなければ駄目だ。


「ぐぅっ……ぁぁっ!?」


 流石に最高クラスの武器で放たれた最高クラスの魔法を受ければ、高ステータスのプレイヤーと言えどただでは済まないようだった。


「はぁ……はぁ……」


「なあ、この辺りで終わりにしないか?」


 倒れている少女の元へ行き、そう言う。

 このまま戦えばきっと俺は彼女を殺してしまうだろう。

 だがそれは俺としても本望では無い。


「フフ……負けたわ。完全に、私の負け。煮るなり焼くなり好きにしなさい?」


「いや、だからそう言うつもりじゃ……」


「フフッ、冗談よ」


 少女はそう言いながら笑った。

 そして、不覚にも可愛いと思ってしまった。

 

 いや、俺は断じてロリコンでは無いが?


「でもそうね……全然敵わなかった。やっぱり今の私のレベルじゃ全然届かないのね」


「今の……って、あの感じなら君もレベルカンストじゃないのか?」


「私のレベルはまだ360よ。だけど、それを抜きにしてもプレイヤースキルの方で全然敵わなかったわ」


 あ、レベルってそう言う方のレベルか。

 まあ確かに彼女の言う通り、間合いの取り方を始めとした近接戦闘を行う者としての立ち回りが相当雑だったとは思う。

 俺のミニメテオでの陽動にも奇麗に引っかかってたし、あまりPVPの経験が無いのだろうか。


 と言っても俺も魔法主体だから何とかなっているだけで、実際の近接戦闘に関する知識なんてまるで無い。

 と言うかそもそも……。


「そもそも、どうして君は俺に戦いなんて挑んできたんだ?」


 これが重要だ。

 いきなり攻撃してきたのは彼女の方なんだ。何かしらの理由があるはず。

 

「そんなの簡単よ。ネワオンでPVPをやっていて、貴方に勝つことを目指さないなんてことあるかしら?」


「それは……そうか」


 これは自慢だが、俺はネワオン内におけるPVPランキングで何度も1位を取っているし、そうでない時も基本的に常に上位にいた。

 ネワオンでPVPをやっているのなら俺の名を知らない者はいない……と、思ってもいいくらいの活躍だよな?


「つまり、君はこの世界においてもPVPで俺に勝とうと、そう思って攻撃してきた訳なんだな?」


「ええ、その通り。強そうなハイエルフだからまさかとは思ったのだけど、あの騎士さんが貴方の名前を言ったから確信をもって戦いを挑んだわ」


「……」


 要約すると、結局こうなったのは全部俺のせいだった訳だ。

本作をお読みいただき誠にありがとうございます!

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