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18 魔王ルーンオメガ

『おのれ、我にこのような傷を与えるとは……万死に値する! いや、もう死んでいるのだったな』


 爆炎が晴れると、魔王が全身から青い血を噴き出している姿が見えた。

 そんなことはこの際どうだっていい。


「魔王ルーンオメガ、お前はここで俺が倒す」


『ほう? この魔王に、勝てるとでも?』


「勝てるさ」


『良いだろう、やってみるがいい』


 そう言うと魔王は無防備に俺の攻撃を待っていた。


「手加減はしないからな……」


 相手は魔王だ。

 最高の一撃を叩きこむためにも、俺はアイテムボックスから愛用の武器を取り出した。

 その名はエンシェントロッド。ゲーム内最高峰の魔法攻撃力を持ち、魔法の持つ属性値を数倍に跳ね上げる追加効果を持っている。


 高いステータスは大事だが、結局は武器による攻撃力が一番重要なのだ。

 その点、この武器は間違いなくゲーム内最強の一角であった。


「ロストボンバー!」


 まず俺が使った魔法は第六等級魔法のロストボンバー。

 と言うのも、この場で高火力の範囲魔法を使えば街が巻き込まれるから、まずはコイツを街に影響の出ない場所まで吹き飛ばす必要があった。

 

『何ッ!?』 


 しかし、どういう訳か魔王は吹き飛ぶどころの騒ぎでは無いようだった。


「どうした? 魔王にとってこの程度の魔法、大したことは無いだろう?」


 第四等級魔法であるフライを使い、魔王の元まで飛んで行った俺は開口一番奴を煽った。

 標的を俺に定めてくれれば街への被害を減らせるからな。


『貴様、この魔王を愚弄するか!! ただ驚いたまでのことよ。たかがハイエルフごときが第六等級魔法を使えたことがなァ!』


「どういう意味だ?」


 ……妙な事を言うなこの魔王は。 

 魔王ルーンオメガは仮にもストーリーボスだ。この世界がネワオンのストーリーと地続きであるのなら、プレイヤーに関する記憶があったりするものなんじゃないのか?

 

『とぼけるのか? 貴様らのような矮小な存在に、高等級の魔法など使えるはずが無いのだ。我々魔族のような、魔法に愛されし存在でも無ければ第三等級がせいぜいだろう』


「……?」


 おかしいな。

 ゲームでの設定と一致しない。

 もしやこの世界は厳密にはネワオンそのままの世界では無いってことなのか……?


『だが! 貴様の底は見えたな! 第六等級魔法を使えることは誉めてやろう。だが所詮それまで。我を倒すのには不十分だ』


「何を言っているのかはわからないが、それは間違っているぞ。俺は、第八等級魔法も使える」


『何だと? ガハハッ、この期に及んでハッタリとは、やはり相当追い詰められているように見える』


 ハッタリでは無いんだが。

 だがまあ、こうなりゃ見てもらうしかないか。

 どうせコイツを倒すのは変わらない訳だし、出し惜しみをする必要も無い。


「ハッタリだと思うならその目で見てくれ。……デス・オブ・アビス」


 武器を魔王に向けて、第八等級魔法である強力な闇属性魔法を発動させた。

 

『アグァッ……!? き、貴様……これは、第八等級の……』


 思ったよりも効いているらしく、魔王は苦しみながら声を絞り出していた。


『ありえん、ありえんぞ……! 魔族でも無い貴様が、第八等級魔法など、使えるはずが……!』


 デス・オブ・アビスによる真っ暗な靄に包まれたまま、そこで魔王は息絶えたようだった。

 

「……終わったのか?」


 あまりにも呆気なさすぎる。

 そう、呆気なさすぎるのだ。

 ゲーム内で戦った時はもっと死闘と言うか、戦っていて楽しい感じの強敵だったはずだ。


 だがコイツはどうだ?

 ルキオラが命を懸けて与えてくれたダメージを加味しても、第六第八等級魔法の二発だけでこのザマとは……魔王の名が聞いてあきれるレベルだ。


 ……いや、これで良いんだ。

 被害を最小限に倒せたのならそれが一番良いに決まっている。

 もっと戦いを楽しみたかったなどと、そんな願望が許されるのはそれこそゲームの中でだけなんだ。

 この世界では死んだら終わり。壊れた街は勝手には戻らないし、死んだ人は蘇らない。


「はぁ……終わったよ、ルキオラ」


 彼女に届くかはわからないが、俺は無意識の内に彼女の名を呟いていた。


『なに、終わった気でいるんだ……?』


「ッ!?」


 背後から聞こえた声。

 それは紛れもなく魔王のもので……。


「ぐぁッ……!」


 気付けば俺は奴の攻撃により大きく吹き飛ばされていたのだった。

本作をお読みいただき誠にありがとうございます!

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