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14 アーロンの正体

 まず初めにルキオラに連れられてやってきたのは広場だった。

 いや、正確には広場から繋がる商店街だな。


「王国に来た人がまず初めに行くのがここ、エルトリア王国を象徴する商店街『エルトリアロード』だよ」


 ルキオラの紹介通り、この商店街には物凄く多くの人々が行き交っていた。

 それだけ品揃えが良いのだろう。現に、ゲーム内では見られなかったようなものも結構見受けられる。


「装備品に、道具に、宝石まで。変わったものだと遠方の国の食材なんかも取り扱っているの。この国に来ればありとあらゆる物が揃うって言う人もいるくらいなんだ」


「ありとあらゆる物……それは凄いね」


「興味があるなら後で一緒に回ろう? 今はもう一つ、絶対におすすめしたいものがあるの。こっちに来て……きっとびっくりするよ」


 楽しそうに走るルキオラについて行くと、そこには料理店があった。


「ここだよ。ここエルトリア王国にはありとあらゆる物ものが揃う……それは食べ物も例外ではないから、いろんな地域の料理が揃っているんだよ」


「これは……」


 彼女の言う通り、料理店の看板には滅茶苦茶な種類の料理が描かれていた。中には当然のように米料理もある。

 そのどれもがゲーム内で料理人系の職業になると作れるものであるため、きっとその影響だろうな。

 しかし、微妙に違うものも混じっていた。

 恐らくゲーム内との時代の違いによって食事にも変化が生まれているのだろう。


 とは言えだ。

 このメニュー量には素直に脱帽するほかない。

 料理店としてこれだけのメニューを揃えるのはプレイヤーでも中々にキツイものがあるのだ。

 なにしろアジア料理と言っても中国料理とか日本料理とかその他諸々でクラスが別れているくらいなんだ。


 これだけ色々な地域の料理を作れるとなると、相当なレベルの料理人と言うことになる。


「驚いたでしょ?」


「うん、まさかこれだけの種類を取り扱っているなんてね」


「だよね。初めて見た時はあたしもびっくりしたもん。……えっと、君はお昼はまだ食べてない? もしこれからだったら、好きな物選んでいいよ。あたしが奢るから!」


「それは流石に……」


 駄目だろうそれは。

 遥かに年下の少女にたかるようで、忍びないと言うか何と言うか……。


「助けてくれたお礼だから、気にしないで。それにあたし、こう見えても冒険者歴はそれなりにあるから、お金もそれなりに持ってるの!」


 そう言いながらルキオラはほとんど無いに等しい力こぶを作って見せた。

 これだけ細身な彼女が冒険者と言うのは信じられないが、きっと魔術師などの後衛職なのだろう。


「……それじゃあ、お言葉に甘えようかな」


 せっかく彼女がそう言ってくれたんだ。ここはご馳走になるとしよう。



―――――― 



「美味しかったよ、ありがとう」


「えへへ、どういたしまして。えっと……次はどこを案内しようかな。ショッピングをしたいならエルトリアロードに戻るのもいいけど……」


「それなんだけど……」


 アーロンと待ち合わせをしていることをルキオラに伝えた。

 昼頃には迎えに来ると言っていたため、そろそろ広場に行かなければならないのだ。

 

「それなら、時間が出来た時にまた案内するね」


「ああ、楽しみにしてるよ」


 こうしてルキオラと一旦別れた俺は広場へと向かった。

 お礼と言うのならご飯もおごってもらったし、別にこれで終わってもよかったのだが……どうやら彼女はまだ俺に見せたいものがあるようだった。

 

「アーロンは……まだか」

 

 どうやらまだ来ていないらしく、それらしい姿は広場には無かった。


「ステラさーん!」


 と、そう思ったのもつかの間。アーロンが遠くから手を振りながら走り寄って来るのが見えた。


「すみません、報告が長引いてしまいまして……」


「気にしないでください。その間、この街を見て回ってましたから」


 アーロンにルキオラとのことを話す。


「そうだったのですか。案内は僕がしたかったのですが……でも過ぎたことは仕方ないですよね。それよりも、王国に来てもらった理由をお話したいので来てもらえますか」


「はい、構いませんよ」


 断る理由も無いのでアーロンについて行く。

 そして彼女に連れられ、たどり着いた先は……見覚えのある建物だった。


「ようこそ、エルトリア王国の冒険者組合へ」


 そう、冒険者組合だ。

 エルトリア王国はゲーム内でもそれなりにお世話になる場所で、当然そこの冒険者組合にも結構な回数顔を出すことになる。

 なので外観も結構鮮明に記憶に残っている訳だな。 


「アーロンさん。何故、冒険者組合に……?」


 しかし重要なのはそこでは無くて、どうしてここへ連れてきたのか……だ。


「ああ、そうでした。言い忘れていましたね」


 そう言うとアーロンは懐から板のような何かを取り出して俺に見せた。

 それは冒険者登録証に似たもので、それでいて決定的に違う要素がある。

 その板は冒険者組合の運営側NPCが持っているはずのものなのだ。


「では改めて自己紹介を……。魔物学者兼、エルトリア王国冒険者組合長のアーロンです。この度はよくぞ我が冒険者組合へとお越しくださいました」


 あぁ……一体この人は、どれだけの衝撃的事実を突きつけて来れば気が済むんだ?

本作をお読みいただき誠にありがとうございます!

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