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灰に踊る姫君ードンス・シュール・レ・サンドレ  作者: ミアヒェナー=エレント
第2章ー魔女と革命の足音
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良き知らせーユンヌ・アノンス

ー「お前が舞踏会に? 冗談じゃない。おまえみたいな見ずぼらしい娘がいたら王子様に失礼だよ!」

継母はサンドリヨンを馬鹿にして笑います。

「第一、ドレスだって持ってないじゃないか」

「そうよ!王子様と結ばれるのは私なんだから!」

継母と意地悪な姉たちにはサンドリヨンを舞踏会へ行かせる気はありませんでした。

彼女は悲しみにくれますが、どうしようもありません。

その日から彼女は舞踏会に着ていく服を妖精に願うようになります。

「ーお願いします。どうか私に美しいドレスを下さい」


ー『美麗の国物語』サンドリヨンより

朝のロゼイユ市街はゆっくりと目覚め、人通りが多くなってきていた。

サン=ジュヌヴィと比べれば賑やかとは言い難いが、郊外に住む大貴族の従者や王宮御用達の商人なんかが仕入れに来ているのが目立つ。

かく言う俺も、ロワール家の「従者」として食材の仕入れに来ていた。

「今日買うのは......キャベツ、ニンジン...それからバターももう無かったな」

買い物のメモを見返していると、前方から馬に乗った男と数名の兵士が近づいてくるのが見えた。

「っ!?近衛兵?なんで急に!?」

「また、「共和派」のことかい」

「いや、ただ巡回してるだけじゃないのか」

平和な市場に突然現れた近衛兵の姿に、市民たちに動揺が広がる。

(これは買い物どころじゃないかもな)


「......こほん。王宮近衛兵隊長、ジョセフ=ロユーテである。今回は王宮からの伝令で来た。安心されよ」

王宮から市民へ伝令を行うことは滅多にない。俺自身一度も聞いたことは無かった。それだけに今回の件は極めて重要なことなのだろう。

「アントワーヌ王太子殿下の勅書を読み上げる。しかと拝聴されよ!」

彼は白馬から降りると、王宮の紋章で封をされた羊皮紙を広げて読み上げた。

周りの市民たちが固唾をのんでそれを見守る。

『私、アントワーヌ=シャンパーニュ=ベル・ド・ロアゾンはサンドニージュ王太子の名において来週、王宮舞踏会を開く。そこで皆に喜ばしい重大な発表を行いたい。此度はサンドニージュ国民であれば身分に関わりなく招待することとし...』

途中まで言い終えたところで、市民の間にざわめきが起こる。

「身分に関わりなく? それってつまり、私達も行けるの?」

「そんなことあるわけ...」

宮廷舞踏会は何度も行われてきたが、こうして布告がされることなど初めてのことだ。

様々な声を打ち消す様に隊長は続ける。

『来る際は全国の家に送付した、招待状を持参することを忘れぬように。このことが我が民にとっての幸となる事を願っている』

書状を読み終えると、彼は以上だ、とだけ言って馬に乗り配下の者たちと共に走り去って行った。

********************************


「ほ、本当に来てる......」

興奮して屋敷に戻った俺は、早朝に届いた数通の手紙から王宮の紋章が入った手紙を見つけた。

つい開いて中を見ようとしたが、なんとか思いとどめ旦那様へ報告しに行く。

俺が見たって仕方がない。こういうのは旦那様に任せることだ。


「だ、旦那様。今よろしいでしょうか?」

「...何かね?家の用事は全て終わったのか」

「王宮から、手紙が来ております」

俺は興奮気味に伝えた。

「なっ!? これは...... 宮廷舞踏会だと? っ、アンドレ!ローラン!」

彼は飲みかけのコーヒーを吹き出しそうになりながらも恐る恐る手紙を開き、それが舞踏会の招待状であることを知ると、大声で義兄たちを呼んだ。

早朝からいつも起きているローランの方が1分と待たずに駆けつけてきた。

「はい、父上。お呼びですか」

「あぁ、これを見ろ!」

「舞踏会の招待状?どうしてこんなものが...... 『身分に関わりなく...』?つまり......」

一目見てその意味が分かったようで、ローランの表情が驚きから暗い笑みへと変わる。

「そうだ。宮廷貴族でない我々も参加できる!あぁ......ようやく、今こそ我がポンパドゥール家の栄華を取り戻す時だ。分かっているだろうな?」

旦那様はと言えば、彼よりも一層喜びに満たされているようだった。

そんなにも舞踏会に憧れていたのだろうか?そりゃあ、俺だって行ってみたかったけど......

「んー、何~お父様?」

かなり遅れてアンドレもやって来たようだ。

「遅いぞ、お前は! ったく、宮廷舞踏会の招待状が届いたんだ」

ローランがイラついた表情で叱責するが、彼は少しも気にしていないようだ。

「舞踏会~?そんなの今までこなかったじゃん。ていうか、それ俺に関係ある?」

寝癖がついたボサボサの髪をかきむしり、彼は全く関心なさそうに答える。

「もちろんだ。これは嫁を見つける絶好の機会だなのだからな。お前たちが舞踏会で宮廷貴族の令嬢を妻に迎え入れれば我が家も安泰となる」

それを聞いてもアンドレはよく理解できていなかった。

「別に俺結婚とかだるいし......」

「有力な貴族と結婚すれば金に困らなくなるぞ?」

ほくそ笑みながらいうローランの発言に顔色が変わる。

「今すぐ舞踏会へ行くぞ!」

「気が早いな、舞踏会は来週だ」


俺は全く蚊帳の外で三人の会話をただ黙って聞いている他ないのだった。

所詮俺には関係のない話だ。俺にも資格はあるはずだが、彼らが許すはずもない。

それでも、王宮には憧れがあった。あそこにいけば何かが変わる気がするなんて。

(そういえば、あの男の子は王宮にいるのだろうか)

俺はふと、この間あった「シェルメール」と名乗った少年を思い出していた。彼は恐らく宮廷貴族なのだろう。態度は横暴だが、俺には興味を持ってくれていた。もし会えたら友達になれるかも、それも高貴な友達に。

「...ンドレ、サンドレ!聞いてるのか!?」

「ッ、は、はい!なんでしょう?」

思いにふけっていて旦那様の声に気づかなかった。

「ぼーっと、してるんじゃないぞ。お前には来週までにやることがたくさんある。まず舞踏会用に新しい服を買って、ご令嬢の方々の情報も集めなくては...それから」

俺は来週まで毎日やる大量の仕事を与えられ、舞踏会どころではなさそうだ。

だが、心の内にある彼にもう一度会いたいという衝動が、日に日に大きくなっていくのを無視することはもはやできないだろう。

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