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楽園の欲祓師  作者: 翡翠ユウ
第3話 フィッシュ・ボウルの内外

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3-23 断罪の針

 食事を終えたセブンスターズはレストランを出た。


「たくさん食べて幸せです! 二件目に行くです!」

「それはまた今度な。今日はこれ以上店員を泣かせてはいけない」


 悟利(さとり)は相変わらずの食欲によりバイキングの元以上に食べ続け、セブンスターズはもう何件目かも分からない店員達の涙を見たのだった。

 それでも笑顔で食べ続けた悟利の食べっぷりは、同じ空間にいた他の客、それもお年寄り達に人気でほほえましい笑顔を向けられていた。


「それじゃ僕は先に」

「あぁ、金錠(きんじょう)。今日はありがとうな。また明日学校でな。気を付けて帰るんだぞ」


 静也(せいや)の異様なほどの優しい言葉に対してもう何も言わなくなった狩人(かぶと)は、そのまま振り返ることなく自分の家路に向かっていった。


「お姉さんも今日はここでね」

「わちもです。月乃(つきの)()ぇ、今日は美味しかったです! また行くです! 静也()ぃも、お家楽しかったです!」


 そうして唯と悟利もまた自分達の帰路に着いた。

 しかし唯は向こうを向く前に月乃を一瞥し、二人は目で何かを語ったのだった。もちろんそれを見ていた静也にはその理由や内容は分からなかった。


「月乃ちゃん……今日も…大丈夫……? ついて…いこう……か…?」

「大丈夫だよ。愛枷(まなか)も気を付けるんだよ?」


 そんなふうについ二日前の下校時にしたのと同じ事を問いかけた愛枷。

 これも同じように月乃が問題ないことを告げると、また静也とその隣の能徒(のと)を一度ずつ見て帰っていった。

 その意図は理解した静也は、目を向けられた後に頷いたのだった。


「星見様、今回はどうなさいますか? 現状の星見様のお荷物は無波(ななみ)様のご自宅にあります。それをお持ちになって帰りますか?」

「そうだね。でも一旦は取りに行くよ」

「承知いたしました。それで、結局は()()()()()()()()()()()()


 月乃は()()()()()()()()という言葉で能徒からのそれ以上の追究はないだろうと高をくくっていたため、その質問には少したじろいだ。

 それもそのはずで、月乃はさっき唯と能徒により罰を受けたのだ。そして、能徒はそれをまたすることになるかもしれないという意味で質問をし、月乃は能徒のその様子から意図を察した。


「……今日も静也の家にいるよ」

「そうですか」

「でも、静也が許可してくれたんだよ? ね? 静也」

「そうだな。まぁ、明日また起こしにきてもらうよりは最初から俺の家にいた方が月乃としても楽だと思ったし」


 能徒はじっと月乃を見つめた。それは主に向けるいつもの視線とは別のもののようで、静也は疑問を抱いた。だから問いかけた。


「何かあったのか?」

「いえ、何も。では星見様は本日も無波様のご自宅に宿泊されるとのことで承りました。今回は他の皆様へお伝えしますか?」

「それは……任せるよ」

「承知いたしました。無波様、本日も星見様をよろしくお願いいたします。なお、今回は何かが起きても私からは何も出来ませんので、それだけはお心に留めておいてください」


 そうして一礼した能徒もまた他の人と同じように帰路に着いた。


「なぁ、月乃。能徒と唯と何かあったのか?」

「どうして?」

「今日は特に様子がおかしかったじゃないか。喧嘩でもしたのか?」

「そんなことはないよ。ただ、こういう日もあるんだよ。だから静也は何も気にしなくていいよ」

「そうか? 俺は、仮に何かがあってみんなの仲が悪くなるのが心配なんだよな。そういうのはないか?」

「うん。だから、何も心配しないでね。このまま心配事が増えたら減田(げんだ)をどうにかしなきゃならなくなった時の支障になるよ?」

「それもそうだな。それでも、どうしてもな時は俺を頼るんぞ? それだけは約束な?」

「分かった。ありがとうね」


 少しひやりとした月乃は会話の終了をもって一安心した。

 それから二人はそのまま静也の家に行く―前に月乃の家に立ち寄った。


「ご飯をあげてくるから待っててね」

「分かった」


 月乃だけが家に入っていくと、また例の如くペット()に餌をあげた。

 そしてそれから数十分後、月乃は小さな鞄を持って戻ってきた。


「それは?」

「秘密だよ。それじゃ行こ?」


 月乃は口元をにこっとさせた。


***


 二人が静也の家に到着してから時間が過ぎ、気が付けば日が沈んでいた。

 それまで二人はテレビを観たり、ゲームをしたりして過ごした。無論、その間の月乃は常に口元をにこにことさせていて上機嫌だった。

 それこそ朝に起きてしまった出来事が嘘だったかのように平和な時間を過ごしていた。


「月乃。先にシャワーいいぞ」

「うん、ありがとう。それじゃ行ってくるね」


 ということで月乃は家から持ってきた小さな鞄と一緒に脱衣所へ消えていった。

 そうしてシャワーを浴びている時だった。


「……んっ」


 シャワーが自らの鼠径部に当たった。お湯が体を伝って流れていったのではなく、直接当たったのだ。それにより不意に甘い声が漏れたのだった。


「唯……」


 そこで月乃は思い出した。いや、ずっと涼しい顔で我慢していたが一人になったことでより自覚してしまった。

 月乃は純潔を確認されていた時、もう少しのところで頂きに達してしまいそうだった。だが、唯の巧みな調節により寸でのところで留まった。いや、留まってしまったのだ。それにより今の今までずっと悶々としながらも、長い前髪の奥でずっと涼しい顔をしてきたのだ。


 そこでまたシャワーが鼠径部に当たった。それはもしかしたら月乃が無意識に当てたのかもしれなかった。そしてまた甘い声が漏れると、浴室に少しだけ反響した。


「ぅぅ……こんなになってる……」


 月乃は完全に敏感になってしまっているその場所に手をもっていって確認した。すると、何とも言えない粘度のある液体が漏れ出しており、確認した手をねっとりと染めていた。


 どうしよう。このままだと本当にまずいかも。

 それこそ家には自分と静也だけで、寝るのだって同じベッド。静也が昨日みたいに無意識に胸に触れたり体に触れてこないとは言えない。

 あの時だって少し危なかったんだ。この状態なら私の理性が先にもたなくなる危険性がある。そうなったら静也はどう思うだろう? いや、付き合っているわけじゃないんだ。きっと悪い方向にしかいかないよ。だったら今自分がやるべきことは……


 月乃はこの先のことを考えてある一つの決断をした。それは


「んんっっ……」


 自分で自分を慰めることだった。

 それは能徒以外に黙って静也の家に宿泊してしまい、挙句には今朝静也を気絶させてしまったがために唯から突き刺された断罪の針を抜く行為だった。


 自らの手がそこに触れる度に甘美な声が浴室に響いた。

 今回は万が一にもバレるわけにはいかない。だから自らの指を噛んで必死に声を抑えたのだった。

 だが次第にねっとりとした水の音までも静かに響き始めると、それはただでさえ敏感になっている感覚には大きく聞こえた。だから悪いと思いつつもシャワーを出して全ての音をかき消した。


 月乃はふと鏡に目を向けた。そこには今まで一度も見たことがない、蕩けた女の顔があった。

 それからそんな初めて見る自分の表情にすらも不思議と淫靡なものを感じて昂っていった。もはやシャワーの音なのか自分から出ている音なのか分からなくなった月乃は、そのままさらに指を動かし


「あっ…あっ…あっ……」


 淫らな息遣いとともに無意識に腰も動かしていた。無論、その様子も鏡には映っているわけで、そんな自分の様子を前にしていけないと分かっていても、分かっているからこそ感情がより昂った。


 ここは静也の家の浴室だ。そこで今自分は必死に自分を慰めている。

 恥ずかしい。静也の家なのにこんなことをしていいわけがない。


 そう思えば思うほど、その思いに反して手が激しく動いていった。


「あっ…あっ…せ、静也……静也…いぃっっ……!!」


 次の瞬間、月乃は無意識に彼の名前を声に出していた。

 そして月乃はぐったりと床に座り、息を荒くしながらも余韻に浸っていた。

 出したままのシャワーはそんな月乃の汗を流すかのように体に当たり続け、周囲に飛んでしまった月乃の淫靡な声と雫さえも流していっていた。


「……ごめんね静也。こんな私で……」


 やっと冷静になった月乃はあらためて体を流しながら静也に謝った。

 その頃には悶々とした気持ちは治まり、鼠径部に直接シャワーが当たってもどうとも感じなくなっていた。


「唯も悪趣味だよね。私にこんなことをさせるのも想定内だったんだろうなぁ」


 それから浴室を出た月乃は持ってきた鞄の中から新しい下着を取り出した。それを身に着けると、鏡の中にはすっかりいつも通り地味な自分が映っていた。そして心なしか肌艶が良く、血色も良くなっていた。それを見た月乃は恥ずかしくなった。


「あ。あの下着はちゃんと隠さないと見つかったら大変だ」


 もちろんセクシーランジェリーのことである。

 それには月乃の情欲がぐっしょりと浸み込んでいるので静也に見つかったら本当に大変なことになるのだ。それこそ、仮に嗅がれでもしたら月乃はこの先生きていけないほどに恥ずかしくなってしまう。


「月乃。大丈夫か?」

「大丈夫だよ。そろそろ出るからね」


 さすがにシャワーが長くなってしまったようで静也が扉の外から声をかけてきた。それに対して普通に答えると、安心した様子の足音が遠ざかっていった。

 それから月乃はいつものしいたけパジャマに着替えを済ませて静也が待っているリビングに戻った。


「なんか血色がいいな。それと顔色もいいな」

「き、気のせいだよ」


 どきりとした月乃は何事もなかったようにソファーに座った。そして次は静也がシャワーを浴びに行ったのだった。

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