3-18 続く災難と主への罰
少し前。
「やっちゃった……」
月乃は突然部屋に戻ってきた静也を気絶させてしまった。
理由は明確で、月乃がひた隠しにしていたセクシーランジェリー姿をついに見られてしまったのだ。そしてそれに焦った月乃が欲の力を使ってかつてやったように静也を気絶させたのだ。
黒いランジェリーに身を包んだ地味女子は倒れている静也をどうしようかと悩んでいた。だがとりあえずは廊下と部屋の境目に倒れている静也を室内に入れようと思って足を掴んだ。それからずるずると引きずりながら部屋の中に入れ終えたので扉を閉めようとそこに目を向けた。すると
「星見様。これはいったい……」
「能徒……」
そこにはみんなの万能メイドである能徒叶が立っていたのだ。また、それに続くようにしてある人もやってきた。
「月乃ちゃん。さっきすごい音がしたけど大丈―」
唯だった。
彼女もまた能徒と一緒にその場に立って挑発的な下着を着けている月乃を見てしまった。無論月乃はあまりに予想外なことが続いたせいで思考が停止して声が出なかった。しかしそれでもどうにか弁明しようと話し始めた。
「これは……違うんだよ? 何もしてないよ?」
「あらあら。月乃ちゃんもそういうのを着けるのねぇ。もしかしてそれで静也くんを食べようとしていたのかなぁ?」
「ち…違うよ……これはね、これには深いわけがあってね」
そんな時、月乃は助けを求めるようにして能徒に目を向けた。
「姉ヶ崎様。星見様には本当に何かわけがあるようです。でないとあの星見様がこのような下着を着けるとは考えられません」
「それが静也くんを美味しく食べることじゃないの?」
「唯、違うんだって…… とにかく話を聞いて」
ということで月乃が事の経緯を説明した。
「なるほどね。静也くんもちゃんと見てから渡していなかったのは悪いと思うけど、月乃ちゃんも月乃ちゃんで思い留まらなかったのは問題よね。だってそんな下着はお姉さんでも勇気が要るわよ」
「これは唯でも勇気が要るものだったんだね……」
「まぁ、とりあえず分かったわ。今回は不慮の事故で見てしまった静也くんを恥ずかしさのあまりつい気絶させちゃったということね」
「うん。それで一旦部屋の中に運んだの。だから変な事はしようとしてないよ」
「ふーん…どう思う? 能徒」
唯が隣で聞いていた能徒に問いかけた。すると能徒はどこか言いずらそうにしながらも答えた。
「……本当だと思います。ただ……いえ、何でもないです」
「能徒。主がいても言っていいわよ。お姉さんが許可するわ」
「能徒は何もないって―」
「月乃ちゃん。月乃ちゃんは静也くんの家に泊まることを能徒以外に誰にも言わずに抜け駆けしようとしたのよ? それで静也くんを気絶させたのよ? お姉さんが言いたいこと、分かるわよね?」
「……うん。分かった。能徒、何でもいいよ。受け入れるから」
珍しく唯が月乃の言葉を遮り、あまつさえ黙らせた。生徒会長と副会長、それ以前に明確な実力差はあるものの、月乃は今回のことで罪悪感というかやってしまった感があるようだ。
ということで能徒が恐る恐る主に対して口を開いた。
「……私は以前全てを知っていたのにも関わらず無波様のご自宅に宿泊し、あまつさえあのようなことをしてしまったがためにお二人から罰を下されました。抜け駆けや裏切りと思われたことでしょう。ですから、あの時に私が受けた罰を星見様も受けるべきかと。姉ヶ崎様、私が粗相をしてしまった時や、事務所に宿泊して無波様と同室で寝た明朝に全裸の私の純潔を確認されましたよね?」
「そうね。たしか月乃ちゃんの提案だったわね」
「もし本当に何も無いのであれば星見様はまだ純潔のはずです。それに、この確認を拒むことはないでしょう」
「その通りね。やっぱり冴えてるわね」
「いえ……恐縮です」
ということで唯がそれを採用すると、未だにその下着姿の月乃に迫った。
もちろん月乃は近付かれる度に後ろに下がった。
「本当にやるの? 静也がいるんだよ?」
「気絶してるじゃない? 声を出したり物音を立てなければ起きないわよ」
「姉ヶ崎様。念のために結界を展開しました。終了するまでは誰もこの部屋には入れません」
「やっぱり冴えてるわね。ありがとう」
「……恐縮です」
「そんな……」
もはや能徒は主である月乃を助けるつもりはなかった。なぜなら、メイドとはいえ自分がやらかした時だけ恥ずかしい思いをするのはセブンスターズの仲間として不平等だと感じたからだ。それに、長であれば仲間達に与える罰は自分も受けるべきだと思ったのである。
「それじゃ、月乃ちゃん。静也くんの前で純潔の確認といこうねぇ」
「待って。せめて静也の前では―」
しかしその言葉が聞き入れられることはなく、次の瞬間には唯が月乃を押し倒していた。そして倒れた位置からは未だに気を失っている静也の顔が見えたのだ。
月乃は自分よりも体の大きい唯を前にして動くことが出来なかった。それでも必死の抵抗として丸くなるようにして両手両足を体の前できゅっと締めた。だがそこで能徒が背後に現れると、その両手を剥がすように取ってその体を無防備に露わにさせたのだった。
「それじゃ、脚も御開帳といこうかしらぁ」
「待って。恥ずかしい……私が悪かったから、もうやめて……」
無論、そんな懺悔の声も聞き入れられることもなく白くほっそりとした脚が開かれてしまった。そしてTバックの極小下着が唯の目の前に晒されると、唯がその布地に手をかけた。そして
「んんん―……っっ」
月乃は声を抑えながらも苦悶の声をあげた。そしてその視界の隅に静也を映すと、なお一層恥ずかしそうにしながら声を殺すことに努めた。
そんな中でも唯は容赦なく指を使って確認し、それにかこつけて抜け駆けということをしたお仕置きにと執拗に弄んだ。
「あらあら、月乃ちゃん。静也くんの前ではしたないわよぉ? 地味な子がもうこんなに濡れているじゃない。もしかして、静也くんにされたら―なんてことを想像しちゃったのかな?」
「ちが…あぁぁっっ……っ!」
「声が大きいと静也くんが起きちゃうわよ? でもお姉さんは別にいいんだけどね。ねぇ? 能徒」
「はい。私は既に痴態を無波様に見られましたので」
「そういうことだから、確認が終わるまで声をあげるも我慢するも月乃ちゃんの自由だからね?」
「うっ…くっ……」
月乃は唇をきゅっと強く紡ぎ、歯を食いしばって内から押し寄せてくる快感を必死に耐え続けた。だがそろそろ限界を迎えようとしていた。
「はい、おしまい」
「え……?」
「確認終わりよ。月乃ちゃんにもまだちゃんと純潔はあったわ。なぁに? もしかしてそろそろだったの?」
「そんなことは……」
「そう。無事に終わって良かったわね。それじゃ、その下着はもうぐっしょりなんだから着替えてね。持ってきているって言ってたわよね」
「うん……」
月乃は少し残念そうな声で答えた。そこで唯が不敵な笑みを浮かべて言った。
「辛かったわよねぇ。でも、今も辛いわよねぇ。今日一日は辛いわよ?」
「まさか……」
「性欲のお姉さんを甘く見ないでね。ぎりぎりで止めるなんて得意なのよ? これで月乃ちゃんは発散しない限りずっと悶々とし続けることになるわ」
「あくどい事をするね……」
すると月乃は下着を換えようとそれに手をかけた。するすると降りていくTバックは月乃自身でもドン引きするくらいにぐしょぐしょで、それこそ淫靡な香りがしていた。
これこそ何があっても静也に見つかるわけにはいかない。さらに、もちろん嗅がれるわけにもいかないと新たな緊張感を抱いたのだった。
下を換え終えると次は上の方に手をかけて外した。すると、不意にその布地が月乃の胸の先端に擦れた。
「んんっっ……」
「あらあら。そっちも敏感になっちゃってるのね。かわいそうに」
「唯がやったんでしょ。これじゃ今日一日気が抜けないよ……」
すっかり困り顔になった月乃はやっと新しい下着を着け終えると、外出用の服にも着替えた。
その頃には能徒の結界は解除されていた。
「静也くん、起きないわね。良かったわね、月乃ちゃん」
「うん……本当にね」
未だに悔しそうで悶々とした様子の月乃は唯に目を向けた。もちろん唯はそんなことを歯牙にもかけず、相変わらずの柔和な笑みを向けたのだった。
「とりあえずリビングに運ぼうか」
「そうね。それで起きたらご飯に行こうかしら」
ということで三人で静也を支え合いながらリビングに運んだのだった。
「静也兄ぃ! どうしたですか!?」
「静也……くん……大丈夫……?」
そこに悟利と愛枷が掛け寄ってきた。
「ちょっと貧血を起こしたみたいで。少し寝かせてあげて。起きたらご飯に行こうね」
「はいです。静也兄ぃ、ゆっくり休むです」
「完全に……気を失ってる……安静に……させて…おく……」
そうしてリビングに寝かせ終えると、月乃がふっと姿を消した。だがそれを能徒は見ていた。なので
「ごめんね。少し一人になるね。静也の部屋にいるから……」
と言って月乃は再び部屋に戻ったのだった。
「それじゃ、静也くんが起きるまでお姉さんが膝枕をしよっと」
嬉々として言う唯のその言葉を止める者は誰もいなかった。




