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楽園の欲祓師  作者: 翡翠ユウ
第3話 フィッシュ・ボウルの内外

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3-2 焦りと違和感

「やっと来たか」


 月乃(つきの)静也(せいや)、唯と悟利(さとり)の四人は登校するとすぐに生徒会室に顔を出した。

 そこではLINEで生徒会、セブンスターズに招集をかけた当人である狩人(かぶと)が待っていた。

 そんな狩人は四人を横目に一瞥すると、自分の席で何やら忙しそうにノートパソコンをいじっていた。


「エロゲをやっているならもう少し遅くに来たほうが良かったか? 悪いな、お楽しみ中に」

「そんなものはやっていない。今はそんなことはどうでもいい。これを見てくれ」


 静也のからかいに対していつものように喧嘩腰であれやこれやと言い返さずに四人をノートパソコンのところに呼び寄せる狩人。その様子からしてかなり緊迫したというか、真面目なことが起きていると察した四人が言われるがままにその画面を見た。すると


「反応の記録があるね」

「そうだ。先日僕達が生徒会室を出てしばらくしてから反応があったようなんだ。それでその場所というのが不可解なんだ」

「不可解?」


 パソコンの画面には、例の月乃の頭の中に入っているヘッジス・スカルが持つ特有の電波を公共の電波に混ぜて流した結果が表示されていた。

 それは日本地図と反応があったという地点の周辺を拡大した状況が映されていて、その地点が確かに不可解だった。


「すぐ近くじゃねぇか」

「そうだ。一個人が今回のような特殊な電波を流すというのは黒に近いグレーの行為で、そのこともあって一気に全国に流すことは出来ない。だが進みは遅いが流してはいた。反応が出たこの地点であれば、あの日に僕達が帰る前に反応が出てもおかしくない場所だったんだ」

「なるほど。つまりなんだ? 急に出現したとでも言うのか?」

「それか、今まで干渉から逃れていた水晶髑髏(クリスタルスカル)が何かのきっかけで浮き彫りになったのか。だが後者は否定出来る。なぜならお前らが来る前に反応があった前後の時間帯で何か変な事件やら、それこそ超常的な現象が起きていないかを調べ、それらが一切なかったからだ。あったとすれば僕が流している電波だが、それならさっきも言ったように僕達がまだ生徒会室に残っている時に反応が出るというのが普通だ」

「確かにそうだな。ならやっぱり突然出現したということか」

「考えにくいが、今はそうとしか考えられない」


 そこで狩人が月乃に目を向けた。


「頭の中か体でも、何か違和感はあるか?」

「ううん、今のところは何も。反応があったのは本当に学校の近くだから少しでも共鳴が起きてもいいと思うんだけど、今もこの前も家に帰ってからも何も無かったよ」

「そうか。ならどうしてこんなことになったんだ……」


 狩人は考えを巡らせるためにしばし無言になった。

 すると生徒会室の扉が開いた。


「……あ。みんな…もう……きてた……」


 そこには愛枷(まなか)がぼぅと立っていた。

 相変わらず上半身から膝下までを丸々隠してしまうほどの超ロングの黒髪の奥からそう言うと、ぬぅっと中に入ってはみんなと同じようにしてパソコンの画面に目を向けた。

 しかし誰かの前に立つとかではなく、静也の後ろで佇むようにして立っているので他の人から見たら静也に悪霊が憑いているような光景である。


 それからもう一人、生徒会員でありセブンスターズの万能メイドである能徒(のと)が入室した。


「皆様、おはようございます。金錠(きんじょう)様、お申しつけいただきました学校周辺の巡回を終えて戻って参りました」

「すまないな。何か見つかったか?」

「いえ、これといって何も。念のために何件かのお宅や道行く人にもお聞きしてみましたが、やはりこれといって何も証言は得られませんでした」

「そうか」


 これにて全員が生徒会室に集結した。

 だが一様にしてこの不可解な出来事に一同は首を傾げていた。


「とりあえず、これは保留にしてそろそろ授業が始まるから教室に行こう。それまで何でもいいから思いついたこととか、考えられることを話せるようにしておくこと。もちろん何も思いつかなければしかたないけどね」


 月乃がそう言うと、まるで見計らったかのように予鈴が鳴った。


「それじゃ、一旦解散ね」


 狩人がノートパソコンにロックをかけると、一行は生徒会室を施錠してそれぞれの教室へ向かって行った。


***


「何か思いついた?」


 それから放課後。

 あらためて生徒会室に集合した一同は自分の席で朝と同じく頭を悩ませていた。


「その様子だと誰も思いついていないみたいだね。まぁ、私もなんだけどね」


 最奥の生徒会長の席に座っている月乃もすっかりお手上げの様子である。

 そんな全員に能徒がお茶を淹れた。


「金錠。あれから反応はないのか?」

「新しい反応はない。それでもこっちとしては一度検出した反応は追えるように改良したんだ。とはいっても、相変わらず大体の場所しか分からないけどな。それによるとあの時の反応の場所から大して動いていないようだ」

「もっと詳細な場所が分かるようには出来ないのか?」

「それが出来たらもうやってる。言っただろ? 黒寄りのグレーなことをやっているんだ。変に便利にし過ぎてお上に目を付けられたらクリスタルスカルを探すどころではなくなるぞ?」

「そうだよ? 焦っちゃ駄目だよ? 静也」


 狩人と月乃の二人に宥められる静也。

 だがそんな静也はじれったいような様子を示していた。


「月乃は本当に何も違和感はないのか?」

「うん。授業中も特にね」

「そうか……」

無波(ななみ)様。焦るお気持ちは分かりますが、今は耐える時かと」

「それは分かってるんだけど、月乃の命に関わることなんだ。俺達は月乃を、ヘッジス・スカルを千取(せんじゅ)に取られちゃいけないんだ。他にもクリスタルスカルを集めないと月乃が…… 能徒も早くどうにかしたいだろ?」

「それはもちろんです。しかし、今は金錠様のパソコンの反応と星見様が受ける違和感以外に手がかりを得る方法がないのです。じっと待ってその時のために体力を温存しておくのも手かと思います」


 やはり静也は焦りと、今の自分に何も出来ないということに苛立ちを見せていた。

 もどかしさで言えばもちろん全員がそうである。

 この状況を早くどうにかしたい。出た反応を突き止めて正体を見極め、あわよくばクリスタルスカルを回収したい。そう思っているのは全員が同じである。


「金錠。念のために聞くが、パソコンとかツールの誤作動じゃないだろうな?」

「そんなことはない。…はずだ」

()()()じゃ困る。あらためてデータを取得し直すことは出来ないのか?」

「要は再起動なりをして確認しろとのことだな? まぁ、いいだろう。その点は僕も気になっていたんでな。少し待て」


 そうして狩人が一度電波を流すのを止めた。そして一拍置いて再び流し始めた。


「パソコンの再起動をすると何かと面倒なんでな、ツールの再起動と情報の再取得で我慢しろ」

「まぁ、いいか。これで反応が出なかったら完全に誤作動だからな」

「それはもうそうとしか結論づけられないな」


 全員の視線と意識がそのパソコンに向けられる。だが一向に反応を示すことはなかった。


「……やっぱり誤作動だったんじゃないか」

「残念だがそうだったのかもな。思えばこんな近くに他のクリスタルスカルがあるわけがないんだ。もしあったら星見は万年違和感に悩まされていることになる。大体―」


 と狩人がその続きを言おうとした時だった。


「静也!」


 月乃が大きな声をあげたのだ。


「どうした、月乃」

「……頭に…変な感じが……」

「頭? まさか…… 金錠!」

「今確認してる」


 月乃が突如頭に両手を当てて苦悶の様子を示した。そこに静也が駆け寄ると、すぐにその頭をさすってやった。もちろん何かがあるとか、それこそ隆起したり陥没したりといった外部には異常はなかった。

 

 さらにその時、狩人のパソコンは音を発したのだ。


「これは……」


 驚きの様子を隠しきれていない狩人。

 そのパソコンの画面は月乃と静也には見えなかった。だから代わりに能徒や他の仲間達が確認した。すると


「星見様。反応が動き出しました。やはり大体の場所ではありますが、画面によると学校の中です」

「中だって?」

「あぁ。この場所は間違いなく学校だ。星見の反応からして嘘じゃないことは分かるだろ?」


 月乃はさらに苦悶の様子を示す。


「あ、あ……近付いてくる…… 分かるの。もしかしたら……ここにくるかも」

「なんだって!?」


 月乃の言葉に静也はその前に立ちはだかって戦闘体勢を布いた。そしてそれと同時に他の仲間達も周囲に警戒を強めた。

 それからまもなくしてだった。生徒会室の扉がノックされたのだ。


「月乃」

「……うん。すぐそこにいるよ。気をつけて」


 全員が月乃を守るような陣形となってその扉に警戒の視線を向けた。それとともに、各々がすぐに武器を抜けるように構えた。

 それからその扉が開かれた。


「失礼するよ」


 その言葉とともに入ってきたのは、星条院高校の校長だった。

 そしてその隣には全員が初めて見る男が立っていた。


「皆さん、初めまして」


 男がそう言うと自然的に微笑んだ。

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