Interlude Ⅱ
帰宅した星見月乃は、暗い廊下に明かりを灯した。
すると、廊下の奥から月乃の愛猫がやってきてはその帰りを迎えた。
「ただいま」
それから猫がキッチンの中に入っていくと鳴き声をあげた。月乃がそこに向かうと、猫は餌の缶詰が入っている戸棚の前で座って月乃の方を向いた。
「ちょっと待ってね」
そう言って着ていたコートを脱ぐとハンガーにかけた。
しっかり手洗いうがいを済ませてやっと戸棚が開かれた。その間も猫は座って待っていて、月乃の選んだ缶詰が皿に盛りつけられていくのをじっと見ていた。
「うん。いいよ」
その言葉の直後、猫は月乃に頭を撫でられながらも夢中で餌を食べ始めた。
そして月乃は見る見るうちに無くなっていく餌を見てご満悦の様子である。
皿まで舐めて完食した猫は、撫でている月乃の手にすり寄ってはごろごろと喉を鳴らして満足したことを示した。
「さてと、こっちも用意しなきゃね」
それから月乃はキッチンに立って料理を始めた。もちろん自分が食べる用と、別で二つ分だ。
出来上がるとまずは自分がテーブルでそれを食べた。完食後にその二つ分をトレーに乗せると、
「隠し味にこれをね。前回よりも少し量を増やそうかな」
と言って何やら赤い液体を中に混ぜた。それは少しかき混ぜられたことでその存在感を完全に消した。
料理を持って地下へと通じる鍵のかかった扉の方へ運んでいく。
扉の鍵が解かれると、その先にある階段は暗くひんやりと冷たい空気に満ちていた。電気を点けた時、その奥からは妙な音が響いて月乃の耳に入った。
「何かしているのかな。大人しくしててって言ったのに」
食器の音を鳴らして階段を下っていき、その先にあるもう一つの扉に到着した。もちろん鍵がかけられており、その鍵は月乃の懐の中にある。
ということでその鍵も解放されて、扉がぎぃ…と音をたてながら奥へ開いた。
「変なことはしてなかった?」
その声が向いた先には杭から伸びる鎖付きの足枷に繋がれた男女の人がいた。その杭は部屋の奥の二ヵ所ある角の地面に打ち付けられていた。もちろんそれをやったのは月乃である。
その男女は怯えた目で月乃を見ると、それぞれがまるで囚人のように部屋の隅で小さくなった。
「今日は何もしないよ。でも前回はさ、私が来た時に二人であんなことしてて。GreedとGreedの子なんてどうしようもないんだよ? そんな罪の子を増やそうとしたら駄目だよ」
月乃は長い前髪の奥の瞳から二人を一瞥すると、持ってきた食事の準備を開始した。それぞれのトレーに食器を置き、そこに盛り付けると近くの地面に置いた。
「どうぞ。ほら、食べないの? 毒なんて入れてないよ?」
二人はその様子を見ても食事にありつこうとしなかった。むしろその場所に近寄ろうともしなかった。
月乃はいっこうにそれを食べに来ない様子をじれったく思ったのか、そのトレーを二人のより近くに移動した。
「食べないと、駄目だよ?」
にっこりと口角を上げる月乃。そして月乃がそこから遠ざかると、やっと二人が食事に触れてありついた。だがその間も二人は月乃の様子をちらちらと見ており、食べ物もゆっくり落ち着いて食べているのではなく焦って食べているようだった。
「急がなくても取らないよ? それに、大人しくしてたら私は何もしないよ?」
まもなくして食器の中が空になったので、二人がまたそれぞれの角の奥へ行ってしまった。それからは何かを言うでもなく、ただ怯えた目で月乃を見ては体を小さくして震えているだけだった。
それに気付いている月乃はその食器を別の大きなトレーに乗せて片付けを済ませると、部屋の扉の方を向いて歩いて行った。
「それじゃ、またね。お父さん、お母さん」
部屋を出る時、月乃はその瞳を紅色に染めて二人を一瞥した。
次回から新章、第3話へ突入です。
新章は1/22より開始予定です。




