2-31 見出された打開策
「そうだ! その手があった!」
「狩人、静かにね。何か思いついたの?」
先の会話の中に何かを見出した狩人が月乃に冷静にたしなめられる。
すると、それを察した能徒がすぐさま結界を張ろうとしたが、注文したスイーツが到着したので一旦待った。もちろん、狩人も店員が立ち去るのを待った。
「それで、どうしたの?」
店員が立ち去り、直後には結界が張られたのを確認した月乃が問いかけた。
「こればかりは小牧を称賛せざるをえない」
「わちが何かをしたですか?」
「あぁ。基地局だ。メッセージアプリの話が役に立った」
「やったです! お手柄です!」
そうして悟利が嬉しさのあまりテーブルに並んでいるスイーツへ伸びる手がさらに速くなった。
「それでだ、確かに星見を全国に連れて歩くわけにはいかない。だが、ヘッジス・スカルは別だ」
「だから、取り出せないって言っているだろ」
「そうじゃない。ヘッジス・スカルはモノとして存在していた時にはその場所に不可解な出来事をもたらした。ならば、そのもたらせるために媒介となったものは何だったのか。僕は特殊な波長や周波数を持った電波のようなものではないかと推測している」
「なるほどね。確かにそれなら目には見えないし、あたかも超常現象が起きたみたいになるね。でもそれは推測で確定ではないんでしょ?」
「まぁそれはそうなんだが、全ての現象には必ず理由があると、かの有名な大学准教授が言っていたようにヘッジス・スカルが関わった現象にも必ず理由があるはずだ」
「その准教授は今は教授だけどな」
「静也。話の腰を折ろうとしないの」
静也もまた月乃にたしなめられる。
それで?という空気を出す一同に狩人は話を続けた。
「確かにその電波のようなものの存在はまだ仮だが、僕はほぼ確実なんじゃないかと思っている。なぜなら、この世界において多くのオカルトやオーパーツなんてものは徐々に解明されつつあり、それは全て科学による証明がなされているからだ。これもその科学の範疇だとすれば、ヘッジス・スカルが関わった事象は全て科学で説明出来る。ではその事象を引き起こしている見えない力は何か。仮に電波ではなく電磁力だとしよう。それも目には見えないからな。そうなった場合は周囲には強力な磁場が発生し、周辺地域の街灯や通信機器、他電子機器にも影響を及ぼすに違いない。だがそんな報告は無かった」
そして狩人が月乃を指さした。
「つまり星見の中にあるそれが引き起こしていた事象は電磁力が原因ではない。残る可能性は他の電波だ。それも特殊なものだ。普通の電波ではないのは僕らやここにいる他の客が問題なくスマホを使えていたり、店員を呼び出すための機器を使えていることが何よりの証拠だ。きっと周波数か波長、もしくはそれら全てが違うのだろう。だから他の機器には干渉しないんだ」
「でも極稀にそれらが合ってしまって干渉することもあるだろ?」
「それが起きた時というのが怪奇現象が発生した時なんだ。そんな現象は頻繁に起きるか? 起きないだろ? だから人々が奇妙がって超常現象だなんだって言うのだ」
なるほどと全員が納得の意思を見せた。
それとともに結局どうするのかという結論を求めた。
「星見を全国へは送れない。ヘッジス・スカルも取り出せない。ならばその特殊な電波を全国に流せばいいんだ。それこそメッセージアプリの通信のように基地局を伝ってな。その電波を僕らが監視し、異常や僅かでも共鳴現象が起きた場所に星見を連れて行くのだ。そうすれば他の水晶髑髏の場所が明確になるはずだ」
「話の内容は分かったけど、私の中のヘッジス・スカルの電波はどうやって調べるの? それと、どうやって再現するの?」
方法は示された。だが、月乃の言うとおり核となる電波の採取や再現をどうするのかという問題があった。
「僕を侮ってもらっては困るな。こういう時のために僕は多くの著名人や世界有数の人々と繋がりがあるのだ。それ関係の研究をしている人や、それこそ最先端科学に精通した屈指の人もいる。問題はないだろう」
「だろうじゃ困る。勝算はあるのか?」
「もちろんだ。要は電波の本質を掴めてしまえば模倣して作り出す事は可能だからな。サイバーテロや電子機器の遠隔操作で犯罪が出来る世の中だしな。だが、当然一般人が手を出すには黒寄りのグレーだ。だからその分野で特別な許可を得ている人の名前を借りる。これでいけるはず、いや、いけるね」
確信と自信に満ち溢れた表情をする狩人。
その説明については全員は理解し納得はした。だが、黒寄りのグレーであることと、やはり駄目でしたとなった時はかなりの時間のロスになってしまうので誰しもが決断を出来ないでいた。
そんな時、月乃が口を開いた。
「それしか出来ることはないんだよね?」
「無いというか、これが最善だと思うね。千取も千取で情報収集のために王手IT企業と政財界のコネを手に入れた。ならもう可能性が少しでもある事をやっていった方がいいだろう。それこそ情報戦は確実性とスピードが命だ。幸い僕達にはヘッジス・スカルがある。ならあとはスピードだ。焦らずに急ぐ必要がある」
月乃が少し考える。
全員の視線がそこに集中した。
「分かった。狩人、それでいこう。ならまずはこれの調査だね」
とセブンスターズの主が決断を下した。
それに対して他の面々が口を挟むことをしなかったので、狩人はその案を満場一致で採用ということで理解した。
自分の頭を指さして言う月乃は、その瞳こそ見えなくてもその仕草や口調に覚悟を示していた。
そんな中で静也だけはまだ少し心配の雰囲気を出していた。
「金錠。これだけは約束しろ。いくらヘッジス・スカルの電波を調べるからといって月乃を危険に晒したり、死なないからって頭を切り開いたりは絶対にするな。もちろんこの髪もだ。この両目が隠れた地味でもっさりした髪形が月乃のアイデンティティなんだ。この地味さの塩梅を絶対に変えるんじゃねぇぞ?」
「静也、嬉しいけどなんか酷い」
月乃の頬が僅かに膨れる。
「もちろんだ。そんなことをしたら前の比じゃないくらいにお前が怒り狂うことは察している。もうあんな面倒なことは嫌なんでな。アイデンティティも地味さ加減も全て変わらないということを約束しよう」
「……分かった。そういうことなら俺はもう何も言わない」
「なんか二人とも酷いなぁ。私の地味はアイデンティティじゃないよ?」
「地味を取ったら何が残るんだ?」
「まぁ、その議論は今はいいだろう。ということで、星見。近い内にヘッジス・スカルの調査をおこなう。その手筈が整ったら伝えるから、その時はよろしく頼む」
「むぅ…まぁ、それについては分かったよ。よろしくね。確認だけど、みんなもそれでいい?」
その問に関して一同は頷いた。
そうしてやる事の方向も意思も定まったので、話の終結を察した能徒が結界を解いた。
「注文するです!」
「まだ食べれるのかよ」
「余裕です! わちの胃袋はブラックホールなのです!」
そうして悟利が次々と追加注文をしていった。
次回は10/23(水)の予定です。




