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楽園の欲祓師  作者: 翡翠ユウ
第2話 みんなの居場所

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2-25 最後の鍵

「最後の鍵?」

「うん。私がアウルの楽園を手に入れるための最後の鍵だよ」


 月乃(つきの)静也(せいや)をじっと見つめると、その口角を僅かに上げた。

 両目は黒く長い前髪で隠されていて静也からしてみれば見られているのかは定かではないが、それでも直観的にその奥の瞳が自分をまっすぐと見ている事を察したのだった。


千取(せんじゅ)は私以外の、つまり残り十二個数の()()を先に揃えてからいつでも回収出来ると思っている私の鍵を取りに来るみたい。それまでは私は安全なの。でももし揃ってしまったら、その時は戦いを避けられないだろうね」

「なら、その鍵を先にどこかに隠しちまおう。絶対に見つからない場所にさ。それなら月乃や俺たちセブンスターズだって戦う必要はなくなるだろ? それか、もういっそ壊してしまおうか? 鍵が無ければ奴はアウルの楽園を支配出来なくなるだろ?」

「そうだけど、そういうわけにもいかないんだよ」

「どうして?」

「だって鍵は簡単には取り出せないところにあるの」


 それはどこに? と静也が言おうとした時、月乃はその腕をゆらりと動かした。

 そして人差し指を立てると、その先を自身の頭に向けた。


「まさか……」

「そうだよ。最後の鍵は、私の頭の中。もしも取り出すのなら、私を殺さなきゃならないんだよ」


 これは本格的にまずいことになった。

 静也はその先にある最悪の未来を予見してしまった。


「千取が他の十二個を手に入れて月乃の前に現れたら、月乃は……」

「確実に死ぬの。いくら私が死なせない能力を持っていても、こればかりはどうにもならないよ。そもそもこの能力は私に埋め込まれたこれがもたらせたものなの。それを取り除くって事は、普通の人間として普通に死ぬ事を意味するんだよ」


 その時、静也の中に大きな焦りが生まれ、それに呼応するように瞳が赤く変化し始めた。


「落ち着きなよ。なにもすぐに来るわけじゃないんだよ? 多分千取は今もそれらを集める事に難航してるはずだよ。でなければ、私は今頃死んでるしね」

「……あいつは今いくつ持ってるんだ?」

「多分二つか三つじゃないかな。小さい時に見たのが一つで、流石に追加で見つけていないってのはないと思うからね」

「それを見たのか? ならその正体っていったい」

「ちょっと待ってね。今思い出してみるから」


 そういうと月乃はしばらく黙ってさっきの椎茸の帽子を被った。


「丸かったような、角ばってたような。でも透き通ってたような……凹みがあったんだよ」


 と独り言を重ねながらその帽子を僅かに揺らす。


「再生と復活…… ううん。千取は、なにかこう…ロストテクノロジーだとかなんとか…」

「オーパーツ?」

「!」


 その時、悩んでは揺れていた月乃の頭が上がった。それと共に椎茸帽子が少しずれた。


「オーパーツだよ。綺麗で、丸くて、ごつごつしてるの。手に乗るくらいの大きさだったよ。何か知らない?」


 静也も一緒に頭を抱えて考えてみることにした。

 だが一向に思い浮かばない。


「その一つが今月乃の頭に入ってるんだろ? 違和感とかは無いのか?」

「それが全く。きっと存在が分からないように中で溶けてるとか浸透してるのかな」


 とりあえず静也は状況を整理することにした。

 丸くてごつごつしている。透き通って凹んでいる。

 しかもそれはオーパーツで、全部で十二個あるらしい。


「再生と復活…」


 不思議とその言葉が静也の頭に残っていた。


「あと千取は何か言ってなかったか?」

「うーん…… あ! 私の中のやつは一番強力らしくて、他の十二個が集まるともっと強くなるらしいの。それで、別次元の扉が…とかなんとか。思い出せるのはこれくらいだよ」

「そうか。よく思い出したな」

「まぁ。こうして考える機会になったわけだし、そろそろ私の中のこれが何なのか思い出したくなったからね」


 そしてまた二人は考え始める。


「にゃ〜…」


 するとどこかに行っていたらしい猫が部屋に戻ってきた。そしてその口には何かを咥えていた。


「なんか遊んでほしそうだぞ?」

「ごめんね。もう少し待っててね」


 という月乃の言葉を無視してか、猫は棚を物色し始めた。するとその拍子に上から何かが落下し、猫は危うくぶつかりそうになった。


「んにゃ!」


 そしてその落ちてきたものをつんつんとしては月乃の所まで持っていった。


「DVD?」

「あぁ、これね。たまに観てるの。こういう冒険映画って面白いよね」


 今まで知らなかった月乃の趣味を知ったこと以上に、静也の目はそのパッケージに釘付けになった。


「これは……」

「インディジョーンズ? 音楽もいいよね」

「そうじゃなくて。これ」


 静也は有名なBGMを口ずさもうしていた月乃の制すと、それを手に取ってまじまじと見た。


「これだ、月乃。もしかしてこれなんじゃないか?」


 静也はパッケージに描かれているあるものを指差した。

 その直後、月乃もはっとしてスマホで検索をかけた。


「……正解かもしれない。ううん。間違いないよ。私が前に見たのはこれだよ」


 月乃が映し出したスマホの画面にははっきりとそれが映っていた。


「クリスタルスカル。これは間違いなくオーパーツで、特に強力なものは十三個。その中の一つは他とは比べものにならないエネルギーを持っているらしい。それで、その名はー」


 スクロールしていくと、そこで静也の目線が止まった。


()()()()()()()()。まさか実在していたとは」


 ヘッジス・スカル。

 最強のクリスタルスカルで、それは他十二個のクリスタルスカルと共に揃えると時空をも超える力を発揮するという。


 そんなとんでもないものが月乃の頭の中にあるのだ。

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