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楽園の欲祓師  作者: 翡翠ユウ
第2話 みんなの居場所

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2-13 反撃開始

「生徒会。名前のわりには大したことないな。烏合の衆とでも言おうか」


 狩人(かぶと)(ゆい)の二人を下した才木(さいき)が余裕の顔で言った。

 二人は能徒(のと)が作り出した結界の端で倒れて気を失っていた。


「残りは四人。今日で生徒会は解散だ。これからはこの僕が会長として君臨する。最強でエリートの僕がね」


 濁った瞳がセブンスターズの面々に向けられる。

 その威圧と全身から放たれる瘴気にあてられても月乃(つきの)静也(せいや)と能徒は平然としていた。

 だが悟利(さとり)だけは怯えてしまっていた。

 なぜなら


「月乃()ぇ…… わちは……」

「大丈夫だよ。悟利には()()()()()()()()事は知っているから。それにあそこまで欲が暴走しちゃったら食欲で食べて減らすことも出来ないもんね」

「ごめんなさいです…… 今のわちは完全に足手まといです……」


 悟利は非殺傷に特化した欲祓師なのだ。

 先の宣教師との闘いにおいても、殺してはいけない人の欲を己の食欲で吸い取って無力化していた。

 誰かを捕らえる、もしくは生かさなければならない場合にはこの上ない戦力となるが、今のように敵に処分が決まった者しかおらず、食欲で無力化することも叶わない場合においては完全に戦力外となってしまうのである。


「そんなことないよ。悟利には悟利にしか出来ないことがあるよ」

「月乃姉ぇ……」

「今から私と静也で才木くんをどうにかするから、その間に狩人と唯を引きずってでもいいから別室に避難させておいて」


 そして月乃は次に能徒の方を見た。


「能徒。悟利が二人を応接室の出口まで運んだらその部分だけ結界を解除して。それで外に出すのを手伝ってあげて。そしたら悟利は結界の外で二人の治療、能徒は結界の維持。分かった?」

「はいです。今のわちに出来ること、しっかりとやるです」

「承知しました」


 二人が頷くと、今度は静也を見た。


「俺が下がってろって言っても、どうせ聞かないんだろ?」

「よく分かってるね。でも大丈夫だよ。静也も知っての通り、私は死なないから」

「それでも月乃が傷付くのは嫌なんだがな」

「うーん……分かった。それじゃ、ここから私は才木くんの攻撃を一回も受けない。それならいいよね?」


 静也が少し渋い顔をする。


「ほう。僕の攻撃を一度も受けないだと? 僕も随分と嘗められたものだ」

「うん。もう食らわないよ。それにね、才木くんは今日が命日になるの。その事実は変わらないよ」


 月乃は相変わらずの物静かなトーン且つ、至極冷静に言った。

 対して才木は自己顕示の欲による()()という暗示のせいもあって、その言葉が気に食わなかった。

 見下されている、小物に見られている、なにより自分よりも愚かで弱い存在に見透かされた気がしたのだ。


「いいだろう。ならば食らったら最期、その命が散るという事を教えてやろう」

「おいおい、俺を忘れてないか?」

無波(ななみ)、お前もこいつと同じく一撃で死ぬ。ただ順番が違うだけだ」


 もちろんお前もな。という目で倒れている二人の救出のタイミングを見計らっている悟利を睨んだ。

 しかし悟利は自分にしか出来ない事がある故にもう怯まなかった。


「それじゃー」


 才木はそう言うと、一瞬にして月乃の目の前まで移動し凶悪な拳を向けた。


「なに……?」

「言ったよ? もう食らわないって」


 しかし月乃は余裕の様子でひらりと躱した。

 そこまで大きな動作ではなく、それこそ飛んできた物をすっと避ける程度の動きだった。

 才木の注意がそこに向いている隙に悟利が狩人と唯のところへ走った。

 同時に静也が才木の隙だらけの背後をとった。


「くっ……」

「最強じゃなかったのか? 自称エリート」


 静也が放ったのは回し蹴りだった。

 月乃の件で虚を突かれたためか、それはすんなりと入り、才木は結界の端の方へ飛んでいった。

 もちろん、その方向は悟利が向かって行った二人の方とは真逆の位置だ。

 距離をとってもらった悟利はその小さな体でまずは唯から運びにかかった。


「おっと、他所見はいけねぇぜ」


 と静也の追撃が続く。


「静也。無理しちゃ駄目だからね。私と違って静也は何かあったら死んじゃうんだから」


 その言葉は届いてはいるものの、欲により最強となっている才木に隙を見せないようにするためか静也は返答しない。

 本当は自分も戦って狩人と唯が安全圏に行くまでの時間稼ぎをしようと思った月乃だったが、奮闘し才木を抑えられている静也を見て悟利の方へ走った。


「月乃姉ぇ。唯姉ぇが……」


 悟利は体が小さい故に唯の体を抱えることが出来ず苦戦していた。そこで月乃と二人でその両腕をそれぞれの首に回して背負うと、どうにか動かすことが出来た。


 二人が小走りで移動している最中、唯の豊満かつ非常に我儘な大人サイズの胸が上下左右に揺れるものだから二人はバランスを取り直すために時折立ち止まり、また時には顔のすぐ横にある爆乳が迫ってくることによる視界の回復をせざるを得なくなってしまっていた。


「同い年なのに、どうしてこんなに差があるのかなぁ」

「月乃姉ぇ、何か言ったです?」

「なんでもないよ。早く行こう」


 そしてやっと応接室の出口にたどり着くと、能徒が結界を一部解除した。

 だがその時、静也の攻撃の合間を縫うようにして才木が何かを飛ばしてきた。

 それは先に月乃の首を切り裂いたカッターナイフだった。さらには手当たり次第に投擲してきた。

 しかし


「私がただ結界を張っているだけだとは思わない事ですね」


 それらは次々と能徒によって弾かれ、地面に堕とされていった。


「お二人とも、お気にせず」

「ありがとう。流石は能徒だよ」


 そこから二人は未だに気絶している唯を外に出すと、すぐさま狩人のところへ向かった。

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