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楽園の欲祓師  作者: 翡翠ユウ
第2話 みんなの居場所

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2-10 証拠と抵抗

「才木。しっかりと説明してもらおうか。もちろん出来るよな?」


 才木、生徒指導の教師、そして校長と三人が囲むテーブルの上に数枚の写真が並べられた。

 それらはみな暗がりの中を写しており、その中には紛れもない一人の男が写っていた。


「これはお前だな? こんな夜遅くに職員室で何をしていたんだ?」

「なぜ言う必要があるのです? 黙秘します」


 その写真は生徒会が立っている位置からでも見ることができ、それを見た一同は驚きながらも、なるほどと納得の様子を示した。


月乃(つきの)。これってもしかして」


 と静也(せいや)が彼女に視線を向けた。

 するとそれに対して月乃はこくりと頷いた。


「そうか。ならこれでどうだ?」


 彼が次に出したのは、中間テストの答案用紙を写真に収める才木の姿がしっかりと写った一枚だった。

 しかも顔まで写っており、もはやそれは言い逃れが出来ない確信的なものだった。


「お前は前日の夜に職員室に侵入して答案用紙を盗み見た。だから満点を獲る事が出来た。そうだな?」

「……」


 才木は焦りの表情を表に出さないように必死になっているが、もはやそれも限界そうだった。

 それでもなお黙秘を続けているので、校長が月乃を見た。

 それに応えるようにして月乃が才木のすぐ横まで行くと、いつもの静かな口調で問いかけた。


「才木くん。そんなに学力が大事なのかな? こんな不正に手を出してでも得る価値があるものなのかな?」

「……さ…い」

「ん?」

「五月蠅い! お前らに! 他の奴らに僕の何が分かるってんだ!」


 その声はこの応接室に響き渡り、空間すらも揺らした。


「分からないよ。そんなの。でも才木くんだって、私達が本気で頑張って勉強して正々堂々と得た結果と、今までの努力をそんな不正で踏みにじられた私達の気持ちなんて分からないでしょ?」

「お前らの気持ちなんてどうでもいい。テストとは、現実とは結果が全てだ。それまでの思いがどうであっても結果が伴わなければ努力なんて意味を成さないほどに(むな)しいものなんだ!」

「でも、そんな手段で得た結果なんていつかは見破られて破綻する。今の才木くんみたいにね」


 静かに語る月乃。

 しかしその雰囲気は異質、というよりも感情の憤りを必死に抑えているかのようだった。


「破綻……か。でもな、僕はそうはならない。なぜだか分かるか?」


 すると才木の瞳がまた少しずつ濁り始めた。そして不敵な笑みを浮かべると、テーブルに置いてあった写真をぐしゃりと握り潰した。

 それからその身からは禍々しい妖気のようなものが溢れ出し、それは次第に室内へ充満していった。


「……それはやめておいた方がいいと思うよ? だって才木くんは逃げられないし、私達を相手にするにはあまりにも小物すぎるよ」

「小物だと? 僕は最強だ。エリートの血筋だ。そもそも、この事を知っているのはここにいるお前らだけだろ? なら口を封じちまえばいいだけの話だ」

「エリートは関係ないよ。だからね、もう才木くんはエリートでもなければ最強でもないの。不正をした最低のクズで、ただの凡人なんだよ。だいたいね、この世界にはー」


 その時だった。

 月乃は話を終える前にどさりと床に倒れた。


「月乃!」


 倒れた彼女の首からは大量の血が流れ出し、それは床を血の海に変えた。


「もういい。僕の敗北を知っている奴らは全員殺す。そうすれば僕は最強で誰にも負けないエリートのままでいられるんだ!」


 才木の手にはカッターナイフが握られていた。

 長く出されたその刃には赤い鮮血が付着し、才木の顔や制服を返り血で染めていた。

 さらに今さっき人を切りつけたにも関わらずその表情には一切の罪悪感は無く、むしろ邪魔者を消したことに対する達成感や喜びに満ちた顔をしていた。


「テメェッッ!」


 静也は才木の話の途中で既に地面を蹴っていた。


「よくも俺の前で月乃をやってくれたなァ! 今までは我慢してたけどよ、今回は駄目だ。徹底的に排除してやる!」

「排除だァ!? やれるものならやってみろ! お前もこの女みたいに殺してやるよ!」


 静也が赤く光らせたその瞳をもって彼に襲い掛かった。

 それが合図だったかのように、唯と悟利(さとり)が三人の教師達を速やかに室外へ避難させ、次の瞬間には能徒(のと)がこの応接室全体に結界を張った。


「まったく、無波(ななみ)の奴め。星見が死なない事は知っているだろうに」

「いきなり酷いことするなぁ。死なないって言っても、痛みはあるんだよ? 服が血だらけだよ」


 と月乃の横で不満をこぼす狩人(かぶと)

 ちなみに月乃は既に回復して立ち上がっていた。


「まぁ、静也は昔からそういう人だから大目に見てあげて。ということで、みんな。私はもう平気だから、ここからはセブンスターズのお仕事といくよ」


 前方の静也にその声は届いていない。だが他の人達には届いたようで、生徒会もといセブンスターズは戦闘態勢に入った。

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