2-8 運命の刻
「完璧だ…… これで僕は誰にも負けない。真のエリートとして生徒会に入れるんだ。会長になれるんだ……」
夜闇の中、才木秀生は怪しく笑った。
その瞳は濁り、それでいて仄かに妖しげな光を発していた。
***
中間試験が終了してから返却日までは長いようであっという間に過ぎ去っていった。
そして迎えた運命の日。
それぞれの教室では各教科の答案用紙が返却された。
「ふん。まぁ当然だ」
「あらあらまぁまぁ」
「きひひひ……」
「こ、これはです……」
「うん。そうだよね」
「皆様。私は……」
と各々が感想を抱く。
静也は眉一つ動かさずにその答案用紙を鞄にしまった。
そして放課後になると、静也と月乃の教室に生徒会の面々が終結した。
どうだったかはその顔を見れば一目瞭然で、二人は皆と共に順位が張り出される職員室前の掲示板へと向かった。
「おや? 生徒会ご一行様じゃないか。どうだね? テストの出来は?」
「才木くん。そう言う才木くんこそどうなの?」
まるで待っていたかのように現れた彼を前に月乃は相変わらずの調子で答える。
きっとその長い前髪の奥では自らの出来を隠すことに必死なのだろう。僅かだが口角が上がっていた。
「僕かい? 僕はエリートだからね。今回は楽勝だったよ」
「そう。それじゃ、みんな行こうか」
「また僕を蔑ろにするのかい。まぁいいさ。ところで、あの約束は覚えているかな?」
試験前に生徒会と才木は約束していた。
生徒会の誰か一人でもテストの点数で才木に負けた場合、彼を生徒会に入れるという事を。
そして生徒会側も望みを言っていた。もしも生徒会が勝った場合は何でも一つ言う事を聞くことと、金輪際生徒会に関わらないという事である。
「もちろんだよ。言っておくけどね、生徒会は誰一人として負けることはないよ」
月乃は振り返って最後にそれだけ言った。
それから一行はそのまま掲示板へと歩みを進めた。
「さっきのあれは大丈夫なのか? 月乃」
「いいよ別に。才木くんが何て言ってももう結果は出てるし」
「当然だ。生徒会があんな奴に負けるわけがないだろう」
冷静に言う月乃と既に勝ち誇った様子の狩人。
そして他の面々も決して口には出さないが、以前とは違って才木秀生という脅威を全く気にしていない様子だった。
「終わったらスイパラだね」
「楽しみです!」
掲示板の前には既に人だかりが出来ていた。
そんな中でも月乃は至っていつも通りだった。
「では、中間テストの順位を張り出そうと思う。これを見て次回の目標にしてもらいたい」
と教員が言うと、まもなくして全学年の結果が一斉に発表された。
そこへ全員の目が集まり、一喜一憂の声が沸き上がった。
「や、やったです! 学年2位です!」
悟利が喜びの声を上げる。
1年生の順位表に生徒会の視線が集中すると、確かに2位のところに小牧悟利の名前があった。そして1位には
「流石だな。能徒。」
「いえ。皆様のお陰です」
堂々たる結果として能徒叶の名前があった。
能徒は5教科を総合して各教科において1問ミスに留め、悟利は各教科2問ミスに抑えたのだ。
「みんなはどうでしたですか? やっぱり静也兄ぃが1位ですか?」
悟利は無邪気な笑みで生徒会二年生へと問う。
しかしそれに対して誰一人として答えることはなかった。
「どうしたです……?」
そんな雰囲気を察した悟利と能徒は2年生の順位表へ視線を向けた。
「そ、そんな……」
「これは……」
そこには確かな結末が記されていた。
「才木秀生、500点……」
「ふっ…ははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」
才木が満点という現実を全員が知った時、この場所には全てを嘲笑うかのような高らかな笑い声が響き渡った。
「どぉだぁぁ! これがエリートの力だ!! 僕こそが正真正銘のエリートなんだァァッ! 君達のような凡人生徒会とはものが違うのだァァ!」
その笑い声が、侮蔑の言葉が止まることを知らずに生徒会をただただなじり続けた。




