2-7 試験当日
ついにやってきた中間試験当日。
通学路を歩く生徒達の手には最終確認の為にと教科書やノートが握られていた。
「月乃は余裕か?」
「そんな事ないよ? 昨日はあまり寝られなくて目の下にクマが二匹もいるよ」
「クマは頭な。というか、そんなこと言われても目が隠れてるから分からないって」
「ほら。クマさんだよ」
月乃はそう言って長い前髪を上げてクマの存在をアピールした。
その凛々しくも黒曜石のように澄んだ目には、確かに立派なクマが生息していた。
「立派なことで」
「でしょ? そう言う静也はやっぱり余裕なの?」
「やるだけの事はやったからな。それに、本音を言えば、頑張るのはもう疲れたんだ」
「そっか。静也らしいね」
それから二人が校門をくぐると、その先には生徒会の面々がやはり教科書やノートを見ながら歩いていた。その様子はまさに必死そのものだったので二人は声をかけなかった。
教室に到着すると、それぞれがそれぞれの教室で緊張した。
するとまもなくして試験監督の教師が教室に入り、注意事項を説明し始めた。
「では、これから試験を始める。教科書やノートはしまうように」
「先生!」
「小牧さん。なんだね?」
「おやつはいくつまで出しておいていいです?」
「一つも駄目です」
「そんな……」
一年生の教室ではそんな会話があり、
「深見さん。それは何かな?」
「…きひっ……わら……人形……」
「関係無い物はしまいなさい」
「きひひ……」
二年生の教室でもそんな会話があった。
やはりそれぞれは緊張しつつも、どうにかそれをほぐそうとしていた。
だが、それでもついに運命の時が訪れた。
「では始め」
その一声の直後、各教室にはペンを走らせる音しかしなくなった。
月乃、唯、狩人、愛枷、悟利、能徒、そして静也。皆それぞれが今日の為に励んできた努力を解答用紙へ記していく。
その目は真剣そのもので、試験結果はもちろんのこと、才木との勝負で誰一人負けるわけにはいかないという強い思いが宿っていた。
「そこまで。では答案用紙を回収する」
それにより緊張の糸が一つ解れた。
しかし、それから少しの休憩をはさんで次の教科の試験が始まる。
そこでまた全員が緊張し、己の持てる全てを出し切る。
再び終了の一声が教室に響く。
開始と終了が繰り返され、まずは午前中の分が終了した。
午後の開始時刻が通達されると、一時の休息に入った。
「静也。ご飯食べよ」
月乃が静也のところに行くと、続々と生徒会のメンバーが集まった。
どうやら皆それぞれが共に頑張ってきた皆と一緒にいたいようだった。
なので場所を生徒会室に移動した
「金錠。なんか不服そうだな。教室で食べてきてもいいんだぞ?」
「勘違いするな。僕はたまたま生徒会室に用があっただけだ」
「そうか。なら用は済んだだろ? さぁ、戻ろう」
「飯くらい食わせろ。というか無波こそ何の用だ? もう飯は食い終わっただろ?」
「俺はいいんだよ。月乃が誘ってくれたんだからな」
と相変わらず静也と狩人がいがみあっている。
それを他の皆は微笑ましく見ていた。
「悟利ちゃん。いっぱい食べるわね」
「はいです! 午後も頑張らなきゃなので、たくさん食べて挑むです!」
悟利の前の机には購買で買ってきた大量のパンによる山が出来ていた。
それをどれも美味しそうに食べているのだから、この食欲は目を見張るものがある。
「それじゃみんな。残り二教科だから最後まで頑張ろうね。終わったら、そうだね。今回はスイパラにでも行こうね」
「スイパラですと! 行くです! 頑張るです!」
月乃はいつもの調子でそう言うと、まもなくして予鈴が鳴った。
午後も午前と同じく滞りなくテストが進み、皆は最後の最後まで全力を出し切った。
そしてやっと
「そこまで。これにて中間テストを終了とする。回収が終わったら今日は解散だ。結果は一週間後、返却と共に順位を職員室前の掲示板に張り出す。以上」
回収と試験監督教師のその言葉が終わると、ついに全員から全ての緊張の糸が解かれた。
帰宅の準備を終えた静也は、いつものように月乃と帰ろうとその席へ向かう。
すると月乃は窓の外を見て何やら物思いにふけっていた。
「どうした? もしかして微妙だったのか?」
「そんなことないよ? ただ、ここからが勝負だなって思っただけだよ」
「あぁ、でも結果は来週だし、それまではゆっくりしようぜ」
「そうだね。うん、帰ろうか」
二人が教室を出ると、またしても生徒会の面々が集まっていた。
静也はつくづく仲が良いなと思いながらも全員で帰ることにした。
それからは特に予定はしていなかったが、全員の足はセブンスターズの事務所へと向かいひとまずのお疲れ様会を行う事となった。
「みんなはどうだったんだ?」
ふと静也が全員にその自信の程を聞いた。
「そうねぇ。お姉さんは平気よ。しっかりと最後まで出来たわ」
「わちも大丈夫です! 今回は自信あるです!」
「きひっ……問題……無し……」
「ふん。余裕だ」
「私も上々にございます」
その言葉を聞いて静也は当然のこと、月乃が最も安堵したようで口元がほころんだ。
「そうか。なら安心して結果を迎えられそうだな」
「はい。全ては無波様のお陰でございます」
「能徒も頑張ってくれただろ?」
「そうだよ? 能徒と静也がしっかりと教えてくれたお陰だよ?」
「星見様……」
能徒は周りを見渡した。
すると、自分を見る皆の目には感謝が溢れていることに気が付いた。
「皆様……ありがとうございます。私などに良くしていただいて」
「当然だよ。能徒もセブンスターズの仲間なんだから、みんな一緒だよ」
月乃がそう言うと、能徒は感極まって目に涙を浮かべた。
「ありがとうございます。これからも私は皆様と一緒にあり続けます」
今回は珍しく唯が能徒の頭を撫でては優しく抱きしめた。
そしてそれにつられるようにして悟利も能徒に抱き着いた。
それからこのお疲れ様会はそれぞれが思うままに進行し、日が落ちた頃に解散となった。




