2-6 決戦前夜
中間テストの最終確認を済ませた生徒会一行は、出来る事は全てやったという思いと緊張感を抱いてセブンスターズの事務所に残っていた。
「緊張するですぅぅぅ……」
「あらあら悟利ちゃんったら。今から緊張していたら本番はもっとすごいわよ?」
「唯姉ぇ……」
悟利が唯の大きな胸に埋まるようにして抱きしめられ、頭をよしよしされている。
そんな事をしている唯は一見冷静そうに見えるものの、その表情にはいつもの柔和さというか余裕が見受けられない。
「ふん。たかが中間テストだ。今更どうこうなるものでもないだろう」
と金錠狩人が言う。
「なぁ、金錠。どうして足震えてんだ?」
「なっっ! これは、武者震いだ!」
「怖いんだろ? 無理すんなって」
「う、うるさい。だいたいお前はどうなんだ? 無波」
「俺はもう覚悟を決めた。出来ることは全てやったし、もしこれで駄目ならそれまでだったって事だ」
静也は強がる狩人にどっしりとした雰囲気を見せる。
「そうだよ? 私達は皆で頑張ったんだよ? だからきっと大丈夫だよ」
月乃がいつもの調子で言う。
例の如く長い前髪で両目が隠れているのでその表情は分からないが、落ち着いているように見えた。
静也はふと全員を順番見る。
悟利は未だに唯の胸の中。唯も表情が強張っている。狩人は分かりやすく動揺しつつも必死に強がっている。月乃は落ち着いて見えるだけで、恐らく落ち着いていない。
だがそんな中でひと際静かな人がいた。
「能徒は大丈夫そうだな」
「はい。あとは運命を天に任せるのみですから」
月乃の隣で静かに立っている能徒叶は至っていつも通り冷静に答えた。
静也と能徒は二人で生徒会の面々に勉強を教えたのだ。それ故にお互いの実力をしっかりと熟知しており、この二人においてはお互いに心配していない様子だ。
そしてもう一人、奇妙なほどに静かな人がいた。
「愛枷。大丈夫か?」
「……」
深見愛枷である。
いつもは奇声を上げたり、自らの武器である大鎌を研いだりしている彼女が今日のこの時は壁際でぼぅと佇んでいた。
白いワンピースと月乃以上に長い前髪。毛量も多く後ろ髪は裕に腰の位置を越えていた。
これだけ見るとやはり某ホラー映画のアレのように見えてしまう。
「大丈夫だよ」
「そうか」
あれ? 今普通に答えたな。
静也はその返答に少しばかりの違和感を抱いた。
「やっぱり愛枷も緊張してるみたいだね」
「いや、今普通に答えたろ?」
「うん。愛枷が普通に答えた時は何かある時なの。いつもの感じが愛枷にとっては普通なんだよ」
月乃がそう言うと、愛枷がわずかにこくりと頷いた。
「あ、そうだ。愛枷。悪いんだけど、一つお願い頼めるかな? きっと気分転換になると思うから」
「なに?」
すると月乃は愛枷の耳元で何かを言うと、愛枷はこくりと頷いた。
「それじゃみんな。明日は泣いても笑っても中間テストだから今日はもう帰るよ」
月乃の一声により解散となると各々は帰路に立った。
静也はそんな月乃と夜道を歩く。
すると、ふと
「きっとみんな大丈夫だよね……?」
と月乃が不安そうに呟いた。
それはこの夜闇に消えてしまいそうな声だった。
さっきは皆の手前いつも通りを装っていたものの、やはり月乃も不安でいっぱいなのだ。
それ故に顔にかかる影がいつもよりも濃く、ただでさえ暗く地味に見えてしまう顔が一層暗く陰気に見えてしまっていた。
だからこそ静也は
「大丈夫だよ。この勉強会でみんなは確実に良くなったんだ。だから絶対大丈夫だ」
と幼馴染を元気づけるように言った。
それを聞いた月乃は静也を見て僅かに口角を上げると
「そうだよね。生徒会は、セブンスターズは誰も負けないよね」
と、どこかほっとしたように嬉しそうに言うのだった。
夜道を照らす月は満月だった。
その光がみんなの帰り道を明るく照らしていた。




