Interlude
星見月乃は窓から身を乗り出して星空を見上げていた。
雲一つ無い星空だった。
その満天の空には満月が煌めき、月光が月乃の部屋を明るく照らす。
今日の月乃はとても上機嫌だった。
なぜなら先日かねてより目を付けていた幼馴染の彼、無波静也を私立星条院高校で自らが会長を務める生徒会に加入させ、欲に支配された人、通称Greedと戦う組織のセブンスターズに引き入れる事が出来たからだ。
窓を閉めた時、そのガラスには口角を上げた自分の顔が映っていた。
生徒会兼、セブンスターズ。
副会長の姉ヶ崎唯、会計の金錠狩人、企画の深見愛伽、書記の小牧悟利、総務の能徒叶。そして庶務の無波静也と自分。
「七人でセブンスターズ。六人だったらシックススターズになって怒られちゃうよ。静也が入ってきてくれて本当に良かった」
それから月乃は机に置いてある写真を見た。
小さい頃に静也と撮ったものだった。その横にはまだ静也が入る前に生徒会で撮った写真もあった。しかしそこには唯と悟利と愛伽を入れた四人しか映っていなかった。
「ここまで増やしたんだもん。セブンスターズを、私の楽園を壊させるなんてさせない…… Greedなんかには絶対に負けないんだから」
それから視界にもう一つの写真が入る。
それは両親と撮った一枚だった。だがそれは酷くボロボロで、写真立てで固定されていなければゴミと間違えてしまうほどに汚れていた。
「……」
月乃はそれを一瞥しただけで、次の瞬間には何も言わずに部屋を出た。
廊下や他の部屋には電気が点いておらず、歩く度に床が軋む音が聞こえる。
そんな中で月乃はキッチンに立った。
「はい、ご飯だよ」
缶詰を開けてやると飼っている猫がすり寄る。
美味しそうに食べているその様子につい表情がほころぶ。
「そうだ。そろそろご飯の準備をしなきゃね」
今度は自らの食事の準備と、もう一つの食事の準備を始めた。
月乃が食べる分と、別室で飼っているペットにあげる用だ。
そして出来上がると三つのトレーに食器を並べて盛り付けた。
「これでいいかな。今日はちゃんと食べてくれるかな」
その食事を手に廊下を歩き、地下への階段を下る。
地上よりはひんやりとし、簡素で無機質な廊下を進むとその先に一部屋だけあった。
「ご飯だよ。今日はお肉にしたよ」
扉を開けて床にトレーを二つ置くも、そのペット達は食べようとしない。
むしろ月乃に対して怯えた目を向け、震えたまま奥から近寄ってこようとしなかった。
「ほら、ちゃんと食べないと死んじゃうよ? ねぇ、お父さん、お母さん」
そう呼ばれた二人はビクリとして恐る恐るトレーに近付いて、月乃の表情を窺うようにして震える唇で食事にありついた。
完食まで見届けた月乃は満足そうにトレーを持って部屋を出ようと二人に背を向けた。
「……私を殺すつもり?」
直後その背に殺気を感じた月乃はぐるりと顔だけ振り返って獰猛な白い歯を見せた。
「出来るものならやってみなよ。逆に殺されてもいいならね」
月乃はトレーにより両手が塞がっている。にも関わらず二人はその異様ともいえる圧によりそれ以上前に出る事が出来なくなってしまった。
「それじゃ、また明日もご飯持ってくるから、静かにしてるんだよ?」
長い前髪の奥で妖しく光る瞳を向けると、その部屋の扉を施錠した。
それから地上階に戻ると、一階と地下とを繋ぐ扉を施錠した。
「あ、そうだ。静也に生徒会の事をLINEしないと」
それからスマホを打つ月乃。
その顔はもういつもの物静かで地味な表情に戻っていた。
「これでよし。明日からの生徒会楽しみだなぁ。セブンスターズの方も忙しくなるぞぉ」
期待を胸に鼻歌を歌いながら今日も夜が更けていった。




