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「ごめんくださーい。誰かいますか? たくさんいますね」
と言って何の躊躇も警戒もせずに廃工場に入るツキノ。
それを先頭に全員が侵入すると、そこには情報通りの人達がいた。
そんな彼らの様子はどこか変だった。
入ってきたセブンスターズに対して背中を向けて立っている状態で、ぶつぶつと何かを呟き宙を見上げながら体を左右に揺らしている。
「おやおや。あなた方も入会希望ですか?」
物陰から出てきた男は張り付けたような笑顔で問いかける。
大勢の人達とは異なり、悠然と立つ彼は先の情報にあった司令塔なのだと皆が理解した。
「入会?」
「はい。私達は社会に疲れ、家庭に疲れ、人生にも疲れた方達をお迎えし神から安心と祝福を授かろうとする者達です。まさに今はその最中なのです。ほら、皆が天に手を伸ばしてお祈りを始めたでしょう? もうすぐ皆に幸福が訪れる。神から祝福が授けられようとしているのです」
彼らが祈るように両手を頭上で組み、螺旋を描くように激しく体を揺れ動かしたかと思えば、次の瞬間には時が止まったかのように全員の動きが停止した。
そして、全身の力が抜けたかのように一斉にその場で両膝を付き、それでも顔だけは天を仰いでいた。
「さぁ。神がおいでになる……」
司令塔である彼がそう言うと、直後その集団の前に行って語り始めた。
「神は降臨された。全ての痛み、悲しみ、憎しみ、それらは今神により報われた。我らは神に感謝を示さなければならない。尽くさねばならない。命をもって。さすれば皆にさらなる幸福が訪れるであろう」
まるで教祖である。
こんなうさん臭いものを誰が信じるのだろうかと一同は思い、早く仕事を終わらせたいという気持ちが昂る。
しかしツキノがそんな怪しい彼らの様子を静観していたので、誰一人としてその気持ちを行動に移そうとしなかった。
そして、教祖然とした彼は次に恐ろしい事を口にしたのである。
「あぁ……聞こえる…… 神の言葉が。……殺せ。我を崇拝せぬものは皆殺せ。神は今おっしゃった。その者達は神の敵だ。一人残さず殺すのだ」
「なっ……」
直後、停止していた彼らはゆらりと立ち上がり、まるで亡者のような虚ろな目でセブンスターズを見た。
「お前、何を」
「ふふふ。あなた達の事は知っていますよ。私達本来の欲望を抑制し飼い慣らす不当な輩なのでしょう? 神の下で人間は生まれながらに皆平等です。自らの欲に忠実に生き幸福を得る。その幸福を奪う権利は誰にもありません。それを奪うあなた達には罰が必要なのです。神罰という罰をね」
不敵に笑う彼に対してツキノは冷静に言う。
「神罰ね。そっか。あなたは神になりたかったんだね。あなたのその洗脳の欲求はおあつらえ向きって事か。でもね、この世界にはどこにも神なんていないんだよ」
「なんだと? 何も分かっていない小娘が。神を疑うのか? 神は―」
「神は、人間のもつ弱さが生んだ空想の産物にすぎないの。この世界にあるのは、ただの人間の弱さとそれを認めずに神という都合の良い偶像に縋る哀れな人の魂だけなんだよ」
「こっ……このっ…」
男の顔が苛立ちに歪み、次の瞬間その身には人間とは思えない禍々しい邪気が宿った。
「来たね」
ツキノがそう言うと、皆に臨戦態勢を布いた。
「娘ェ! そんなに神を否定するか! ならば教えてやる。神の偉大さと絶大な力というものをなァ!」
「なら、私達はそんな神を、あなた達狂信者を潰してあげるね」
「やれるものならやってみろォォォ!」
まるで血を零したような禍々しい目をした彼が獣のような咆哮を上げると、まもなくして亡者と化した人々が一斉に敵意を示した。
そして、それとほぼ同時にツキノも行動を開始した。
「能徒!」
「はい。星見様」
能徒は自身を中心に廃工場を覆うほどの結界を展開した。
「フィールド展開しました。これよりこの区域一帯を私、能徒叶の管理下におきます」
「ありがとう。皆、これで好きなように出来るよ! セイヤに自己紹介を含めて思う存分にやっちゃっていいからね! あ、でも、殺しちゃいけないのもいるからそれだけはサトリ。お願いね?」
「はいです!」
「それじゃ、みんな。武器を構えて、行動開始だよ!」




