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黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》  作者: Siranui
終章 終着輪廻決戦編
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第二百九十三話「宿命の結末」

 最終任務:『死の宿命』の理滅

 遂行者:ネフティスメンバー総員 



 ――――肉体が断ち斬られる音。内臓が引き裂かれる音。二つの血で穢れた音色が響き合った。音速を超える速さで平行飛行した中で三人は同時に引き剥がされ、鮮血を舞い上がらせながら地面に激しく転がる。


「「……」」


 痛みしか感じない。今の今まで感じなかったのに。いや、単純に意識が……脳が誤魔化していただけだ。それが今は魔法のように解けてしまったのだ。


「はぁ、はぁ……やった、の?」

「さぁ、ね……でも流石に、ケリついて、くれないと……もう、無理」

 

 全員が満身創痍の中、この戦いの終着を願いながら見守る。しかしここまで身体に無理をかけすぎた対価でバタバタとメンバー達が倒れていく。それは最後の一人になった凪沙さんも例外では無かった。


「……これでダメだったら、もうおしまいだね……」


 そして、この場にいる全員が地面に倒れた。ネフティスメンバー全員の戦闘不能は史上初だ。それほどまで強敵だった。いや、その言葉すらどれだけ重ねても足りない程の存在だった。


「ぐ゛っ゛……こ゛の゛我゛が゛、人゛間゛如゛き゛、に゛ぃ゛っ゛……!!」


 アズレーン……いや、アグリゲートの心の声(テレパシー)が世界に響く。宿命が、ありもしない未来へ強引に導かれた、この結末に驚きを隠せない。


「こ゛ん゛な゛と゛こ゛で゛、終゛わ゛っ゛て゛……た゛ま゛る゛も゛の゛か゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」


 刹那、ネックレスが首から離れ、ふわりと浮き始める。そのチェーンに繋がれていたのは――アズレーンの手に嵌められたはずの、九つ目の指輪だった。


「こ゛れ゛で゛……何゛も゛か゛も゛を゛終゛わ゛ら゛せ゛て゛や゛る゛! 全゛て゛壊゛し゛、全゛て゛や゛り゛直゛し゛、世゛界゛の゛根゛端゛か゛ら゛生゛ま゛れ゛変゛わ゛ら゛せ゛て゛や゛ろ゛う゛――」




始祖魔宝第十(しそまほうだいじゅう)天地閉焉(エンド・オブ・ヘブン)』――――



 世界にヒビが走る。それは一つの夢の終わり。創られた世界の終焉。或いは結末そのものか。そこから差し込んでくる朝焼けのような光が、世界の崩壊を優しく誘う。




「――それはさせないよ」


 走っていたヒビがピタリと止まる。代わりに遊園地だった世界(ここ)の入り口から何者かが近づいてくる。肩まで届くほどの長い銀髪に白衣を身に纏うその姿に、その気配に、アズレーンは身体を震わせる。


「やぁ……久しぶりだね、()()()()

「マ゛ヤ゛ネ゛ー゛ン゛……何゛で゛お゛前゛が゛っ゛……!?」

「そうだよね。だって僕は君に一度、幼い頃に殺された。かつての大蛇君が遊園地(ここ)で死んだあの日、君はアレス君と一緒にね。だからこの身体は元々僕のものではない。つまり今の僕は大蛇君と同じ、転生者なんだよ」

「転゛生゛……か゛。ふ゛、ふ゛は゛は゛、ふ゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛!!!!」


 アズレーンが突然笑い出すと連動して、頭を失った身体が笑うような動作をする。その不気味な光景をそう思わずに、マヤネーンは口を開く。


「……何がおかしいんだい? って、言いたいところだけどね。君の言う通りこの転生はおかしいよ。だって――」



 ――()()()()()()()()()()()()()なんて、普通じゃ考えられないからね。



 マヤネーンが両手に着けた手袋をゆっくりと外す。露わになった右手の小指には、アズレーンが嵌めていたのと同じ形の指輪が。


「――!!?」

「君は今、真実を知った。誰一人にも明かしていない、僕の本当の姿(真実)を」

「嘘゛だ゛ろ゛……お゛前゛が゛、そ゛ん゛な゛は゛ず゛が゛っ゛!!」

「――受け入れろ、これが君の……そして僕の宿命さ」


 右手を正面に翳す。小指の指輪がこれまでにないほど輝きだす。たちまち白衣が純白に金色の線が走る神装へ、髪が銀から白へと変化し、普段のマヤネーンからは感じられない神々しさを解き放ち、姿が見えないアズレーンでさえも理解するのに十分なほどだった。



「『始祖神ゲイム』――それが、僕に与えられた宿命(からだ)さ」

「ふ゛ざ゛け゛る゛な゛っ゛……指゛輪゛を゛一゛つ゛し゛か゛持゛た゛な゛い゛成゛り゛代゛わ゛り゛が゛っ゛!!」

「これを証明するのに指輪はこの一つで十分だよ。世界を、概念を、理を誕生させたのがこの指輪だからね。無論これは真なる始祖神にしか持ちえない、始祖神の象徴。いくら他の指輪を全て持っていたからって、始まりの神を……それを超えた存在だと己を称するのは烏滸がましいよ」


 翳した右手をアズレーンに向け、その身を強引に引き寄せる。その圧倒的、唯一無二の絶対に抗えぬまま、アズレーンは胸倉を掴まれる。


「神は永久(とこしえ)に一のみ。たとえ数多の神の力を兼ね揃えし存在だろうと、極限さえも誕生させたこの一には敵わない。何人たりとも、どのような存在であろうと、我に敵う者は在らず。故に我除く始祖司りし者を滅する――『始祖魔宝第一(しそまほうだいいち)無天冥災(ヘブンズ・ヘル)』」



 空を掴む右手から太陽の如く赤い光が差し込む。握りしめた拳の指の隙間から無数の線を描いては広がっていく。放たれる魔力はかつて渋谷を滅ぼしたのとは比にならないレベル。即ち、世界崩壊に等しいほどの魔力。


「偽善に満ちるこの宿命(せかい)に、破滅を――」

「我゛こ゛そ゛、世゛界゛を゛創゛り゛、生゛み゛続゛け゛る゛存゛在゛だ゛っ゛! こ゛ん゛な゛転゛生゛の゛果゛て゛の゛神゛の゛紛゛い゛物゛な゛ど゛に゛滅゛ぼ゛さ゛れ゛る゛も゛の゛か゛――」




 アズレーンをゲイムの光が包み、爆発と共に跡形残さず消えていく。刹那、それはこの世界全てを覆いつくし、面影すら消し飛ばす。



 『死の宿命』は、今ここに消え果てた――

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