第二百九十一話「奥義の共鳴」
最終任務:『死の宿命』の理滅
遂行者:ネフティスメンバー総員
凪沙さんの鼓舞にメンバー全員の士気が上がる。それはたちまち蒼白の光となり、全員の全身を覆う。いや、これは鼓舞によるものだけではない。確証はない。だが分かる。この光が、ボロボロのメンバー達を立ち上がらせる力は、剣として生まれ変わった鈴白から放たれているものだと。
そしてこれが、『終焉之剣』に秘められた力。自分の味方に己の奥義を共鳴させ、味方のあらゆる攻撃が全てこの技に収められる。簡単に言うならば、『自分の奥義を全員に共有という形で発動させ、その攻撃は全てこの奥義での攻撃になるため、全員が力尽きるまで連続攻撃を叩き込む事が出来る』というものだ。
「――見せてやるよ。これが……偽りの世界で確かに生まれた、俺の叛逆だっ!!」
右目から流れる血は白い炎と化し、身体は無意識に前進を始める。思考はアズレーンをここで殺す事以外の情報を完全に遮断していた。
前へ。ただひたすらに、前へ。限界なんてものはとっくにどこかへ置いてきた。恐怖とか悲しみとか、そんな事を考えた所で報われはしない。最初から分かりきっていただろう。
「貴゛様゛ら゛人゛間゛風゛情゛が゛っ゛……我゛を゛超゛え゛ら゛れ゛る゛と゛思゛う゛な゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
左手に嵌められた全ての指輪が煌めく。始祖魔宝を一斉に発動させる気だ。その間にも大地は再び割れ、空は斬り裂かれ、炎雷は世界を焼き尽くし、流星群は降り注ぐ。遊園地と呼ぶにはもう遅い。とっくに過去形へと変わり果ててしまった。
「させるかあああああああ!!!!」
真正面から突っ込み、上段に振り翳した剣をアズレーンの左肩目掛け振り下ろす。刃が肩に触れると同時に蒼白い火花と共に爆発を巻き起こす。その勢いのまま心臓に位置する場所まで刃を一気に滑らせる。更に爆発が両者を襲う。
「心゛臓゛を゛斬゛っ゛た゛と゛こ゛ろ゛で゛、始゛祖゛魔゛宝゛は゛止゛め゛ら゛れ゛ぬ゛っ゛!!!」
「人間を舐めるのもいい加減にしろっ!」
低空飛行のまま、背中に生えた二本の左腕が剣を持つ右手を引き剥がそうとがっしり掴む。それに負けぬよう、左手も柄に添えて何とか凌ぐ。
その間にも、メンバー達が仕掛け始める。頭上から居合の構えをとる人影。その瞳は大蛇の剣を掴む二本の腕を捉える。
「――『言音之刀・月花竜乱』」
その一振りは静かに、しかし派手に腕を細切れにしていく。
「凪沙っ!!」
「そのバトンパス、最高のタイミングだよ! 飛切くんっ!」
大蛇とアズレーンが拒み合いながら飛び続ける先に立ち塞がる凪沙さんに飛切がその名を叫ぶ。直後、自信に満ちた笑みを浮かべながら銃を構える。
「大蛇君、顔伏せて!」
「……!」
ふと身体が勝手にその指示に従う。無論そこに己の意志はない。ただ反射的に反応しただけ。何故唐突に顔を伏せる必要があるのか――理由はすぐに明かしてくれた。
「『氷砲玉壊』――」
あの日……ハロウィンの際に、かつての親友が私に放った技。そして今度は私が私を殺そうとした技を放つ。それも、決して敵うどころか指先すら届きやしないはずの別次元の生命体に。
「――じゃあね」
さよならの宣告と共に引き金が引かれる。銃口から放出されてからアズレーンの脳を貫くまでは一瞬だった。




