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黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》  作者: Siranui
終章 終着輪廻決戦編
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第二百七十八話「過去との別れ、未来に囁く願い」

 Anomaly:アズレーン・シューベル及び完全顕現『葬無冥殺之機神鈴白ほうむめいさつのきしんすずしろ』、呪命之原獣神・アグリゲートの討伐

 遂行者:ミスリア・セリウス



 蒼い光線が徐々に細くなり、消えていく。それに併せて鈴白が身体の各部から爆発させる。両腕が爆風で吹き飛び、銃を撃たれた人のように後ろによろめきながら背中から倒れる。


「――っ!」


 大蛇が鈴白に向かって走り出す。爆風で吹き飛びそうになる身体を両足で必死に踏みとどまりながらも、ひたすら前に足を踏み出す。


(きっとあの中に、いるはずだ……俺がずっと探していた、アカネが……)

「……助けにきたぞ、アカネ!」


 機体が爆発と共に炎上していく。それでも大蛇は業火が広がる鈴白の胴体まで飛び乗り、彼女がいると思われる機体の胸部まで走り出す。


「っ……! もう少しの辛抱だ。すぐ出してやる……!」


 右腕を闇が覆い、竜の爪を体現させる。直後、鈴白の胸部を引っ掻くように右腕を振り下ろす。黒い装甲が竜の爪によって剥がされ、その中にはカプセルの中で眠る少女の姿があった。間違いなく、あれはアカネだった。


「アカネっ……!」


 内部から警告音が鳴り響く。ひび割れた画面には『WARNING』という文字が赤い背景と共に点滅していた。


「もうすぐだ、今このカプセル開けたらもう大丈夫だ……だから少しだけ我慢しろ――」



 ――ごめんね。このままで、いさせてくれる?


「は……?」


 突如何者かがテレパシーで大蛇に語り掛けた。その声の主はもう分かっていた。このカプセルに仰向けになって眠る、幼い少女の声だった。その言葉に、大蛇は驚きを隠せずにいた。


鈴白(これ)も、私だから。こうしてまた会えただけで……私は十分に嬉しいの』

「そんなっ……俺は今度こそお前を助けるって約束して……ここまでやってきたのに、それを求めたお前が拒否してどうするんだ!」

『――あのね、私、恩返しをしたかったの。確かに前は結局別れた直後に殺されちゃったけど、でもね……それでもあの時、化け物から私を助けてくれて……ほんとに嬉しかったの。でもまだお返ししてないまま生き別れちゃったから。だから、恩返し……させてほしいな』



 ――今度は私が命を懸けて、君を守りたいの。


「――!?」


 突然、身体が浮いては鈴白から離れていく。どれだけじたばたしても結果は変わらずだった。


『――最後くらい、君のためにこの命を使いたいっ!』



 ゆっくりと鈴白が立ち上がる。各所から装甲の破片が飛び散るが、それでも前に動き出した。その先に見えるは――ミスリア先生とアズレーン、そしてアグリゲートだった。


「鈴白が……自我を取り戻したっ……!? 嘘だ、あの北条君の結界魔術を鈴白の肉体に埋め込んだというんだぞ!」

『……お姉ちゃん、彼の事……これからよろしくね』


 今の鈴白に唯一残された武器である胸部の大砲の砲身をアズレーンに向ける。ほんの数秒で凄まじいエネルギーが収束していく。


「……まずい、鈴白を止めなければっ!」


 とてつもない危機感を覚え、アズレーンはミスリア先生を振り切って前に走り、アグリゲートに命じる。


「裏切り者には制裁を下さなければな! 放て、『始終之破光オープニングディヴァイン』!」


 アグリゲートが口から炎のような光を収束させ、一気に解き放つ。紅い閃光が一直線に空を裂いた。


『やああああああああああああああ!!!!!』



 鈴白もそれと同時に巨大なレーザーを発射させる。互いのレーザーはすれ違い、互いの身体を容赦なく焼き尽くした。



「アカネっ――――!!!!!」


 アグリゲートのレーザーに直撃した鈴白を目にした大蛇が叫ぶ。その直後、鈴白は大爆発を起こし、跡形も無く消し去っていった。





 ――鈴白に強制的に飛ばされた大蛇は戦闘が起きた広場から離れ、観覧車付近に両足が着地した。


 ……ものの、既に大蛇の両足が消えかけていた。


「……俺も潮時か」


 何だよ。どうせ終わるなら、アカネと一緒にいさせてくれたって良かったじゃないか。


「……いや、最期にやるべきことがあるか」


 両目から頬に伝う雫を拭い、今にも消えそうな両足で大蛇は元いた場所へ戻る。時に刀として自らを振るい、時に身体を託してくれた未来の己に、これからを託すために。


「――終わらせてくれ、黒神大蛇。俺から始まった、この穢れ切った宿命への叛逆を」

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