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黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》  作者: Siranui
終章 終着輪廻決戦編
275/313

第二百六十二話「紡いだ信頼、成長の証明」

 訓練:涼宮凪沙が力尽きるまで耐え凌ぐorネフティスメンバーを戦闘不能にする

 実施者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義を含む若手メンバー30名


「受け止めて、オロチっ……!」

(まずいっ……)


 頭上高くから雨の如く光の槍が降り注ぐ。直撃まで一秒も経たないだろうと確信する程の速さ、数。それらをこの状況は全て満たしていた。

 しかしそれと同時にその確信を変えようとしている者がいるのもまた事実であった。


「一か八か――賭けは趣味じゃねぇが全額ベットしてやらぁ!!」


 勢いよく左腰の鞘から火花を散らしながら刀を抜き、音速の速さで俺の前に姿を現しては刀身を桜色に輝かせた。


「『恋鐘之刀(こがねのとう)』……」


 正義の息が炎のように吐かれる。それに呼応するように刀身が更に燃え上がる。


「奥義――」


 今度は正義自身が刀身と同化するように激しく燃え上がり、掻い潜るように舞い上がっては一つ一つ光に刃を通して断ち斬る。


 この間僅か0.4秒。


「――『神無解祁(かむとけ)』」


 音も立てずに無数の光の槍が全て塵となっては恋鐘の炎に焼き消される。それを気にもせずに正義は顔を見上げ、その先にいる寧々さんに向けて刃を振るう。


「速い……」

「おらぁあああ!!!!」


 その勢いのまま正義の刀が寧々さんの身体に触れようとした、その刹那。


「……『触通鋼雷(タッチボルト)』」

「は……?」

「っ……!?」


 何と寧々さんは正義の刀を指3本でピシッと捉え、受け止めたのだ。更にそれだけでなく、そこから青白い電撃が正義の刀を伝って身体に伝わる。


「がっ……ぁああああ!!!!」

「私の魔術……『操天魔術(ウェザーコントロール)』は天候だけじゃないよ。風や波、静電気さえも自在に操って……好きなように発生させられる」

「くそっ……嬢ちゃんに金属は通用しねぇってか! ――黒坊、嬢ちゃんは俺に任せとけ!」


 歯を食いしばりながらも余裕そうな笑みを俺の方に向けながら、正義は叫んだ。間一髪で直撃を避けれたからには、正義の作ったチャンスを無駄にするわけにはいかない。


「……任せた」


 寧々さんは正義に任せ、左右からそれぞれ攻撃を仕掛けてくるベディヴィエルと零さんことゼロヴィオンに集中する。


「来るかっ……!」


 まず圧倒的に攻撃速度の速いゼロヴィオンに向かって低い位置から突進し、左足を突き出す。


「俺のキックと張り合おうってか! いいぜ、掛かってこい……! 『爆炎蹴焼剣ビッグバーニングキック』!!」

 

 対して零さんも俺の突進に即座に反応し、攻撃を短剣から蹴りに切り替える。その後俺と同じ位置まで低く突進し、右足を突き出す。

 ゼロヴィオンの右足が激しい炎を纏う。そこから襲ってくる熱さに俺は顔を険しくさせる中、左足がゼロヴィオンの右足と衝突した。


「……このままだと俺に負けるぜ?」

「あぁそうかよ。なら無理矢理それを捻じ曲げるだけだっ……!」


 言い終わりと同時に俺は全身を捻って左足を右に払う。その勢いのまま、ゼロヴィオンの右足が無意識に同じ方向に払われたところに右足の踵で蹴りを喰らわせる。背中を直撃し、ゼロヴィオンは大きく吹き飛んだ。


 壁に背中をぶつけ、左手で擦りながら立ち上がり、ゼロヴィオンは周囲の状況を確認する。


「ぐっ……へぇ、若いもんにしてはやるじゃん。流石は『黒き英雄』だな」

「――『溶歪地変(メルトフィールド)』」

「なっ……!!?」


 突如ゼロヴィオンの足元が泥沼のように地面が液状化し、立ち上がろうとしたゼロヴィオンの両足が段々と地面のその中へと沈んでいく。


「――ダメだよ、正義のヒーローがよそ見なんて。警戒しなきゃいけないのは彼だけじゃないよ」

「き、君は……」


 ゼロヴィオンが顔を上げたその先には、右手に直剣を携えながら左手で魔術を唱えている男の姿があった。


「――ギール・クレイグ。前にほんのちょっとだけ『黒き英雄』と対峙した、ラッキー人間さ」


 

 一方、亜玲澄はただ一人で雛乃さんの弓を避けつつ凪沙さんの猛攻を凌いでいた。


「さぁ、大蛇君の相棒さん! 君の実力、見せてもらうよ!!」

「……そういえば、凪沙さんとはまだ剣を交えてなかったっけか」


 ふと思った事を脳裏に浮かばせている中、凪沙さんの持つ槍が凄まじい勢いで亜玲澄に叩き振ったり突いたりしていく。身体を回転させ、捻らせ、槍を軽々と振り回しながら徐々に迫ってくる。


「……相変わらずえげつねぇフィジカルだなぁ! こいつとアイドル相手は流石にこの俺とて厳しいぜ白神っ!!」

『それまで戦おう。ダメだったら同じ化け物フィジカルの大蛇に凪沙さんを任せる』

「……んじゃ、それまで精々戦ってやんよ!」


 亜玲澄は再度『二重人格(ダブルフェイサー)』を発動させ、迫りくる凪沙さんの猛攻を全て左手の剣で凌ぐ。その隙に空いた右手を凪沙さん目掛けて翳す。


「『天焼陽線エクスターミレイト・サン』」


 右手の平から太陽の光が収束し、一筋の光線を放った。凄まじい速さに凪沙さんは攻撃の手を止め、両足で跳ぶと同時に背中を反り、光線をバク転で回避する。朱色の光線が凪沙さんの鼻先をギリギリのところで通過する。


「あっぶなぁ〜っ! あ、ひなのん!」

「ここは私に任せてっ……『無散花矢(ブライディ・ステラ)』!」


 凪沙さんの背後で弓を構える雛乃さんが魔力で作られた一筋の矢を右手で持っては弓を引く。そしてそれが放たれ、流星の如く太陽の光線と激しくぶつかって相殺される。


「ちっ……読まれてやがった!」

『後ろだ、アレス!』

「んなっ――」


 後ろを向くとそこには勝利を確信したように笑みを浮かべる凪沙さんの姿が。


「ふふんっ、油断しきって甘々スゥイーティーだねぇ!」

「くそっ……あの侍が言いそうな事言いやがって――って」


 再び後ろを向くと、今度はエメラルド色の二刀を振りかざす少女の姿が。


「……ふふんっ、美女二人に挟まれたわねっ!」

「おいおい……いつからいたんだあんた!」


 予想外な展開に亜玲澄が戸惑う中、前後から同時に攻撃が亜玲澄を襲う――





「――ちぃっ!!」

「っ……!?」


 その瞬間、黒髪の青年が右手の剣で凪沙さんの槍を間一髪で受け止めた。


「亜玲澄、羽衣音さんを頼むっ!」

「大蛇……へっ、この借りは返すぜ! 来いよおちびちゃんよぉおお!!」

「誰が……チビよこのぉおおお!!!」


 突然の助け舟に驚きつつも、しっかりと羽衣音さんの縦回転斬りを剣で受け止める。その後すぐに振り上げ、俺から距離を取るように亜玲澄は羽衣音さんに攻撃を仕掛ける。


 そして俺の登場に凪沙さんはふふっと嬉しそうに微笑んで――


「――ようやく見れるよ、君の成長した姿を……ねっ!」

「…………!」


 蘇ってくる、昔の思い出。それは前世の過ちでも、過去の悲劇でもない。この黒神大蛇という()()()()()()()()の中に在る、幼き頃の記憶が――


「――見せてやるよ。俺が生きる(たたかう)意味を、覚悟を……この場にいる全員に証明してやる」


 それは他人のみならず、何より俺自身への証明となるのだから――

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