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黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》  作者: Siranui
第八章 千夜聖戦・争奏編
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第二百三十一話「争奏・間奏Ⅳ~兄としての覚悟~」

 任務:千夜聖戦の勝利、エレイナ・ヴィーナスの奪還

 遂行者:新生ネフティスメンバー総員、またそれに加担する者

 犠牲者:0名



 同時刻 東京都足立区 ネフティス本部


 普段は数々の任務等で騒がしかったメインルームだが、今は人の足音すら聞こえない。映画のスクリーンくらいの大きさのモニターも、今は存在感すら薄れつつある。

 そんなメインルームの最後尾かつ左端の席に座る白衣の男……マヤネーン博士はふと振り向いた矢先に、二人の人影を捉えた。同時にふっと笑みを浮かべる。



「――おかえり、亜玲澄君。おや……?」


 マヤネーンはふと笑顔から不思議そうな表情へと変える。函館から帰ってきた亜玲澄の表情が一層暗いからだ。


「……どうかした?」

「博士、もう限界だ。エレイナを攫った奴らの居場所に行かせてくれ」

「……!」


 訴えかけるように、或いは懇願するかのように、亜玲澄は博士に心の声を吐いた。


「確かに今は桐谷優羽汰の裏切りくらいしか情報が無い。そんなほぼ未知の状態だから無闇に戦場に赴くのが危険なのは分かっている」

「亜玲澄君……」

「でも俺の妹が攫われてるんだ! 唯一の家族が!! 今こうしている間も命の危険に晒されているんだぞ! あいつの兄として……命の一つも賭けないまま妹を死なせるなんて事出来るかよ!!!」 



 叫ぶ。抱いてる危機感を全て曝け出す。



 伝える。兄としての、妹を救うために戦う固い意志を伝える。



 ――それだけで、俺が戦う理由は十分だろ。




「――――『廃無の惑星』テューレル、アレクレッド城。そこにエレイナちゃんを攫った組織のボスがいる」

「……!」

「先に向かった芽依ちゃんのお陰で転送装置でいつでもテューレルに行き来出来るようになってると思う。ほんとはもう少し情報を掴めるまで行かせたく無かったけど、今は亜玲澄君の意見を尊重するよ。でもこれだけは言わせて……何が何でも死なないで」

「博士……」

 

 今度は博士が戦場に赴く戦神に願う。必ず生きて帰ってと。


「……必ず、エレイナを連れて生きて帰る」


 戦神は誓う。エレイナも、自分自身も全て己の手で救うと。



 ――やはりそれだけで十分だった。かつては人魚だった一人の少女を救うためだけに、二人が命を張る意志自体は変わらないのだから。


「……健闘を祈るよ」


 マヤネーン博士は少し寂しそうな笑みを浮かべながら、走り去っていく亜玲澄に軽く手を振った。亜玲澄は振り返る事もなく、メインルームを後にした。


「……嫌な感じだな」


 マヤネーンがふと不安を呟く。椅子の背もたれに体重をかけ、天井を見上げながら。


「あの時と、同じだ。幼い頃に父さんが行方不明になった時と、同じだ……」


 もしこのまま時間が進めば、このまま亜玲澄君や他のメンバーがエレイナちゃんを攫った集団と抗争になれば……間違いなくこちら側は負ける。それはつまり――


「――今から何かを変えない限り、()()()()()()()()()()


 マヤネーンは予知していた。エレイナ・ヴィーナスの死こそ、真の意味でネフティスは破滅を招き、そして『黒き英雄』を死に至らしめたあの事件へと繋がる――と。


 

「はっきりと見える……絶望へと向かっていくネフティスの姿が。正嗣さんがいなくなってから少しずつ嫌な予感はしていた。やはりその通りだ。ネフティスを統治する者二人が消えた今、確実にネフティスは衰退している……滅ぶのも時間の問題だ」


 最悪、エレイナちゃんかネフティス……どっちかを殺める運命に直面するかもしれない。だがそれを決めるのも、そんな運命を断つのも、全て『黒き英雄』の転生者である彼に委ねる他無い。


「――『死の宿命』は、もう目の前まで迫ってるよ……大蛇君」

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