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黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》  作者: Siranui
第八章 千夜聖戦・争奏編
242/313

第二百二十九話「争奏・間奏Ⅱ~聖戦の前夜祭~」

 西暦2005年12月24日 深夜4時00分


 東京都足立区ネフティス本部、北海道札幌市、『廃無の惑星』テューレルの以上三つの地点にて、『千夜聖戦』は予定より一日早く開戦した。ネフティス側の二人の奇襲者(サプライザー)によって――



 ◇

 任務:千夜聖戦の勝利、エレイナ・ヴィーナスの奪還

 遂行者:新生ネフティスメンバー総員、またそれに加担する者

 犠牲者:0名



 テューレル アレクレッド城――


 深く、暗い夜の闇の下でさえこの城は存在感を感じさせる。だが今は人の声も、パイプオルガンの音色も、靴音さえ聞こえないしんとした空気感に満ちていた。まるで今亡き『ヴェルサイユの失敗作』のように。


 そんな城フィーナ皇女の玉座の間で、白神亜瑠栖(しらかみあるす)はただ一人玉座に腰掛け、右手から禍々しい黒剣を召喚して刀身をじっと見つめる。


「かの時代の英雄を導き、歪ませたとされる悲劇の剣……か」


 血で塗り固めたように黒く、若干紅く染められたその剣は、暗闇の中でも禍々しく輝いていた。


「――少し早いけど、始めようか。戦士の戯れを」


 刹那、正面の巨大な扉が勢いよく開かれる音がした。同時に目に見えない程の速度で亜瑠栖の心臓目掛けて何者かが大剣を突き刺そうとする。しかし、それより速く亜瑠栖はサーシェスの大剣を右に避け、耳元で囁く。


「……サーシェスか。相変わらず早いね」

「――!?」


 直後、サーシェスの腹部を左拳で殴る。左手から光る黒い閃光が巨漢を穿つ。


「ぐっ……!」


 サーシェスは瞬時に玉座の間から吹き飛ばされ、赤いカーペットが敷かれた長い廊下に転がり落ちる。


「僕しかいない時間を定めての奇襲か。やるね……ネフティスも!」

「くっ……!」

「最初からいるのバレバレだよ、怪盗ちゃん!」


 サーシェスが作った僅かな隙を狙い、背後から五枚のトランプを構えた芽依の右腕を亜瑠栖はいとも簡単に掴み、ぶんぶんと振り回してから投げ飛ばす。


「なっ……!?」


 吹っ飛ばされた時に床にぶつけた背中をさすりながら立ち上がったサーシェスにまたもや悲劇が待っていた。そう、こっちに凄まじい速さで芽依が飛んできたのだ。


「ウソダロ……!?」

「避けてえええええ!!!!」


 だが、もう遅い。サーシェスが気付いた時には既に芽依の顔が胸部に突撃していた。


 再びサーシェスは後方に吹っ飛ばされ、芽依の頭を守るように抱えながら柱の一角に背中を強打する。


「うぅ……ごめん、大丈夫?」

「タイシタコトネェ……オロチトノタタカイニ、クラベタラナ!」

「そっか……でも無理はしないでね!」

(え、日本語ペラペラじゃんこの人……留学してたのかな?)


 サーシェスのあまりに流暢な日本語に驚くが、すぐに目の前の戦闘に意識を切り替える。


(間違いない、あれが仮面軍団のボス……なら今のうちに一つでも傷跡残さないと!)

「行くよっ……」


 芽依は両手で十枚のトランプを構え、真っ直ぐ投げる。その直後に芽依が両手を叩く音が城内に響く。


増像自変(インクリース)!」


 十人増えた芽依はそれぞれ壁や天井を駆け抜けながら玉座の間にいる亜瑠栖に襲い掛かる。


「……無意味だ」


 亜瑠栖は左手の人差し指を一人の分身に指し、指先から光線を放つ。次第に光は芽依の分身全ての脳を伝って焼き穿つ。


 ――が、しかし。


「全員消えた……?」


 嘘だ、あの中に間違いなく本物がいた。遠目だったが怪盗ちゃんが持ってたトランプは十枚。そして僕に襲い掛かった数は十一。あの中に本物がいないと辻褄が合わない。


「……隠れたな」


 亜瑠栖は背後の壁に両手をつき、指先から光を瞬時に流す。壁に天井、床下から何まで全てに光を通し、確実に焼き殺す。ちなみにこの光の魔術は先祖から血と共に受け継がれたものだ。


「どこにもいない……」


 城内外全てに魔力を巡らせても気配すら感じない。まさか逃げたのか……と思った矢先だった。


 ドスッ――っと背後から何かを突き刺したような鈍い音がした。


「っ――!」


 これが本物だ。厄介だからここで殺す。痛みなんて気にしてる場合じゃない。


 ――殺す。



光触壊波(タッチブレイクェーブ)


 振り向くと同時に青白く光る左手を芽依の右腕に触れる。だがその時だった。


「――は?」


 ……見えた。見てしまった。見えてしまった。もう死んだはずの人間が。


「――君とこうなる運命は描いていなかったのだがね……どういうつもりかな、亜瑠栖君」


 ハロウィンの亡霊と共に消えた奴が、今確かにこの場にいる。これこそ運命の悪戯というものなのだろうか。


「……北条銀二っ!!」

「今から明かしてあげよう……とっておきの魔術(トリック)を、ね」

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