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黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》  作者: Siranui
第七章 千夜聖戦・斬曲編
231/313

第二百十八話「謎の復讐(上)」

 秘匿任務:行方不明者の捜索及び奪還、誘拐犯の討伐、謎の刺客黒神元利の討伐

 遂行者:黒神大蛇、丸山雛乃、マヤネーン・シューベル

 犠牲者:0名



  西暦2005年11月11日 東京都渋谷区――


 闇より黒く染まった荒れ果てた街の夜に申し訳程度の月光がぼんやりと照らす。その下で二つの人影がスラムと化した地を歩いていた。


「――にしても博士のやつ、こんな夜中に渋谷の捜索させるなんて頭狂っちまったのかぁ? ふあぁっ……ねみぃ」


 そう、こうなったきっかけは数時間前の事――


「正義君、お願いあるんだけど」


 いつも通りふらっと博士が現れて、俺の肩をぽんぽんと叩きながら呼ぶ。


「ん、何すか博士」

「ちょっとさ、今から彼女とエレイナを攫った誘拐犯を探してほしいんだけど」

「はぁ? こんな時間にすか? もう23時32分46秒っすよ!?」

「こんな時間だからこそだよ。それに、一刻も早くエレイナちゃんを奪還したいだろう? お願いだよぉ〜! 

 あ、それとこの子はネフティスNo.8の姫原紗切ちゃん。忍者と侍のコンビで頑張ってほしいんだよね〜」

「……しょうがねぇなぁ。博士の要望通り行ってやりますよっと」


 こうして、侍と忍者のコンビが今になって結成することとなったのだ。



「まぁ、博士なりに色々考えてると思うよ」

「それに初対面の俺らをセットにしやがって……共通点和風キャラってとこだけだろうが!」


 しかし、この俺――武刀正義はぐちぐちと独り言の如くマヤネーン博士への愚痴を吐いていた。

 

 何故か俺は『エレイナちゃんの誘拐犯』を探すべく、ネフティスNo.8の姫原紗切(ひめはらさぎり)ちゃんと無理矢理組まされてこの渋谷の地に足を踏み入れたのだ。

 ハロウィン戦争の爪痕がくっきりと残っている渋谷()()()街に、初対面かつ前に黒坊……黒神大蛇と剣を交えた敵である彼女と共に任務遂行にあたっている。何とも居心地が悪い環境に身を置かれているが、とにかく紗切ちゃんがナイスバディで可愛いってだけが唯一の救いだった。


「あははっ、確かに私達忍者と侍だもんね」

「服装だけで相性いいとか言いやがってあのオタク! 仕返しに今度博士の家の秘密の隠し部屋ネフティス中に一斉拡散してやる」

「まぁまぁ正義君、実際私達相性良さそうだけどね?」

「へっ、ちょっ……!?」


 突如紗切ちゃんが俺の方に身体を寄せながらぐいっと顔を近づける。反射で顔を反らすもその分詰められる。それも小悪魔のような笑みを浮かべながら。


「……『良さそう』じゃなくて『抜群』の間違いかな?」

「え、えっと……そ、そそそうだな多分博士もそこんとこ見てるんだろうなーあはははーーー」


 ふと恥ずかしくなり、何とか平常心を装いながら三日月の方に目をやる。こんなみっともない顔を初対面のお嬢ちゃんに見られたくない。弱さを見せるというのは俺の……いや、男のプライドが許さない。


「ぷっ……ふふふっ」


 突然紗切ちゃんが腹を抱えながら笑い出した。今の反応を面白がって馬鹿にしているに違いない。

 

「んなっ、何だよ笑いやがって!」

「いや、照れる姿を隠してるの可愛いな~って」

「アホか! 黒坊じゃあるまいし! こんなん照れるうちに入んねぇよ!!」

「顔、赤いよ?」

「顔、近すぎなんだよ」


 恥ずかしがりながら冷静に突っ込みを入れる俺にまた笑いだした。


「ふふっ、私の容姿(ビジュアル)もまだまだ現役だね~♪」

「どういう意味だよ……ったく、恥かかせやがって」

「あ、今照れてるって認めた~!」

「うるせぇさっさと終わらせんぞ!!」

「ふふっ、はぁ~いっ♪」


 流石に耐えられなくなった俺のツンとした反応を見て、紗切ちゃんはにやにやしながら俺の後ろについてくように歩いた。それも少しでもくっつこうという思考が丸見えなくらいに。嬉しいけど紗切ちゃん相手じゃ調子が狂う。本気かからかってるのかが分からないからな。


「……帰ったら博士の顔面マジで殴ろ」


 紗切ちゃんに聞こえない程度の小声で呟いた。しかしそれも夜に吹くひんやりとした風と共に流れていく。その心地よさに癒されながら歩いている時、事態は一変した。


「っ……!」

「えっ……」


 突如目の前に現れた白のコートを羽織った黒髪の青年。背中に竜の形をした鞘が見え、一瞬強く吹いた風がコートをなびかせた。


「竜坊……」

「桐谷、君……?」

「……止めに来たのか。俺の()()を」


 急に変な事を言いだしてきて、俺は息を呑んだ。その直後に彼……桐谷優羽汰の発言を否定するように言い放つ。


「は……? 何言ってんだよ! 誘拐犯の捜索……もそうだけどよぉ、ハロウィン戦争からずっとお前がいないから連れ戻して来いって博士から言われてんだ! 皆心配してんぞ……早く帰――」

「――俺はもうネフティスの人間じゃねぇ」

「「――!?」」


 二人して驚きを隠せずにいた。久しぶりに会ってすぐにネフティスを辞めたと言っているようなものだ。そして今の優羽汰の発言から俺は悟った。


 ――誘拐犯はこいつだな、と。



「――悪いな、やっぱ予定変更だ。てめぇのその復讐ってやつを止めにきたぜ」

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