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原初之話「プロローグ」
――ここは現代であり、同時に魔術やあらゆる種族の生命が存在する『歪みきった世界』。無論元よりそうだったわけではない。
その全ての根端はある厄災から始まった。
少し昔の話をしよう。遥か昔、一匹の巨大な竜が日本を、天界を焼き尽くした。全てが火の海に変わり果てようとしたその時、スサノオノミコトという者がその竜を殺し、人々を救った。これぞ古事記にも載っているとされる物語……ヤマタノオロチ伝説。
だが人類のほとんどはその伝説を素直に信じ込んでいた。勿論それが事実なのだから当然の事。しかしある日、そんな伝説はある日を境に一変した。
これから描かれるのは、そんなある日からのお話。今度は厄災竜としてではなく、唯一人の人間として。輪廻を通じて過去の過ちを背負い、全てを失い、自らを呪った魂を宿した、未来の己として――
――世界が生み出す不条理な運命の中で、一度失ったものを取り戻す……そんな不条理な物語。