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黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》  作者: Siranui
第六章 ハロウィン戦争編
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第百七十五話「一斉乱入」

 最優先緊急任務:東京都渋谷区に起きた異常事態の調査


 遂行者:ネフティス全メンバー

 犠牲者:???



 光が夜の闇に飲まれるように消えていく。徐々に右拳を地面に突きおろしたまま一時停止している黒服の青年の姿が(あらわ)になる。

 

「トリック……オア……トリィィィィトォォォォォアアア!!!」

(今のを一掃したというのに早速向こうの増援か……)


 俺はもうあらゆる力を一滴残さず使い切った。体力なんてとっくに無い。魔力も北条に根こそぎ奪われた。そして禁忌魔法の魔力源となる負力も、北条を倒すのに全て使った。


 もう俺はやりきった。後は宿命に負ける時まで待つだけだ。それしか出来ることが無い。俺の前に敷かれたレールはこの一方通行だ。


「トリィィィィィィ!!!!」


 ――()()()、エレイナ。最後の最後までお前を守る事が出来なかった。やっぱり俺には無理だったよ。人を……大切な存在を守るだなんて。

 そもそも本来存在しないはずのこの世界で、最初からそんな理想が実現するわけがなかったんだ。『一度失ったものを取り戻し、守り抜く』なんてこと。数多の命を焼き尽くしてきた俺にはそんなの向いていなかった。



「…………さよならだ、エレイナ――」


 そっと目を(つむ)る。開いた所でその先に映るのは亡霊の鋭い鎌だ。その先に希望も、理想も、未来もない。ここがもう行き止まりなのだ。


 亡霊が回転しながら鎌を振り回し、勢いに乗せて上段に振りかぶる。そして風を深く裂く音と同時に鋭利な刃が俺の頭から真っ二つに斬り裂いて――







「……今だ、突撃しろ!! 回復隊は大蛇君を後ろに退かせて回復を! 私も突撃する!!!」

「会長、こっちも援護します! ……全員一斉に魔法を放て! どの属性でも構わない! とにかく放って奴らの弱点を探るぞ!!」

「頼んだぞ、銀河! ……剣血喝祭以来だな、大蛇君」

「――!!」


 ……刹那、この運命は大きく変わった。本来一方通行だったはずの俺の運命のレールが新たに敷かれた。「分かれ道」という名の新たな生き残る希望を。


「……今更になるが、あの時はすまなかった。この戦争を引き起こしたのも、その根端は学院祭にあり、全て私の責任だ。北条さんを黒幕と見抜けなかった挙句、我がアルスタリア学院の一生徒である君を死器という存在だけで殺そうとした。この援助はほんの僅かのお詫びだと思ってくれて構わない。当然、許してほしいとも思っていない」


 本当に、今更だ。一体誰のおかげでこんな目に遭ってると思ってるんだ。でももし俺があの学校に入学していなければ、今この渋谷含め日本がどうなったか分からなかった。最初からエリミネイトが北条の手に回っていたかもしれない。

 でも、そんな過去の過程などどうでもいい。それを嘆いたところで未来に光は差し込まない。復讐も果たせない。だから俺は残った力全てを振り絞って彼に言い放った。


「――過去の詫びは地獄でいくらでも聞いてやる。 だから今は……死ぬなよ、生徒会長」


 言い切った直後、ついに身体の限界を迎えた。自然と背中から倒れるのを感じ、ベディヴィエルの両手に後頭部を置いたと同時に再び意識を失った。

 力尽き果てて倒れた俺を歩道の一角に優しく置き、ベディヴィエルは背中の鞘からジャリィィィィンッと甲高い音を立てながら引き抜く。


「当然君に与えられた任務は果たすよ。僕を誰だと思っているんだい? 共にこの命を賭けて互角に剣を交えた好敵手(ライバル)ではないか。あんなハロウィンの仮装集団如きに無様に散るほど私も甘くはない!!」


 ベディヴィエルは右足を後ろに引き、腰を落として剣を正面に構える。そして刹那、炎を(まと)ったベディヴィエルの突進が仮装集団に襲い掛かった。


「アルスタリア全生徒に告ぐ! これはこの世界に限らず、人類の存続を決める歴史に残る戦争となるだろう! 将来我々が目指すネフティスの未来が掛かっている! 私達は今、その戦いの最前線にいる……命に代えてでも、ネフティスを……人類を守るために剣を振るえ!!!!」


 おおおおおおおっ!!!!! と雄叫びをあげながら生徒達は仮装亡霊集団と交戦する。


「お前ら……」


 俺を生かすために、この戦争に勝つために生徒一人一人が命を賭けてハロウィンの亡霊と戦っている。全ては北条の野望を……ベディヴィエルが犯してしまった過ちの権化を止めるために。


 突撃するアルスタリアの生徒達の中に、一人の黒い影が俺の横を通り抜けた。そして俺に向かって何か言っているのが何となく分かった。


「大蛇さんは、私が殺させません――」


 あの剣血喝祭を共に乗り越えた『もう一人の相棒』の声で、そう言っているように感じた。

 そしてその影も、ハロウィン戦争の波へと飲み込まれていった――

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