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黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》  作者: Siranui
第六章 ハロウィン戦争編
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第百六十五話「争う理由」

 緊急任務:ネフティスNo.6北条銀二の討伐、地球防衛組織ネフティスを北条の支配から奪還する


 遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ・ヴィーナス、涼宮凪沙、サーシェス、ミスリア、アルスタリア高等学院全生徒 

 犠牲者:黒神大蛇



 黒神大蛇殺害から約30分前――


 一方渋谷のあるショッピングモール内では、亜玲澄と正義が雛乃との戦闘を繰り広げていた。


「もう、せっかくいい感じだったのに……」


 雛乃が狙った数少ないチャンスを逃し、再び機会を待つかのように弓を構えたその刹那、純白の戦神はニヤリと白い歯を見せる。


「残念だったな、今度は俺の番だ」


 亜玲澄が建物から飛び降り、左手を高らかに伸ばしたその時。小指にはめている指輪がきらりと煌めき、手の平から燃え上がるように太陽が出現した。それはまるで渋谷を燃やし尽くすかのように熱く、無慈悲で、容赦なく概念を溶かす、禁忌に近い亜玲澄のもう一つの神器。


「あれはっ……!」

「……へっ、こんな都会にそれぶちかますとかクレイジーすぎんだろ」


 この時、誰もが亜玲澄が渋谷の空を埋め尽くす程の太陽を直接ぶつけて焼き尽くす……そう思っていた。


「おいおい侍! いくら何でもそんなイカれた事出来るかよ! これでも人間守る立場にいるんだよ俺はよぉ!!」


 すると、亜玲澄は左手を太陽に直接入れた途端、巨大な太陽が形を変えて弓のような形に変化させた。


「太陽が……弓にっ……」

「剣と魔法しか使えねぇ神なんて神じゃねぇぇぇんだよ!!」


 メラメラと燃える太陽の弓から矢が生成され、右手でそれを思い切り引く。矢先から三層の魔法陣が浮かぶ。


「おいおいマジかよ白坊の奴! これじゃ俺諸共焼かれちまうぜ!!」

「そのイレギュラーな身体能力で逃れられるだろ! おらよぉ!!」


 亜玲澄の右手が矢尻から離れ、太陽の魔力で作られた矢が赤い直線を描きながら飛んでいく。矢はショッピングモールの中に入った直後に大爆発を起こした。


「……ある程度手加減してこれか。まぁ崩れ落ちねぇ分大したもんってとこか」

『おい、建物の心配してる場合か! 正義の心配を優先しろ!』

「その上で言ってるから安心しろよ。ったく……お固ぇ未来(おれ)だな」


 爆発で黒煙が上がり続けるショッピングモールを眺めながら、亜玲澄はそう未来の自分に吐き捨てる。その目の先には何とか爆発を回避した正義とその左手に掴まれてる雛乃の姿が写っていた。


「……おい、何の真似だ侍」

「言っとくけどよぉ、この戦いで殺すのは北条だけでいいだろうが! まぁ俺も人の事言えねぇが、それ以外は全員拘束させるだけでいいんじゃねぇのか!? このままじゃ日本のハロウィンが完全に地獄絵図なっちまうぜ!」


 はぁ……これだから人間はしょうもなくて愚かな存在なんだ。敵を助ける意味がそんなにあるのか。この隙を狙って殺しにくるかもしれないというのに。


「君……何で助けたの?」

「……今は敵かもしれねぇが、元は仲間だったんだ。それにあんたらは本来根っからこの戦いに参加するはずもなかったろ。それなのにこんな無意味な戦いで死ぬほど残酷なものはねぇ……そう思わねぇか?」


 はぁ……こんな時にかっこつけやがって。マジで何て奴なんだ、あの男は。どんだけ女に飢えてるんだ。いや……それほどまでに無意味な死は避けたいと言ったところか。敵も味方も、関係なく。北条銀二以外を殺す理由は正義には無いということか。


 どうせ、あの邪竜も同じ事を考えているだろうな。


「……なら必然的に俺もそれについてくしかねぇか」


 左手に持つ弓を消し、宙に浮く太陽の魔力を指輪に吸収させ、右手で煙を払いながら建物の中に入る。


「ごふっ……おい、雑に煙払うんじゃねぇよ白坊!」

「逆に丁寧な払い方を教えてくれよ……」

「ふふっ……」


 亜玲澄と正義のいつものやり取りで雛乃は思わず笑みをこぼす。いつの間にか正義の左手から雛乃は離れ、二人に向かって優しく微笑む。


「何か不思議だけど……ありがとね。よく考えたら君の言う通りだね……これは北条さんと死器使いだけの問題であって、私達が殺し合う理由なんてどこにもない。今を生きる人達を守るネフティスの立場として、共食いをするような事なんておかしい話だよね」

「……北条の呪いから解かれたってとこだな、嬢ちゃん」

「言っておくが、その人一応ネフティスメンバーだからな。俺達より断然お偉いさんだぜ」

「げっ……すっかり忘れちまったぁぁ!!」

「ふふっ……大丈夫だよ、年齢差もそこまで無いと思うし……!」


 あぁ……本当に、おかしい話だ。この世界は歪んでる。悪い意味でも、同時に奇跡的な意味でも。人間のたった一言が一人の道を大きく変える事になるのだから。


 ――今になって納得する。かつて敵同士だった大蛇と正義が突如仲間になった事が。きっと任務を通じてお互いに影響を受け合って成長しているのだろうな。そして最終的には……


「……結局、似た者同士じゃねぇか」


 正義と雛乃が話している中、亜玲澄はぼそっと独り言を吐いた。

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