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黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》  作者: Siranui
第六章 ハロウィン戦争編
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第百五十五話「愛の落とし穴」

 緊急任務:ネフティスNo.6北条銀二の討伐、地球防衛組織ネフティスを北条の支配から奪還する


 遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、武刀正義、エレイナ・ヴィーナス、涼宮凪沙、サーシェス、ミスリア、アルスタリア高等学院全生徒 

 犠牲者:???




 丸山雛乃(まるやまひなの)。彼女からは戦争という言葉を想像つかせない。それ故、北条がネフティスを率いて仕掛けた理不尽極まりない戦争で戦わなければならない以上の苦痛は無い。実質アイドルと殺し合いをするという残酷そのものなのだから。


「殺さねぇようにしてぇけど……無理に手加減も出来ねぇ……!」

「手加減なんてしたら殺されるよ、正義。これでも彼女はネフティスNo.5の実力者だ」


 んなの分かっとるわ! と腹の底から言いたくなった正義だが、ここは緩んだ自分を再び引き締めるために唾と共に飲み込み、正面に刀を構える。


「可愛い女の子と殺し合いだなんて……真っ平御免なんだよぉぉ!!!」


 ――黒坊を殺す……ただそれだけの理由で俺をこんな戦いに巡り合わせた北条(あいつ)は絶対許さねぇ!!


「……そうこなくちゃね」


 正義が無数の硝子(ガラス)の破片が落ちた床を蹴った数秒後、雛乃は再び後方に退き、動きながら三本の矢で弓を引く。そして桃色の光を(まと)った矢が一気に放たれ、建物の一角を光が(ほとばし)る。

 

「白坊ッ!!」

「任せろ……『倍速遅延(ハイブレーキ)』!」


 正義の背後から亜玲澄が飛び出し、右手を三本の矢に(かざ)す。右手から白い歪んだ波動が矢に伝わり、動きが遅くなる。


「サンキュー! これで距離詰められるぜぇぇ!」


 ほぼ停止状態の雛乃の頭上まで飛び、正義は刀を頭上に構える。


「とくと見やがれ!『恋鐘之刀(こがねのとう)雲龍之流舞(うんりゅうのるぶ)』!!」


 刀身から同じ桃色のオーラが炎の如く燃え上がる。降り下ろすと刀身を追うようにオーラが軌道を描く。そしてその勢いのまま雛乃の脳天を斬る――


 ……と思っていたのも束の間。


「『誘愛之虜惑(ピットホール・ラブ)』!」


 刹那、視界が揺れた。いや、空間が歪んだと言うべきか。雛乃が正義の顔をゆっくりと、じっくりと見つめる。どれだけ遅延されていようとも、二人が動けなくなれば遅延なんて怖くもない。


「ぐっ……何だこれはっ……!」

「…………!」

「君は……私に……メロメロになっちゃうの……♪」


 正義の目をじっと見つめながら雛乃は唱える。


「ほら、目を逸らさないで……私を、見て…………」

「くっ……ぁぁああっ!!」

「正義っ……くぅっ……!」

(ダメだ、『倍速遅延(ハイブレーキ)』で動きを遅くしてもこっちが動けないから意味が無いっ……!)


 耐える。女好きの正義が、女の誘惑に抗う。拒絶する。全ては唯一人の仲間を死の運命から救うために。


「どんなに、可愛くても……見知らぬ女にゃ……手ぇ出さねぇって決めてんだわ……!」

「だ〜め、ちゃんと見て……私に堕ちちゃって…………」

「くぅっ……顔がっ、勝手にぃぃっ!!」


 脳と身体が叫んでいる。彼女を見ろと。だが正義は身体の命令に無理矢理逆らい、頑張って目を瞑り、視線を逸らす。そして両手に全意識を集中し、刀に力を加える。


「うっ……ぉぉぉおおおおおお!!!!」

「無駄だよ……しっかり、この目を見て……」


 刀がピクリとも動かない。力を加えても刀に伝わる気配すらしない。一方の亜玲澄は左手を後ろに構え、深く深呼吸をしていた。


「ふぅ……」


 しかし、雛乃の術式は解けないまま。正義は亜玲澄の行動に疑問を抱きながらも誘惑に必死に抗う。


「白坊……弓がっ……来てるっ……!!」

「……5秒もあれば十分避けられる」


 5秒……その数はあの三本の矢が亜玲澄に突き刺さるまでの猶予。時の流れを読み、把握し、予測する。その工程を得て読み取った死までの制限時間。亜玲澄にとっては5秒もあればその危機を覆すのには十分すぎた。


「『始有異之刄スタート・スラッシャー』」


 亜玲澄の身体で隠れた左手から『時変剣(スクルド)』が黄金色のオーラを纏い、一振りで三本の矢を塵すら消し去る。


「……かなり時間がかかったが、良く耐えたな正義。後は俺に任せてくれ!!」


 正面に(かざ)したままの右手を振り払い、遅延効果を解除する。それと同時に全体重を踏み込んだ右足に乗せ、一気に駆け抜ける。五メートル近くの距離を一瞬で詰め、正義が雛乃の方を向くギリギリのところで間に入り込み、横に振り払う。


「もう、せっかくいい感じだったのに……」

「残念だったな、今度は俺の番だ」


 雛乃が諦めて弓を構え直す姿に、亜玲澄は口元からニヤリと白い歯を見せた。


 それはまるで、勝利を確信したかのように――

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