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黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》  作者: Siranui
第一章 海の惑星編
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第十二話「誓った約束〜血と剣戟のパレード〜」

 緊急任務:攫われたマリエルの捜索及び救出、『海の魔女』アースラの討伐


 遂行者:黒神大蛇、白神亜玲澄、カルマ、エイジ、トリトン、人魚4姉妹


 犠牲者:0名 



「おらああっっ!!」

「ふっ……!」


 壮大な森の中を駆けながら、二人の青年は閃光の如く剣を交じらわせる。周りの木々は二人の剣撃で斬り落とされる。 


 互いが互いの剣を避け、避けては斬る。その繰り返しである。



「くそっ……!」

「その程度か!」



 もはや邪竜と化した大蛇の異常ともいえる速さの剣に追いつけず、正義の右肩から左脇腹を斬られ、出血する。それと同時に正義は少し蹌踉(よろ)めいた。


「くっ、何だあの化けもんはっ!」

「隙だらけだ……」


 俺はその隙を逃さず、容赦なく技を繰り出す。


「『影之閃(ステイル)』」


 禍々しいオーラを(まと)った剣を正義の心臓に突き刺す。今度はいける。このまま正義の身体を黒剣が穿つ――


 しかし、正義はこの時を待っていた。



「……チェックメイトだぜ、黒坊ォォ!!」



 刹那、正義は俺の剣よりも先に速く刀を引き抜き、反命剣(リベリオン)を大きく弾いた。


「っ――!!」


「『ニ剴抜刀(にがいばっとう)以心伝心(いしんでんしん)』」

「っ……!」

(くそっ、カウンターか! そこまで読めなかったとは不覚だな……)


 不意に来た正義の刀が俺の全身を斬った。

 正義が刀を鞘に収めた瞬間、俺の身体がバラバラに切り刻まれた。


「ちっ――!!」


 痛覚が多すぎて分からない。いや、痛覚さえ無いのかもしれない。もう俺は死んだのだろうか。


 次第に意識が遠のいていく。視界が霞む。


 正義の赤い和服も次第に(かす)んで――



 ――大蛇君!!


 マリエルは正義を止めるべく必死に兵士の腕の中で暴れるが、しっかり兵士はマリエルを抑えている。


 バラバラにされ、血の池を作った俺を見て、正義はマリエルの方に刀の刃先を向ける。


「やっぱり大した事無かったな。……んじゃ、次はてめぇの番だぜ……嬢ちゃん!」

「……!!」


 自分の前で刀を振りかぶる正義を見て、マリエルは今度こそ死を覚悟した。



 今日で二度目だ。何で私だけこんな目に合わないといけないのだろう。


 ……でも、私の罪を償うためには死んでも構わない。どっちの気持ちが本当の私の気持ちなんだろう。


 ……分からない。教えて、神様。何で私はこんな運命を歩まなきゃいけないの? 


 前世の事は正直分からないけど、私は前世で相当の罪を犯したの? それとも大蛇君達と関わったからダメなの? 


 お父様のお怒りを買ったから? 人間に興味を持っただけで罰が下るの?


 そう考えているうちに正義が私に刀を振り下ろして――

 





「『神器解放(エレクト)』」


 突如、ドスッと正義の背中を突き刺す音が聞こえた。目を開けるとそこには正義を刺す大蛇の姿が見えた。


「がはっ……!」

「残念だったな、正義。俺はまだ死んでねぇぞ」

「嘘っ……だろっ……!?」

「大蛇君……?」

 


 これは夢か。幻想か。じゃなかったら一体何なんだろうか。


(何であの時のお兄さんが……ここにいるの!?)


 信じられなかった。さっきまで戦っていたのは大蛇君のはずだ。なのに、今はあの時の……私を助けてくれた、唯一人のヒーローがそこにいて――



「何で……てめぇが鬼丸を持ってんだよっ……!」

反命剣(リベリオン)の能力『変幻自彩(ロストジュアリティ)』。俺が一度でも目にしたあらゆる武器の形に反命剣(リベリオン)を自在に変化させる事が出来る」



 右目の血は大蛇君と同じように流れたまま。でも、あの黒い上下にそれとは対極に白い肌、そして氷の如く冷たい瞳……完全にあの頃の彼と一致していた。


(もしかして、あの時私を助けてくれたお兄さんって……)


 マリエルが遠い記憶を思い返している最中にも、二人の戦闘は終わらない。



「ま、てめぇは一筋縄ではいかねぇ事くらい分かってたけどよ……てめぇがその刀を扱えるとは思えねぇぜ」

「それは今の俺に打ち勝ってから言うんだな」


 言い終わりと同時に正義の持つ刀に変化させた反命剣(リベリオン)を突き刺した正義の背中から引き抜き、間髪入れずに横に薙ぎ払う。



「くそっ……たれがああ!!」


「うぉぉおおっ!!」


 正義も霊刀で迎撃する。剣戟は更に勢いを増す。地面に無数の斬撃の跡がつく。 

 

 赤と黒の閃光がぶつかる度に衝撃波が走り、水星(リヴァイス)の地を揺らす。


 俺は右目の流血を気にもせずに地面を右足で強く蹴り、正義との距離を詰める。



「『九剴抜刀(くがいばっとう)天衣無縫(てんいむほう)』――!!」



 正義は先程とは違う技で突進してくる俺を待ち受ける。



「……『狂神之天殺(ゼノジエイド)』」



 刀身を黒いオーラを纏い、正義がいる一直線を一瞬で駆け抜け、右腕を今度こそ断ち斬った。


「まだ……死ねるかあぁぁあああっ!!」


 それと同時に正義は同じ速度で俺の首を突き刺す。


「がっ……!!」


 あまりの痛みで血反吐(ちへど)を吐く。喉元からも鮮血を吹き出した。


 刀を持つ右手を斬られた正義は、左手で俺の首に刺さった霊刀を引き抜きながら、俺の左腕を肩から斬り落とす。


「うぐっ……!」


 今度は俺が蹌踉(よろ)めく。正義はその隙を狙って首元を斬ろうとするが、俺の刀が迫ってくるのが見え、一旦後退する。



「はぁ、はぁ……。んじゃあ、ちょいと名残惜しいが……、最終局面(エンディングマッチ)と行こうじゃねぇか、黒坊!!」

「あぁ……終わりにしてやる」


 それぞれ残った片腕で神器を持ちながら相手を(にら)む。決まるとしたらここしかない。ここで決着をつけなければならない。



「マリエルは……殺させねえ!!!」

「てめぇには……絶てぇ勝つ!!!」


(もう……もうやめて!! これ以上見たくない……っ!!)



 マリエルの目からは涙が溢れている。もう見てられないのだ。こんな痛い目に遭ってまで戦っている二人をもう見たくない。


 だが、運命はこの戦いの行く末を見届ける選択をした。



「「うぉぉぉぉおおおおお!!!!」」



 二人は一斉に雄叫びを上げながら剣を構える。赤と黒の閃光が再び森を彩る。


 風で木々が揺れる。二人の髪もそれに乗って揺れる。



 風が止んだ、その時。二人の青年は血と閃光を撒き散らしながら斬るべき敵に向かって突進する。


 最終局面(エンディングマッチ)に相応しい、真っ正面からのぶつかり合いが始まる。



「「うおおおおおおおおおおおおおっっっっっ!!!!!!!!!!!」」



 片腕同士の激しい剣撃。火花が更に空に散らす。二人の閃光も交わり、爆発を起こす。



「おおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!!!!」


 周りに障害物はもう無い。木々は既に爆発で燃えている。血を流しながら必死に剣をぶつけ合う二人を炎が照らす。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっっ!!!!!!!」


 交わる度に爆発する。剣を血で染めながら二人の青年はそれを気にする事無く、ただ目の前の存在を斬る事以外眼中に無い。

 


 激しい剣撃を終えた直後、正義は俺の心臓を突き刺す。


「うぐっ……!!」


 俺は死にものぐるいで刀を正義の首に突き刺す。



「くっ……そがああっ!!」



 互いに鮮血を地面に散らし、俺はありったけの力で斬り上げ、正義は斬り払う。



 俺は、ここで正義(あいつ)を……


 俺は、ここで黒坊(あいつ)を……



 ――――殺す!!



「「おおおおおおおおああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」」



 二つの閃光が目の前の閃光を穿つ。それに似た鮮血を飛ばしながら剣を振る。



「っ――!!!」

「がっ……!!」


『迷いの森』の一部が血祭りとなる。残虐でも何でも無い。ただ一人の歌姫の生死を賭け、二人の青年は汗と血とを流しながら剣を交わらせた。



 そして今、若き2人の戦いは重なった一筋の閃光が迸るのを最後に幕を下ろした――

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