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第十一話「今に繋がって」

 あらすじ


「あの方に逆らう人は殺さないとね〜」


 アレスの後を追おうとした俺――八岐大蛇の前に、瓜二つ謎の少女が現れた。暗黒神を『あの方』と呼び、それに逆らう大蛇を殺そうと魔物を呼び覚ます煙を発生させた。


 満身創痍(まんしんそうい)の俺の前に立ちはだかる魔物の大群。そこでは神器解放(エレクト)を行い、圧倒的な力で魔物を一網打尽(いちもうだじん)にした。


 そして無事に逃げ切った俺はアレスとアズレーン博士のいる(アジト)へと向かう――





 家のドアを開けた瞬間、暖かい空気が冷え切った全身を優しく溶かしていく。玄関にはアレスが出迎えてくれた。


「暴走しきった頭は冷やせたか、大蛇」

「あぁ、お陰様でな」


 もうさっきまであった事が全て夢のようだ。寒さで強張(こわば)った身体と共に家の暖かさで溶けていく。


「んじゃ、とりあえず休むか」


 俺は小さく(うなず)き、アレスについていくようにリビングへと足を踏み入れた。


「……オロチ、顔真っ青だぞ」

「あっ……すまない、気にするな」


 雰囲気は言うまでもなく穏やかだが、どうも頭の片隅にあの少女達の姿を思い出してしまう。


「その顔を見るに、本当は何かあったのだろう、大蛇君」

「――!」


 突然キッチンからアズレーン博士の声が聞こえ、その言葉に驚きを隠せなかった。


 それもそのはず。彼らからしたら今この場はいつも通りにしか思えないのだから。そんな中一人だけ深刻な表情を浮かべているのなんて分かるに決まっている。


「……すまない。本当に何でもないんだ」


 あれは俺だけの話だ。そんなものに二人を巻き込むわけにはいかない。何よりネフティス本部長を殺した身だ。現状でも許されないはずなのに、これ以上の迷惑など到底許されない。


 俺は急いで夕食を済ませ、寝室に入った。真っ暗な部屋の中、布団に顔を埋めて深呼吸をしている時に、またあの少女達が脳裏に浮かぶ。


「ピコ、マコ……」


 あの二人は結局何者なんだ。間違いなく暗黒神と深く関わっていると思うが、それ以外に何もない。


 ただ見知らぬ青年を反逆者と呼んでは謎の液体同士を調合し、魔物の大群を引き寄せた。それも暴走後……満身創痍だった時を狙ったかのように背後から現れる。


 こんなの偶然なわけがない。これが偶然ならこの世界は狂っている。


「……本当にあるんだな、運命は」


 全力で頭を振ってもあの少女達は離れてくれない。何ならとっくに脳裏にこびり付いていた。


「あれだけ過ちを償えると言っておいて終いには殺されるのか」


 暗黒神(あいつ)は俺を何だと思っているのか。命あるものとして扱っているのかすら怪しい。人形の如くされるがままに過ちを引きずる運命を進み続ける。


 ――それが俺の運命なのか。


「オロチ、起きてるか?」


 俺を呼ぶ声とともに部屋の電気がつき、青白い光が両目を襲う。突如として視界に差し込んできたので寝ようにも寝れなかった。


「あ、すまない。いきなり電気をつけてしまったからな。それで、一つ話があるんだが……」

「な、何だ……」


 俺が眠そうに話している姿にアレスは不意に笑い、俺の隣のベッドに腰掛ける。


「オロチ、さっきから顔色が悪かったのってただ体調が悪いんじゃないよな」

「……あぁ」

「俺にだけでも、何があったのか教えてくれないか」

「……」


 本来ならアレスやアズレーン博士にも教えたい。だがいくらアレスやアズレーン博士も、こんな事信じてくれるとはとても思えない。


 ――しかし、その考えはアレスの一言で()き消された。


「そんな黙秘にする事か? ()()()()()()()()()()()()()()というのに」

「は……?」

「俺もネフティスの関係者を殺した。お前も見ただろ? 治療部隊が職務室に倒れていたあの光景を」

「嘘……だろっ……!?」


 嘘だ。そんなのあり得ない。あの治療部隊はアレスが殺したと言うのか。


 あの時俺が智優美に『人殺し』と言われたが真の人殺しは俺ではなくアレスだったと言うのか。


「お前……」

「もちろん俺の意志で殺した訳では無い。知らぬ間に意識が無くなっていて、目覚めたときには部屋が血祭り状態だったんだ。それに俺の両手も真っ赤に染まっていた……」

「――!」


 これで全てが繋がった気がした。最初に俺が本部で目を覚ましたのも、人殺しと言われたのも、お前も呪いに縛られていると言われたのも……


 ――全て暗黒神が、そしてアレスが関わっていたんだ。


「ようやく分かったか。俺とお前は()()()()()()()()()辿()()()()んだよ。だから今お前が直面している事も、いずれ俺も通る事になる。

 ……だから教えてくれオロチ。同じ運命を辿る者として、そして何より俺の唯一の親友として、この悲劇の連鎖を断ち切るために」

「アレス……」


 ――『お前()呪いに縛られているのか』


 そうか、そうだったのか。お前も最初から暗黒神の手のひらの上で踊らされていたんだ。それが分かってないとあんな台詞言えないよな。


 自分なりにこの事を納得し、一度深く深呼吸して話す覚悟を決める。


「なら俺の唯一の親友に話すとしよう。今日あった事全てを」

「……ありがとう、オロチ」


 俺はもう一度深く深呼吸をし、二人の少女の事から突然神器解放出来た事から全てをアレスに話した。


「――!!」

「これが今俺が直面している運命の真実だ。いくらお前でも、信じてもらえるか不安だが……」


 こればかりはアレスも見てないので素直に信じるとは言わないだろう。だが全てこの目で見て、この身体で感じたものだ。


 後にこの運命がアレスにも直面するなら、少しは信じてほしいのが正直な気持ちだ。


 色々な気持ちが混ざって困惑している俺に、アレスはふっと笑いながら答えた。


「心配するなよ! 俺がお前を疑った事があるか? もちろん逆もな」

「こんな話を……信じると言うのか!?」

「なら今見に行くか、そのピコとマコという名の少女とやらを」

「――!!」


 正気かこいつは。いや、実際見た方が早いかもしれないが、いくら俺達でも危険すぎる。


「話を聞くに、かなり危険な存在だと言うのは分かっている。でもお前はそれを一人で乗り越えて無事にここまで来ている。今度は俺がいるんだ、安心しろ!」

「……あぁ、そうだな」


 本当にアレスは卑怯な存在だ。説得力があるというか信頼性に長けているというか……


 とりあえず、アレスが言うことには嘘偽りが何一つ無いから自然と安心してしまう。


「よし! そうとなれば今から外出るぞ!」

「え……いや、今も結構吹雪(ふぶ)いてるぞ」

「いいから! お前もそんな格好してないで、適当にこっから着て行けよ!」


 アレスがベッドの向かいにあるクローゼットの扉を開ける。そこにはハンガーにかけられた衣服やら上着やらが並んでいた。


 重い身体を起こしては適当に黒い上下とローブを取り出し、病衣を脱いでそれに着替える。サイズ的には問題なかったので安心した。


 サイズ確認をしている間に、アレスが皿洗いをしているアズレーン博士に一声かける。


「博士ー! 今から残りの討伐任務全部片付けてくるわ!」

「こんなに吹雪いているのに大丈夫か?」

「オロチがいるからすぐ終わるよ」

「そうか。あまり無理はするなよ」


 了解っと頷きながらアレスは玄関の白いブーツを履く。俺も続いて黒いブーツを履く。そして家のドアを開けては二人共に吹雪の中へ身を乗り出す。


「うわ、もうこんな近くまで魔物いるのかよ」


 アレスが右手から太陽のように輝く剣を召喚した。俺も合わせて黒剣を召喚する。


「へぇ〜、これがオロチの神器か。(まさ)にお前専用って感じだな」

「そっちこそ、太陽神の力が籠められているような剣だな。あの頃のお前を思い出すな」


 お互い軽く笑うと、すぐに気を引き締めて魔物の大群を睨む。


 ここまで来たと言うことは、まだ倒しきれていないのか。更にあの煙がまだ上がっているとなればこれからまたどんどん増えるはず。


 やっぱりあの煙で魔物を引き寄せて俺を殺すのが少女の狙いだったのか……。それもあの家ごと殺すのだろう。そうでなければここまで来ないはずだ。


「オロチ、お前は前を頼む。一先ずある程度倒したら撤退しよう」

「了解した!」


 お互い背中を預け、それぞれ勢いよく地を蹴った。ここからは容赦無く殺す事に集中する。ようはさっき同じ魔物を倒したときと同じだ。


 敵味方は関係ない。俺の視界に入るものは殺す。全てはこの運命から逃げるため。つまりは暗黒神に、そして過ちばかりを引きずり続ける自分への八つ当たりだ。


「うおおおおお!!!」


 夢も希望も無い運命の中生きる青年の、せめてもの反抗だ……!


 さっきと同じく、魔物の赤黒い血が剣の軌道を追うように飛び散る。それを気にもせずに次の魔物へと刃を振るう。


 白く冷たい無数の粒が視界を(さまた)げた――






 そして、時は今に至る。




「うっ……」


 闇に塗りつぶされた視界が一気に彩られる。その後身体がほのかに温かくなっているのを感じた。足を少し動かすと布が擦れるような音がする。俺は今まで夢を見ていたのか……とっくに現実となった夢を。


「……目覚めたか」

「っ――!?」


 銀の長髪に純白の白衣を羽織った男。今起きてる展開的に、正夢が起きるのではと一瞬考えたが、すぐにその思考を捨てる。


「お、お前は……」


 この男との出会いが、後に俺の運命を大きく歪ませる事になる――

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